京都で、着物暮らし 

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KIMURAの読書ノート『ナウシカの飛行具、作ってみた』

2017年06月18日 | KIMURAの読書ノート
『ナウシカの飛行具、作ってみた』
八谷和彦 著 幻冬舎 2013年

昨年の夏、「メーヴェ」が開発され、空を舞ったという記事を新聞で目にした。「メーヴェ」とは、宮崎駿映画監督原作のコミック『風の谷のナウシカ』(徳間書店:1984年監督自身が劇場版アニメとして手掛けた)の中で、主人公ナウシカが乗っていた飛行具である。エンジンが搭載されているが、気流に乗って滑空する方法が基本となっており、作品の要所要所でこの姿が描かれている。私自身、このシーンを思い浮かべるとつい劇中で使われた久石譲さん作曲の「鳥の人」が頭の中で鳴り響くほどインパクトのある姿である。しかし、これはあくまでも、架空の乗り物である。そのため、この記事を見た時は、半信半疑であったが、それでも思わず食い入るように読んでしまった。

そして、先日のこと、この「メーヴェ」の開発過程がまとめられ書籍化されていることを知った。それが本書である。

2003年、イラク戦争が起こる。この時、日本は、イラク特別措置法を成立させ、自衛隊をイラクに派遣した。本書の著者であり、「メーヴェ」の開発者である八谷さんは、この法律の成立に対して「議論も、躊躇もなく」と表現し、「こんなに簡単に戦争に参加してしまうのか」と思い、ナウシカの世界と重なり合ったという。しかし、ナウシカは当時の日本の総理とは全く反対の判断を下す。八谷さんは、この時、いつか現れるナウシカのために「メーヴェ」を作って、世界が変わるのを待とうと思ったと語る。それが、「メーヴェ」開発の直接のきっかけである。「ナウシカ」のテーマの一つに自然と文明の対立があり、戦争への批判の側面も持っていると私は思っているが、「メーヴェ」そのものは、自然を味方につけた戦争とは反対側にある乗り物である。そして、架空の乗り物を実現させるというのは、ある意味夢のプロジェクトである。しかしながら、開発のきっかけになったのが「戦争」というのは皮肉なものである。

本書は上記「きっかけ」から始まり、資金繰り、試作品づくりなど、記述してあるが、決して学術書ではないので、誰でも「ナウシカ」のメーヴェをイメージしながら、読み進めることができる。更には、多くのページの下部分に、その当時の画像を貼りつけており、「メーヴェ」を知らなくてもその行程が理解できる。架空の乗り物を実在させるというその一例としてのガイドブックという一面としても楽しむこともできる。

実は本書、2013年夏の試験飛行の時までが綴られている。この時の高度が2.5メートル、飛行時間は11秒、飛行距離は130メートル。そして、私が「メーヴェが空を飛んだ」記事を目にしたのは、最初に書いたように昨年の夏のこと。つまり本書出版以降も、更なる開発は進められていたのである。昨年の記事(2016年7月31日:朝日新聞デジタル)によると、高度70メートル、離陸時間5分程度となっている。すでにこの時点で13年の歳月をかけている。今となってはその八谷さんの熱い情熱のうちの全てではなく、10年分だけが本書で堪能できるということになってしまったが、それでも「想い」は十分に伝わってくるのではないだろうか。ちなみに2013年の試験飛行、2016年の公開テストの様子はインターネットの動画で見ることが可能である。(「メーヴェ 動画」で検索)

尚、八谷さんはこのプロジェクトは自身が勝手にやっていることで、宮崎駿監督やジブリに迷惑がかからないよう、この機体に「メーヴェ」とは名付けていないことをここに付け加えておく。(文責 木村綾子)



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