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トランプ政権の「先制攻撃」はソウルで100万人が死ぬ

2017-04-07 05:02:22 | 戦争


北朝鮮の暴走が止まらない。過去最大規模の米韓合同軍事演習に反発し、北朝鮮が6日朝、ミサイル発射を強行した。北朝鮮は、昨年の米韓合同軍事演習の際も対抗措置として、新型中距離弾道ミサイル「ムスダン」を発射するなどしている。今回も同じような挑発行為に出た格好だ。

 

ただ、今年は様相が違う点がある。今年の場合は、北朝鮮だけが強硬姿勢に傾いているわけではなく、米政権も強硬姿勢をみせている。国連制裁を無視し、核・ミサイル開発を続ける平壌に対し、直接対話の可能性は排除してはいないものの、米国は軍事オプションをちらつかせ、このところ、ぐっと北への圧力を強めている。

 

しかし、こうした米国の強硬姿勢は、核の非核化や開発凍結に向けた譲歩を引き出すための、一種のブラフ(脅し)に過ぎない。実際の軍事力行使はさまざまな理由から事実上、不可能だ。

 

米紙ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)によると、トランプ政権は、北朝鮮の核ミサイル開発をほとんど放置してきたオバマ前政権の「戦略的忍耐」の方針を見直し、北朝鮮への軍事攻撃や体制転換を含めた「あらゆる選択肢」を検討しているようだ。特に、北朝鮮が米本土への攻撃が可能な大陸間弾道ミサイル(ICBM)の発射実験に踏み切ろうとした場合、北朝鮮を先制攻撃する軍事オプションも含んでいるという。

 

この意味で、発射されたミサイルが仮にICBMであったならば、それが北朝鮮に対して、米国が定めた「レッドライン」(越えてはならない一線)となった可能性があり、トランプ政権は金正恩朝鮮労働党委員長に早速、軍事オプションの本気度を試される一大事となるところだった。金正恩氏が1月にICBMをいつでも発射できると主張した際、トランプ大統領はツイッターで「そうはさせない」と述べていたからだ。

 

米韓両軍は、朝鮮半島有事を想定した毎年恒例の合同軍事演習を開始した。演習は約2カ月間続き、今年の訓練の参加人数は、過去最大規模で実施した昨年の米韓両軍計31万7000人を上回るとみられている。

 

2016年の米韓合同軍事演習では金正恩氏ら要人を狙った「斬首作戦」と称する訓練を実施し、北朝鮮は強く反発した。今年も斬首作戦の訓練をはじめ、北朝鮮国内の核やミサイルの施設を攻撃する訓練が行われる見通しだ。韓米両軍は今年2月中旬には既に、ソウル北方の京畿道抱川市で北朝鮮の大量破壊兵器(WMD)関連施設を探索・破壊する過去最大規模の演習も実施している。

 

北朝鮮への軍事力の行使に慎重だったオバマ前政権と違い、トランプ政権は、このように米国の強大な軍事力を背景に、北朝鮮への先制攻撃をちらつかせ、金正恩体制に圧力をかける戦術に乗り出している。

 

確かに、米国が軍事攻撃の覚悟を示さないと、北朝鮮は譲歩しないという過去の教訓もある。1990年代の「第1次核危機」の際、クリントン大統領が核施設攻撃を決意した段階で、北朝鮮は核放棄に応じた。しかし、その危機が去ると、北朝鮮は核開発を再開した。

 

また、ブッシュ大統領が「悪の枢軸」と非難し、イラク攻撃に乗り出すと、北朝鮮は6カ国協議に応じた。平壌は軍事攻撃の危機やレジームチェンジの危機に直面しないと、譲歩しない歴史がある。

 

クリントン政権期の第1次核危機と、2000年代のブッシュ政権期の「第2次核危機」のように、米国は今回も軍事オプションを検討している。しかし結局、先制攻撃をした際の韓国や日本の被害リスクが大きすぎる。今回も実行には移せない可能性がかなり高いのではないか。

 

北朝鮮の金正恩氏は過去の経験から、たとえ第3次核危機が起きても、北に対する武力行使や政権転覆などの米国の強硬姿勢は、単なる脅しであると判断する可能性が高い。トランプ大統領も、やりたい放題の北朝鮮の金正恩氏を放置せずに、米国民向けに強い指導者としてのイメージを広めるジェスチャーに利用するだけかもしれない。

なぜ米国は北朝鮮への軍事攻撃が難しいのか。一番の理由として、ソウルは、南北の軍事境界線から40キロしか離れてない一方、平壌は150キロほど離れている。このため、北朝鮮は戦略上有利にソウルを「人質」にとっていることがある。

 

2016年版防衛白書によると、北朝鮮の地上軍は、約102万人を擁し、兵力の約3分の2を非武装地帯(DMZ)付近に展開していると考えられている。戦車3500両以上を含む機甲戦力と火砲を有し、口径240ミリと300ミリの多連装ロケット砲(MRL)や170ミリ自走砲といった600門を超える長射程火砲をDMZ沿いに集中配備する。これらを撃てば、韓国総人口の約半分の2500万人を占める首都ソウル一帯に着弾できる戦略的な強さを有している。

 

米国による北朝鮮への先制攻撃がもたらすリスクについて、盧武鉉政権時に大統領府外交安保首席秘書官を務めた韓国国防研究院のソ・ジュソク責任研究委員は5日、慶應義塾大学で行われた朝鮮半島の安全保障政策に関するシンポジウムで次のように語った。

 

「北朝鮮の核ミサイル攻撃が差し迫って先制的に攻撃をするpreemptive attackであれ、(最近米国で議論されているような)北朝鮮の核能力がさらに高度化される前に、予防的に核攻撃施設を攻撃するpreventive attackであれ、北朝鮮は自らの安全保障体制への攻撃であるので、非常に強硬な反応を見せる」。続けて「米韓の攻撃能力がいかに優れているとしても、北朝鮮の核能力をすべて破壊することはできない。北は当然、核を動員した反撃をする。

同時に、長射程砲など北朝鮮が持っているさまざまな攻撃手段を活用した対韓国、対米国攻撃に入る」と述べた。

 

そして、「(2010年に南北で砲撃事件があった)延坪島やソウルなどを含めた広範囲な場所に対する反撃につながると思われる。94年のクリントン政権時には、米国が北朝鮮の核施設を対象にサージカルアタック(局部攻撃)をしたら、10万人以上の米国人と100万人以上の韓国人が死亡するとの計算があった。

 

おそらく今は北朝鮮の攻撃能力が上がっているので、被害はもっと大きくなる。韓国のいかなる指導者も先制攻撃があってもいいと考えている人は一人もいない」と述べ、米国による先制攻撃のリスクに強い懸念を表明した。

また、米国による北朝鮮への軍事行使の可能性が低い理由として、トランプ大統領がイスラム国(IS)など「イスラム過激主義のテロ根絶」を最優先事項に掲げることがある。

 

志方俊之・帝京大名誉教授(安全保障)は筆者の取材に対し、「トランプ政権は中東問題の解決が先。マティス国防長官やマクマスター大統領補佐官らは中東の専門家で、対ISが何より優先される」と述べた。

 

また、退役海兵隊大将のマティス氏や陸軍中将を務めたマクマスター氏は戦闘部隊司令官でもあったことから、アジアで不必要な戦争や無駄な犠牲者を生じさせる考えはないとみられる。特にマクマスター氏はかつて著書「Dereliction of Duty(=職務怠慢の意)」を出版し、ベトナム戦争の泥沼化を分析し、当時の大統領や軍上層部を批判した。軍史や戦略の専門家としても知られる同氏がうかつに第2次朝鮮戦争を引き起こす北朝鮮への先制攻撃を強行するとは思えない。

 

朝鮮問題のルポで知られ、38度線を撮り続けている報道写真家の山本皓一氏は筆者の取材に対し、北朝鮮は38度線の山の斜面にはトンネルや土嚢を使って大砲や移動ミサイルを隠している」と述べ、米軍の先制攻撃で北の兵器を破壊する難しさを指摘した。

さらに、「トランプ大統領が実力行使をしたら、北朝鮮は当然、在日米軍の総司令部がある横田基地や横須賀基地をミサイルで狙うだろう」と憂慮した。

 

慶應義塾大学の西野純也教授も前述のシンポジウムで、「軍事的なオプションが今後ともテーブルの上に載せられていく状況は続くと思われるが、それは韓国だけでなく日本にも重要な意味を持つ」と指摘。「とりわけ安倍政権になって、厳しい安全保障環境の中で、日本の安全保障政策が法律を含め、大きく変わってきている。

 

もし朝鮮半島情勢に何かが起これば、日本はより深い形でかかわらざるを得ない」と話した。緊迫する半島情勢に日本も翻弄されることになりそうだ。

東洋経済からの引用記事

 

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