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「お血脈」 落語 あらすじ

2012年11月07日 01時00分15秒 | 伝統文化
 「お血脈」

 信濃の善光寺で「お血脈の印」を売り出した。
百文払って、お坊さんから額に印を押してもらえば、誰でも極楽へ行けるという。

 たとえ人殺しの悪行を働いた者でも、たった百文で罪が消えて極楽へ行けるとあって、大流行。
全国から人が押し寄せ、こぞって印を押してもらう。
おかげで、地獄へ来る者がいなくなってしまった。

 困ったのは、閻魔大王だった。
地獄に金品を持ってくる者が途絶え、このところ不景気このうえない。
浄玻璃の鏡や鬼の金棒、虎の皮のふんどしと、様々なものを拠出させ、
シャバの骨董屋に売りに出しては急場を凌いでいた。
赤鬼、青鬼もずいぶんとやせ細ってしまうありさま。

 このままでは、地獄の大王としての面目が立たない。
追い込まれた閻魔大王は、みんなを集めて対策会議を開いた。

 そこで「見る目嗅ぐ鼻」という知恵のある鬼が、「ここには腕のいい泥棒がたくさんいる。
その一人を善光寺に向かわせ、「お血脈の印」を盗んでしまえばいい」と言い出し、全員が賛成する。

 「さて、誰に盗ませるのがいいか?」
 さまざまな大泥棒が候補に上がるが、
最後に「太閤秀吉の寝室にまで侵入した男だから」と石川五右衛門に白羽の矢が立つ。
釜ぶろでいい気分になって、都々逸を唄っていた五右衛門がさっそく呼び出された。

 大王直々の頼みとあって、石川五右衛門は気合が入る。
黒の三昧小袖に、緞子の帯、朱鞘の大小を差し、ビロードの羽織と、
歌舞伎に出てくる派手な衣装に身をつつみ、勇んで大王の前に進みでる。

 大王から「印を見事に盗み出せば、地獄での出世を約束する」との言葉をもらい、
「どうぞ、ご安心を。おまかせください」と、善光寺に向かった。

 そこは手慣れた泥棒稼業、さすがに大口を叩くだけのことはあり、
昼間、参拝のふりをして善光寺の様子を伺ったかと思うと、
その夜には奥殿に忍び込んで「お血脈の印」を見つけ、鮮やかに盗み出した。

 すぐに地獄へ持ち帰ればよかったものを、久々の仕事で感情が高ぶったのか、
印をじっと見つめて、芝居がかり、
 「ありがてえ、かたじけねえ。まんまと首尾よく善光寺に忍び込み、奪い取ったるお血脈の印、
これさえあれば大願成就」と大見得をきった。

 ところがこの時、思わず印を額に押しいただいたものだから、石川五右衛門、
そのまま極楽へ行ってしまった。

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