忘れずにクリネックスを買って帰るようにと書き込むよりも先に、
出勤しながら立ち寄ったローソンでそのまま買ってしまう。
まだ手帳のページは空白のまま。
ティッシュペーパーではなくメーカー名を出しているのは、年に数回、
思い出したように読み直す山田詠美さんの影響で、要は海外小説の描き方をそのまま
持ち込んでいるだけ。間接的に。
早朝の鉱質。降るか降らないか判然としない曇天を出発して、
板金工場の前あたりでやっと雨らしい水滴が硝子に滴り出した、
そんな感じの曖昧な空模様。
降り始めたのは、箱の外にいれば少しだけ早く感じられたんだろうとか
そんな感傷。
素肌、裸眼が最も先に天候を識るって書きたいだけ。
結局、一度も傘をささずに自宅に戻る。これから何をしようかと、
跳ねっかえりに濡れた靴を乾かしながら画策する。
ちょっとだけ、雨の中を散策しようか。雨が降ると君は出て行くとか、
誰かの表現を借りながら。