明鏡   

鏡のごとく

杏の木のしたには

2017-06-15 23:27:15 | 詩小説
杏の木のしたには
丸々とした杏が転がっていた
拾って皮のまま食べた
ほのかに酸っぱい実の後から
日に照らされた甘みが
ざらついた皮に張り付いているのを口にほおばりながら
考えていた

アフリカ出身の方はりんごは種まで食べるとお聞きした後のこと
なぜ我々は皮をむくのか
皮をむくようになったのか
考えていた
そのままの魂の美味しいところをべろりと剥がしているような
そのままの魂の種を吐き出してきたような
我々であったが

それでも
杏の種は頑なすぎて飲み込むことはできなかった
杏の木のしたには口があるというのに
我々は飲み込むことができずに
そのまま大地に
その魂を返した
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黒と赤と

2017-06-15 21:43:05 | 詩小説
ラーメンを先輩方と食べに行った 
焦がしニンニクの入った黒をいただく
赤は辛いという

そういえば
現場からの帰り際
道の向こうで交通規制がかかっていた
でかいトレーラーがUターンをしていた
赤い消防車が集まっていた
火事を捉えようとカメラが来ているようだった
黒煙は見えなかったけれど
駆けつけたサイレンの音は現場にも聞こえていた
以外と近くであったことに驚く
高速から赤いランプがくるくると回っているのが見えた

黙々と食べながら
美味しいと思いながら
どこからかほろ苦い味がしてきた
どうか
ご無事でありますように
と思うことしかできないが
器の隅に溜まった焦がした後の
黒いスープの上澄みを啜りながら
どうかどうかと思っていた

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