4日目~メローな時と風に戯れて
妻:「あきあこ~~!3時やからな~~!3時に部屋で・・・・・」
私を乗せたボードは一直線に沖を目指し、やがて浜で見送る妻の姿と声は次第に小さくなっていきました。
妻とは今年の3月で結婚4周年を迎えました。私が買い物に退屈しているのとか、妻がビーチで遊ぶのに飽きたのとか。付き合った期間も入れると随分長く一緒にいるから、お互いに何を考えてるかわかる事も多いんですわ。
妻:「お昼からDFSに私一人で行くさかい、あきあこはビーチで遊んでたらええで~。そやけど、そのあとショッピングセンターに行くから3時には部屋に帰ってきてな~」
結局妻は私の気持ちを察してくれて、昼から少しだけウインドする時間が出来ました。
浜を見ると妻が手を振って叫んでいます。
妻:「あきあこ~、3時に待ってるしな~・・・・・」
★★★私がウインドを始めて一年たった頃のお話 その1★★★
悪友:「あきあこ~~!3時に待ってるしな~~」
あきあこ:「飯おごる約束わすれんなよ~~」
私を乗せたボードは一直線に沖を目指し、やがて浜で見送る悪友の姿と声は次第に小さくなっていった。
悪友:「あきあこ、お前ウインドうまいねんから、琵琶湖横断ぐらい出来るやろ!」
あきあこ:「当たり前やんけ!」
こうして、煽てられると直ぐ調子にのる私は、悪友の一言で何の計画もなくいきなり琵琶湖横断をするハメになった。
あきあこ:「ストップ・ザ・シーズン・イン・ザ・サ~ン~~♪、過ぎないで南風~♪、ひゃ~、うりゃ~、ウギャ~」
私はTUBEの歌を口ずさみ、横から吹き付けるやや強い目の風を捉え、時には風波でジャンプしたり、飛ばされながらも快調に対岸を目指し走り続けた。当日は自分のレベルにあった絶好のコンディション。夏も終わりとは言え、まだまだ水も心地よい季節。気分は最高!
もちろん不安が無かったわけでもない。ウインドサーフィンと言えば風を原動力とする乗り物。風がムチャクチャ強かってもエライ目に合うし、風がなくても進まへんし。で、当日の天気予報では風が強くなることは無かったんで、不安なのは風が無くなること。
快調に走り出して30分ぐらい。後ろを振り返えると、既に出発した浜が見えないほど沖まで来ている。私が上陸する予定の浜も・・・・・まだまだ見えない。って、言うか大きくコースを外れてるような気もする。まぁ、ええか。
で、1時間ぐらいたった頃、不安が的中したって言うか、起こるべくして起こったって言うか・・・・・
あきあこ:「風・・・・・止んだやんけ!」
琵琶湖のど真ん中、一人プカプカ浮ぶ若き日のアホな私。
★★★つづく★★★
私は沖に沈んでいる戦車の横を通り過ぎ、リーフ(岩があり波が立っているところ。ここから先は外海です)を目指しボードを走らせていました。リーフには身長ぐらいの波が立っています。若い時やったら「行ってまえ~」みたいなノリで波に乗るんやけど、もう若くないし、ボードも初心者用のでかいボードやし、正直自身ないな~と、ビビッてるヘタレです。
時おりリーフの割れ目から入ってくる小さい波に乗り、ボードを加速させ「イェ~イ!」とか奇声を発したり、戦車とリーフの間を何度も往復したりして遊んでました。
あきあこ:「チョッと疲れたな~・・・・・バンドエイド剥がれて血が出てきたか~。まぁ、ええか」
私はセイルをおろしボードに上半身を、セイルに下半身を乗せるようにして、誰もいない海の真ん中で大の字になって空を見上げました。
雲は流れ、温かい風が頬を撫で通り過ぎていきます。小さな波がハンモックのように私の身体を心地よく揺らしてくれます。波の音と風の音、そしてふりそそぐ太陽。ここだけはまるで別世界のようにメローな時間と風が流れています。
あきあこ:「ずーっと、このままいたいな~・・・・・」
★★★私がウインドを始めて一年たった頃のお話 その2★★★
あきあこ:「あ~あ~、もう3時すぎてるやんけ~。喉も渇いたな~・・・・・まぁ、ええか~」
2時間ぐらい大の字になって琵琶湖のど真ん中で寝ていたが、風は一行に吹く気配を見せず、照りつける太陽で喉もカラカラ。私は意を決して琵琶湖の水をがぶ飲みした。私が横断した場所は琵琶湖の北部のほうで水も比較的綺麗やったから、味はちょい生臭かったけど飲めんことは無い。
対岸に進むべきか、引き返すべきか。普通やったら迷うとこやけど、私は迷わず対岸目指してボードにしがみつきながら泳ぎ始めた。
あきあこ:「そのうち、風吹くやろ・・・・・」
★★★つづく★★★
あきあこ:「どんな、いい訳しよかな~・・・・・」
私がサイパンを訪れた雨季から乾季に変わるこの季節は、トレードウインド(貿易風)が安定せず、風も吹いたり止んだりしています。時々強い目の風も吹きますが、すぐに止んで穏やかな風になったりするんやけど、こういう風の事を「ガスティ」って言いますねん。
で、私はそんなガスティな風の中、妻との約束の時間もとっくに過ぎてるのに、沖でウインドを楽しんでいます。まぁ、妻は時間にルーズなとこがあって、「3時に出かけるから」とか言ってもそれから化粧したり、着替えたりするんで、1時間とか2時間とか平気で遅れることがありますねん。
かと言ってやね、私が時間守らへんかったらムチャクチャ怒るんやけど。
あきあこ:「そろそろ、帰ろか~、心配しよるやろから」
私はボードの向きを浜に向けると、セイルを引き込み走り始めました。
あきあこ:「ストップ・ザ・シーズン・イン・ザ・サ~ン~~♪夏よ逃げないでくれ~、いつまでも、このままでいたいんや~♪」
太陽は少しずつ西の空に傾き始めていました。
★★★私がウインドを始めて一年たった頃のお話 その3★★★
あきあこ:「風!キターーー(゜A゜)ーーーー!!」
誰が名づけたか知らんけど、琵琶湖には「琵琶湖マジック」って呼ばれる風が吹くときがある。ある気象条件が揃うと吹く風なんやけど、吹くときは夕方から夜の8時ぐらいまで琵琶湖の北部に風が吹き続けるんやね。
で、私はその「琵琶湖マジック」って言う風をとらえて再び対岸を目指した。そして太陽が対岸にある山陰に隠れ、辺りが暗くなり始めた頃、私は目的の浜よりかなり風下の浜って言うか茂みに上陸、悪友の待つ浜を目指して重い道具を担ぎトボトボと歩き始めた。
あきあこ:「あ~あ、約束してたのに・・・・・。また、すっぽかしてしもた~。優子・・・・・怒りようるやろな~。まぁ、ええか~」
私は悪友が心配して、琵琶湖沿いの国道を行ったり来たり探してるなんて事など考えもせず、当時付き合っていた彼女の事を考えながら歩いていた。
★★★つづく★★★
あきあこ:「あれ?部屋におらへんやん!怒って1人で買いもん行ったんかな?やばいな~・・・・・」
約束の時間を過ぎること2時間30分ぐらい。部屋に妻はいませんでした。とりあえず、速攻でシャワーを浴び着替えを済ませ、言い訳を考える私。すると妻が帰ってきました。
妻:「ゴメ~ン、ちゃうねんて!ちゃんと4時頃に帰ってきたんやけどな~、おみやげの石鹸買うの忘れてな~、向かいのショッピングセンターに行っててん・・・・・待った~?」
あきあこ:「エッ?・・・・・え~っと、あ~ん、そ、そんな待ってへんで・・・・・まぁ、ええやん・・・・・ほんなら、買い物いこか~」
妻:「チョッと待って~、化粧直すわ~」
と、いう訳で妻もショッピングを楽しんだようで遅れたおとがめも受けず、妻が準備する間ラナイで海を眺めたそがれていました。
あきあこ:「明日の朝の飛行機で帰らなあかんねんな~・・・・・」
ビーチを見下ろすと、1組のカップルが足だけ海に浸かって戯れています。楽しかった旅行の終わりを告げるように、西の空は赤く染まりはじめていました。
★★★私がウインドを始めて一年たった頃のお話 その4★★★
悪友:「あきあこ!優子ちゃんかて心配してたんやから電話ぐらいせえよ!」
あきあこ:「アホか!お前が優子に電話なんかするさかい、話がややこしなるねん!いらんことすんな!」
悪友:「優子ちゃんのこと、もうちょっと考えたれよ~!」
あきあこ:「お前に言われたないわ!」
琵琶湖横断を無事果たしたその日の帰り道、車の中で口論する私と悪友。
悪友:「あきあこ~、ウインドサーフィン始めたんや!今度一緒に行こ~、ギャル付きやぞ~、デヘヘ~」
悪友が不純な目的でウインドを始め、私もそれにつられて同じ目的で始めたんやけど、その時に漏れなく付いてきたのがピチピチギャル(死語やんけ!)の優子。まぁ、私も悪友もウインドサーフィンを武器に、あっちこっちでけっこうええ思いをしてたんやけど、夏が終わると潮が引くようにピチピチギャルも去り、残ったのは優子だけ。
夏も終わり本格的にウインドサーフィンにのめり込んだ私。デートと言えば行き先は海か琵琶湖。浜に優子を置き去りにし、風と波に戯れ続けた。偶におしゃれなデートの約束をしても、風が吹いたと言ってはデートをすっぽかし、草レース後の浜宴会が盛り上がったと言っては約束を破り続けた。そして1年後、優子と私の仲もすっかり冷え切り、終わりが近づいていた事はお互いわかっていた。
悪友:「もう、夏も終わりやな~。お前いつまでウインド続けるねん!夏も終わったらギャルも・・・・・」
あきあこ:「アホか!これからが風吹く季節やんけ。お前みたいにギャル目当ての夏だけウインドサーファーと違うんじゃ!」
私はその日夜遅く、優子の部屋を訪ねた。そしてそれが優子と会った最後の日になった。
噂によると、優子はその後結婚し子供をもうけたが離婚したらしい。女好きで新しい物好きの悪友は、その後も相変わらず遊び呆けてたが、スキー場でナンパした女性と出来ちゃった結婚、現在は3児のマイホームパパをしている。私はその後もウインドサーフィンを続けたが腰を痛めアマ選手を引退、メローな時と風に戯れ続けた季節は終わった。
海に沈む夕日を見ると、今でもそんな思い出が蘇ってくる。
★★★おわり★★★
あきあこ:「○○~(妻の名前)。ちょっとビーチに行って写真撮ってくるわ~」
妻:「私も直ぐ行くし~」
私はカメラを片手に急いでビーチに駆け下りました。
今回の旅行でお世話になったビーチハウスは既にクローズし、いつもホテル前のビーチで客引きをしていた優しいチャモロ人もいません。海を見ると先ほどのカップルが抱き合いキスをしています。太陽は真っ赤に燃えビーチを赤く染め、水平線に消えようとしています。私は沈み行く太陽にカメラを向けシャッターを押し続けました。
海と夕日と恋人
そして、太陽はゆっくりと水平線のかなたに沈んでいきました・・・・・
妻:「あきあこ~、いい写真撮れた~?」
振り返ると妻がたたずんでいます。
あきあこ:「ああ、壁紙用のええ写真いっぱい撮れたで~。ほんなら買い物行こか~」
妻:「うん!また来年旅行しよな~。今度はタイがええな・・・・・」
あきあこ:「そやな~、パタヤとかプーケットがええな~」
妻:「ビーチリゾートばっかりやん!私は観光がしたいねん!」
あきあこ:「観光って、買い物ばっかりやんか!」
妻:「ちゃうねん!私は買い物しながら、現地の人らと文化と交流をあsdfghjk・・・・・」
ビーチを後にした私達夫婦は、ガラパン地区にある大型のショッピングセンターで買い物を済ませ、その日予約していた「トニーローマ」って言うリブの美味しい店で、サイパン最後の食事を楽しみました。
あきあこ:「さぁ、ホテル帰って荷造りしなアカンな~」
妻:「私お土産いっぱい買ったから、あきあこのスーツケースに入れてな~」
あきあこ:「ええで~(最初から、そのつもりやろ!)」
こうして、今回サイパン旅行最後の夜は何事も無く更け、ホテルで3時間ほど仮眠を取り、夜中の3時にはホテルを出発。空港でチェックインの時にライターを没収されたものの無事搭乗手続きを済ませ、夜が明ける頃日本に向け私達夫婦を乗せた飛行機は飛び立ちました。
エピローグ
5日目 日本時間午後1時50分。
JR○○駅前から家の方向に行くバスは1時間に1本しかない。バスの出発時刻は午後1時55分。
妻:「あきあこ~、バスもう出るで~」
あきあこ:「・・・・・・」
私が持つ大型のスーツケースには妻が買った土産物がパンパンに詰まっています。ココナツ石鹸にマンゴージュースにチョコレート・・・・・。
重たいもんばっかりヤンケ!
身軽な妻は階段を駆け下り一足先にバスに飛び乗りました。階段を1段下りるたびに思いスーツケースが足にゴンゴン当たって痛いけど、必死に降りる私。
妻:「あきあこ~~~~~、早やく~~~~~!」
おわり
あとがき・・・・・みたいなもん
みなさん、ウダウダ書いた旅行記を読んで頂きありがとうございました。メローな雰囲気を味わって頂けましたでしょうか?
ヘェ?メローの意味がまだようわからんって?
Yahoo!辞書 で調べると・・・・・
メロー【mellow】
[形動]
1 果物などが、熟しているさま。香りや甘みが豊かなさま。「―な味わい」
2 人柄などの円熟したさま。また、音などが、柔らかくて豊かなさま。「―な雰囲気」
南の島で過ごすと、時間とか風を甘~く感じるんやね。私は。今回の旅行は短かったのでちょっと慌ただしかったんやけど、次のタイ旅行はせめて一週間ぐらい行きたいです。
最後のほうは旅行してから随分と日がたってたんで、写真を見ながら思い出して書いたんやけど、まぁ、これと言った大きな喧嘩も無しでよかったです。結婚式を兼ねた新婚旅行のときは喧嘩ばっかりやったしね。
そうそう!妻の事故の話やけど、ようやく示談も終わり怪我のほうも順調に回復しています。って、言うかムチ打ちなんやけどね。ほんで、示談中は相手と揉めずに妻ともめることのほうが多かったので、次回は何時になるかわからんけど、そんなお話を書けたらと思います。
それでは、みなさん、次回のチョッピリ創価なお話「妻の感情、私の感情」で、お会いしましょう~。
コメントのお返事もボチボチ書きますね~。たぶん。