歯科技工管理学研究

歯科技工管理学研究ブログ
歯科技工士・岩澤 毅

岩澤毅/大塚勇二 抄録/機能を付加した歯科技工指示書等の検討

2010年11月07日 | 日本歯科技工学会雑誌
日本歯科技工学会雑誌
第31巻特別号 平成22年10月
58

日本歯科技工学会第32回学術大会
テーブルクリニック F会場 (第2日・11月7日(日))

演題番号 2F-1000
経営管理 

機能を付加した歯科技工指示書等の検討

○岩澤 毅 秋田県歯科技工士会,大塚勇二 東京都

A.目的
 著者は,2009年日本歯科技工学会第31回学術大会において,歯科補てつ物等の適正委託のための歯科補てつ物並びに歯科補てつ物等の作成等の業務委託に関する法律(仮称)1)を報告した.
 民主党政策集INDEX2009医療政策〈詳細版〉2)は,「歯科技工物(義歯)については,安価な輸入品の増加等により,品質管理体制を見直す必要が生じています.歯科技工物(義歯)のトレーサビリティーの基準を定めるとともに,高い技能を持つ歯科技工士の評価等,技術料や歯科基本料の見直しを検討します.」と記し,歯科技工物のトレーサビリティーのあり方について検討の開始を提起している.
 本稿では,機能を付加した歯科技工指示書と歯科技工報告書の発行を軸とした歯科補てつ物等の委託受託サイクルの構築による歯科補てつ物等のトレーサビリティーのあり方について検討する.

B.方法
 歯科技工士法令に規定される歯科技工指示書並びに歯科技工録,さらにNPO法人みんなの歯科ネットワークが提起した契約機能付き技工指示書,みんながわかる技工指示書についてトレーサビリティーの構築の観点から検討した.医療法第5次改正の医療安全を確保するために必要な事項(6条の9から6条の12 )の趣旨について検討した.
 食品のトレーサビリティーの仕組み3)の歯科補てつ物等への利活用について検討した.

C.結果
 歯科補てつ物等のトレーサビリティーに必要とされる項目は,その多くが歯科技工所における歯科補てつ物等の作成等及び品質管理指針について(平成17年3月18日)によって示された,指示書に基づく作成等管理及び品質管理に関する文書中の必須明示8項目,すなわち1.作成等に用いる模型等と指示書とを発行した歯科医師から受託した年月日2.作成等部位及び設計3.作成の方法(作成等手順)4.使用材料(使用主材料の品名並びにロットもしくは製造番号)5.歯科補てつ物等の工程管理に系る業務を管理した記録6.歯科補てつ物等の最終点検及び検査を完了した年月日7.歯科補てつ物等を委託した歯科医師の歯科医療機関に引き渡した年月日8.その他必要な事項の利用が可能なことが明らかになった.
 医療法第5次改正の趣旨は,国民の医療に対する安心・信頼を確保し,質の高い医療サービスが適切に受けられる体制の構築への着手を開始することを旨としている.
食品トレーサビリティーは大規模・広域流通に適した制度であり,特定人の歯科医療の用に供する歯科補てつ物等の個別・少量流通に適していない.

D.考察
 歯科医療機関と歯科技工所間の契約から,歯科医療機関からの業務の委託,歯科技工所の業務の受託,歯科技工所の歯科技工録の作成,歯科技工報告書の提出を網羅した一連の業務を,「歯科補てつ物等の委託受託サイクル」と命名し,歯科技工録の必須明示8項目を基礎とした歯科技工報告書を歯科技工所が発行し,歯科医療機関・患者側に手交し歯科医療機関・患者側が保存することにより,歯科補てつ物等のトレーサビリティーの構築が可能なことが示唆された.

【文献】
1)岩澤毅:歯科補てつ物並びに歯科補てつ物等の作成等の業務委託に関する法律(仮称)の検討,日本歯科技工学会雑誌,30特別号:41,2009.
2)民主党:民主党政策集INDEX2009医療政策〈詳細版〉:6,2009.
3)「食品トレーサビリティシステム導入の手引き」改訂委員会: 食品トレーサビリティシステム導入の手引き(食品トレーサビリティガイドライン):20~33,平成20年3月第2版第2刷.

最新の画像もっと見る