「憂鬱な朝」日高ショーコ先生

日高ショーコ作 「憂鬱な朝」に惑溺して抜け出せなくなったblog。

その66 法と隠居vol.2 -「憂鬱な朝」 日高ショーコ先生-

2017-04-19 23:25:57 | 憂鬱な朝
ご来訪いただきありがとうございます。

今回は、前回の記事の続きになります。
今回のテーマも調べていて非常に面白かった。
併せて、年表も含め、過去記事を多々修正する必要も生じました。

以下、ネタバレ含みます。(既刊7巻まで)
なお、年齢は、作品内の数え方をそのまま採用しています。

以降、よろしくお付き合いください。

*********************************

今回も、「華族令」に定められた隠居についての話です。

驚くべきことに、元々、華族の隠居は「全面的禁止」とされていました。
それが、1898年の民法の規定を受けて、華族令の改正も議論されることに。
1907年に華族令が改正され(皇室令第二号として公布)、隠居許可に至ることになったわけです。
その経緯が、非常に興味深いので、ご紹介したいと思います。

1898年の民法の規定により、隠居の場合、老齢を理由にしての申し出は、満60歳以上であり、かつ完全な家督相続人がいることが条件と定められました。
ただし、疾病等の理由で家督を相続させる場合にはこの限りではない、とも。

1907年に公布された華族令(皇室令第二号)では、

・襲爵の出願の期限を撤廃
・隠居について制限を削除し隠居は民法(上記)によること

が定められました。

併せて、爵の無い華族の女戸主の容認や、女系男子の相続容認も、議論されています。
このような議論の過程には、華族の存続を図るという視点が重視されていました。

※参考文献:「第一三帝国議会貴族院諮詢の 「華族令」 改正問題について」(小林和幸著)

ここで、幾つか判明したことがあります。

上記のとおり、有爵者が病気を理由として隠居を申し出られるようになるのは、1907年以降です。
(民法上の家督の隠居は1898年以降)
つまり、暁人様を病気の理由により隠居させる計画を立てた1899年においては、智之の計画は成り立つものではなかった、ということです。
法律を学んでいた雨宮がそれを知らないはずはない。
ところが、雨宮が智之の画策を知った1908年の時点では、改正法が成立しているため、その計画が可能となっています。ややこしいですが。
雨宮は、「それともこれからですか?今からーすべてを引っくり返すおつもりで?」(3巻14話)と智之に訊いていますが、今だからこそできる所業なわけです。

智之は、雨宮にも、暁人様にも、色々言い訳をしていましたが、こう云えばよかった。
「暁人様が重病であると宮内省に届けたとしても、あの時点では、華族の隠居が病気を理由に認められることはなかったんですよ。私が未来を見越すことができたとでも?妄想はいい加減にしていただきたい!」

とはいえ、それを聞いた雨宮は、「ただし、暁人様が亡くなった場合は、その限りではありませんよね?」と考えるかもしれません。

計画はこうです。
まずは、かねてから暁人様が病弱であるということを宮内庁および関係各所に知らしめておく。
その目的は、「突然の病死」を不自然と思わせないため。
息のかかった主治医を雇ったのも、突然の死に際して、不自然な点を隠匿するため。
智之がそう計画していたと、雨宮が考えても不思議ではありません。

それはそれで、謀略として成り立っていますからね。
まあ、雨宮は特にミステリー好きというのではなさそうですし、流石にそこまでは考えないか。
そんな事を考えるだけでも、大逆罪に匹敵するようなものでしょうしね。

ここで話を変えて、もうひとつのトピック
・襲爵の出願の期限を撤廃
を取り上げたいと思います。

この法規のおかげで、暁人様(というか久世家)に、猶予ができたことになります。
今のところ、久世家の跡継ぎがいないため暁人様の隠居を保留している状態ですが、これで無理をする必要も慌てる必要もなくなりました。
暁直様の息子が成人するまで気長に待てますね。
これは朗報かと思います。
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