.

.

「東北見聞録~謎と不思議と珍談と」第十一話

2017年07月12日 | 本・雑誌から
月刊「釣り東北」連載「東北見聞録~謎と不思議と珍談と」~白じゃない!青い横断歩道?

異常気象のニュースはこれまで豪雨被害の夏場が中心だったが、今や冬場も例外では無くなって来た。この冬はエルニーニョ現象の発生で「暖冬」との予測が示されていたが、昨年末から大寒波が波状的に襲来し、テレビに登場する気象予報士は冷や汗を掻きながら訂正に終始していた感がある。
四国や中国・山陰、更には京都や名古屋でも大雪に見舞われ、てんやわんやの大騒動が報じられた。北日本では日常的なのだが…。さて、そんな雪に覆われた東北の長い冬もそろそろ終わりに近づき、凍結や圧雪で歩行や運転が不自由だった道路も、ようやく舗装面が現れて来る頃だ。そこで今回は雪解けで路面が現れると「あっ!」と驚く、遺跡の里の不思議な道路を紹介する。

①発見!青い横断歩道?
秋田県大仙市と美郷町に所在する国指定史跡「払田柵跡(ほったのさくあと)」は、多くの古代史ファンが年間を通じて訪れる人気のスポットだ。
国道13号から県道50号を旧仙北市方向に進むと、払田柵跡の案内板が頻繁に現れるので、初めての見学でも安心だ。県道を進むとやがて丘陵地帯を含む一体が、古代の軍事と行政の役割を担っていたと見られる払田柵跡が見えて来る。
そして問題の不思議な青い横断歩道は、遺跡の数百メートル手前に現れる。何も気にしないで県道を進むと、恐らく見逃してしまうかも知れない。道路横に復元された柵がズラリと並ぶ一角が有り、その柵群が目印だ。車を降りて道路を見てみると、通常見られる白では無く、青のペイントが点々と横断歩道状に繋がっている。道端の標柱には「この道路下に払田柵が眠っています」とある。これが青い横断歩道の正体だ。


②広大なスケールの一部
道路横にある「よみがえる平安の柵」の解説板には「払田柵の外柵跡(総延長3600m)に旗を立てて、広大な遺跡のスケールを表示する払田柵跡にふさわしい普及開発イベント。稲刈りが終わった後の水田に、小学生(総合学習)や地域ボランティアの協力で旗が立てられる。合せて発掘調査現場の見学などが行われており、歴史的文化遺産の大切さを学ぶ機会となっている…主催・史跡の里づくり委員会」とある。
と言う訳で筆者が勝手に名付けた青い横断歩道とは、総延長3600mの外柵の一部だったのだ。遺跡全体の規模は東西1370m、南北780m、面積は878000㎡と広大で、主要施設跡がある丘陵の長森には東西南北に外郭門が配置されている。古代国家の権力を示すかの様な威容を誇る払田柵遺跡は、1931年(昭和6年)に秋田県第1号の国指定史跡となった。

③払田柵とは…
古代国家が支配体制を強める中、直接の支配が及ばない地方を組み込む為、中央から派遣された役人や兵士が外柵で囲んだ施設に常駐し、国家に抵抗する蝦夷の人々を取り締まる軍事と行政の役割を果たしていたと見られる。
発掘された土器の年代から創建は8世紀末~9世紀初頭と推定されていて、更に外柵の材木塀と外郭の木材塀を年輪年代測定した結果、多くの材木が801年伐採と分った事から創建の時期がほぼ確実視された。その歴史的発見は20世紀初頭、旧仙北郡千屋村(現在の美郷町)の水田から200本を超える柵に使われたと見られる木材が見つかった事に端を発する。しかし木材は燃料にされるなど遺跡としての価値が見出せない中、大きな関心を示した人物が文字の書かれた木片から遺跡としてのアプローチをした。その後、1930年に文部省委嘱による発掘調査が開始され、1931年に秋田県初の国の史跡指定を受けた。

④数々の発見
1974年(昭和49年)、「秋田県払田柵跡調査事務所」が立ち上がり、以後毎年学術調査が進められ、発掘に基づいて政庁、外郭南門、大路、などが復元されて来た。筆者も平成の始め頃から何回も足を運んでその年々の発掘成果を取材して来たが、毎年「初」の発見が相次ぎワクワクした思いがある。
遺物では最も多く出土している須恵器(すえき)と土師器(はじき)に加え、渤海国(ぼっかい)※←ぼっかいはルビ(7世紀末~10世紀初頭、満州・朝鮮半島北部)との交流を示す瓦質土器も発見された。そして木片に墨で文字を記した「木簡(もっかん)」も多数出土し、当時の状況を知る上で大きな手がかりとなった。この他、墨書土器(ぼくしょどき)や漆紙文書(うるしがみもんじょ)等も貴重な発見だ。
そして1992年(平成4年)の発掘調査で、メインストリート「大路」を横切って流れていた川の跡が発見された。川はその後復元され、外柵南門から政庁跡の丘に向かう散策で楽しむ事が出来る。払田柵については様々な研究が行われていて、東北の古代城柵との繋がり等、未だ謎が多く含まれている。深く探求したい方は、外柵南門手前の遺跡の全容を展示した総合案内所、そして払田柵は勿論、その他の県内遺跡の出土品等が多数展示されている道路向かいの秋田県埋蔵文化財センターを見物してみては如何だろうか。そして、珍しい「青い横断歩道」も忘れずに是非!


ジャンル:
ウェブログ
コメント   この記事についてブログを書く
« このブログの閲覧数は・・・・ | トップ | 「東北見聞録~謎と不思議と... »
最近の画像もっと見る

コメントを投稿


コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。

数字4桁を入力し、投稿ボタンを押してください。

トラックバック

この記事のトラックバック  Ping-URL
ブログ作成者から承認されるまでトラックバックは反映されません。
  • 30日以上前の記事に対するトラックバックは受け取らないよう設定されております。
  • 送信元の記事内容が半角英数のみのトラックバックは受け取らないよう設定されております。
  • このブログへのリンクがない記事からのトラックバックは受け取らないよう設定されております。
  • ※ブログ管理者のみ、編集画面で設定の変更が可能です。