日曜日に久々に三軒茶屋へ行って来ました。
『THE BIG FELLAR ビックフェラー』 2014.5.25 13時開演 世田谷パブリックシアター
出演 内野聖陽 浦井健治 成河 明星真由美 町田マリー 黒田大輔 小林勝也
1972年、ニューヨークのアイリッシュレストランではブラッディー・サンデー(注)の追悼集会が開かれていた。IRA(アイルランド共和軍)のNY支部リーダーのコステロ(内野聖陽)は対イギリスへの報復と組織強化への思いを熱く語る。
彼らIRAの活動家たちの隠れ家は、マイケル(浦井健治)のアパートメント。しかし活動家といっても、彼らの日常はごく普通のNY市民であり、コステロのようにアメリカンドリームをつかんだ経済的成功者もいれば、マイケルのような消防士も、警察官もいた。
アイルランドから彼らのもとにやって来たIRA兵士でお調子者のルエリ(成河)は、ある日バーで親しくなった女性をアパートに連れ込むが・・・。
(注:1972年1月30日、イギリス軍が公民権運動デモ中の非武装のアイルランド市民を殺傷した歴史的事件)
(世田谷パブリックシアター公式サイトより)
世界史が苦手な上に、ここらへんの歴史に関してはほとんどわかってない、という時代の話で“ありゃりゃ、どうしよう
と思いながら、観はじめましたが・・・
難しい上に、そういった“組織”の話なので、平和な個所ばかり描くのではでなく、暴力的な怖いシーンもあったりして、かなりハードな話ではありましたが、舞台としてはとても面白かったです。
いや、面白いというより、すごく吸引力を感じました。・・・はい、非常に引き込まれるなにかを持った舞台でした。
内野さんはIRAのNY支部リーダー。なにしろ冒頭から・・・キルトを身に付け、客席に向かって演説する内野さんの存在感といったら・・・
軽口のジョークを飛ばしながら、でも堂々として雄弁で説得力があって、セリフとわかっていてもついつい引き込まれ
コステロ/内野さん
“ビック・フェラー”(大物?)と呼ばれるコステロは、やっぱり!!の貫録で、しかもいつもと違って(?)汚くない!!(そこ?
)
上質なスーツに上質なコート、帽子やメガネや葉巻やタバコ、どれもコステロ=内野さんの“男”っぷりを際立たせていて、すごく素敵でした
30年という時間の経過の過程をきちっと見せてくれたのもよかったし、後半、歳を重ねたコステロが再び大衆の前で独白するシーンは、心理描写がむずかしい見せ場で(内容は、イマイチよく理解できなかったけど)冒頭の演説シーンとはまた違った意味で“すごい”シーンでもありました。
マイケル/浦井くん
無口でおとなしい消防士のマイケル。IRAメンバーのエリザベスといい仲になり、そのシーンでは堂々と(!?)白ブリーフ一枚です。あ、白ソックスもありです(笑)
フランクにバックを被せられ、殴られたあとの血だらけの顔にはちょっとゾッとしましたが・・・
最初は若々しい若者だったマイケルが、最後は50代(?)おなかの出た中年仕様に変身。すごく自然でした。すごいねー。StarSでボケ王子担当だった人と同じ人とは・・・
ルエリ/成河くん
おしゃベりなお調子者で、とにかく、いやはや、ハンパないセリフ量。まるでマシンガントーク、しかもすごいキツイ訛り。
貧相なイメージがどんどん都会的な青年に進化していく様子に“おおっ”
しかもちょっと見、嵐のニノ似!?とにかくきれいなお顔。
そういえばDVDで観た『サロメ』では美しいヨナカーン役だった・・・
成河さん・・・今までも、舞台で何度か観ているけれど、こんなにスゴイ人だとは。はじめて認識しました。
トム/黒田さん
ああ、いそうだなぁ。NY市警にこんなタイプ(笑)と思いました(知らないくせにね~)
劇中は、かなり短気で下品で乱暴で、怖くてイヤな感じですが・・・(それって演技力よね?)カテコの最後に扉を閉めるのが黒田さんで、その時のはにかんだような笑顔がとてもキュート!!
フランク/小林さん
IRA本部からやってきた幹部・フランク。
始終、無表情で冷静でルエリとマイケルを痛めつけるのが、怖い。そして不気味。あの電気ドリルはやめて~~~
あのまま舞台の上が血だらけになったらどうしよう、とゾクっ。
でも、コステロの登場で形勢逆転、アルコールを絶って依存症から立ち直るプログラム途中のフランクを、その酒の力で追い詰めていくコステロ。ある種の拷問?目の前に置いて匂わせ、それを顔中に塗りたくり、むりやり喉に流し込み・・・うわーーーさっきまでの暴力シーンより怖い。
レアな感想ですが・・・コステロの指示でグラスに注いだマッカラン(ウイスキー)に入れられた氷が、フランクの見ている前で音をたてて溶けるシーン、その音を聞いてフランクがゴクリと息を飲むのです。そしてそこからは・・・フランクの理性崩壊。
これって狙ってるのか、偶然なのかわからないけど、すごく観ているこっちも緊張しました。スゴイなぁ。
エリザベス/明星さん
キレ者で有能なのに女性であるゆえに幹部になれないエリザベス。
「命令だからな」とメキシコ支部(実はそんな支部はない)へ送られるというエリザベス。
抵坑したエリザベスが、一瞬のうちに物言わぬ死体となってアパートから運び出されるシーンは、すごくリアルで怖かった。
カレルマ/町田さん
ルエリが連れ込んだプエルトリコ系の女性。一見、イケイケなお姉さんかと思いきや・・・
う~ん。秘密の組織にはやっぱり、こんな風に関わってくる女性もあり、か。
最後は、とある9月の晴れた日、50代になったマイケルがいつものように出勤していくシーン。
それはまさにあの日・・・
テロ活動って、もちろん最初は正当な理由が存在するはずだけど、やっぱり人が人の生命を奪ったらそこには負の連鎖しかないんじゃないのか。
途中、かわいいくまちゃんのぬいぐるみの中身を別のものに入れ替える作業シーンがあって、“これって・・・”と、想像したら怖ろしかった。
おまけに・・・
パンフレット読んで一番驚いたのは、浦井くんと成河さんが同じ歳だったことです