経済都市である香港の財政長官として、ジョン・ツァン氏は世論から高い評価を得ていたにもかかわらず、なぜ中国政府は支持しなかったのか?
まず、選挙委員会で多数を占める新中派の支持を取り付けなければならないにも関わらず、彼は民主派の支持をとりつけようと動いたことが敗因として挙げられる。
選挙改革についても、完全普通選挙に近いことをするという民主派の意向を取り入れた。
中央政府の香港の出先機関である中央政府駐香港連絡弁公室の職員は、ジョン・ツァン氏を支持しなかったにも関わらず(立候補を控えるよう説得したという報道もあった)、
親中派以外の票と財界の一部の票を取り込めば、彼が当選できると票を読み、出馬することとなった。
ただ、取材をして見えてきたのは、彼が「見た目は香港人だが中身はアメリカ人」と判断されたことも、少なからず選挙に影響したのではないかということだ。
確かに彼は香港生まれだが、13歳の時にアメリカに移住。思春期にどういった教育を受けるかは、その後の思想に大きな影響を与えるが、その意味で、彼はアメリカの考え方に強く影響を受けている。
一方で、中央政府は、最初からキャリー・ラム氏の立候補を支持することを決めていた。だた、最初から彼女の支持を表明すると、民主派から攻撃される材料を与えてしまうため、
「欽点」(事実上の中央政府による指名)をするのは避けていた。前回の行政長官選挙は、本命だった唐英年(ヘンリー・タン)元政務長官の住宅スキャンダルによって、
香港市民が大反発を起こしたため、やむを得ずCY・リョン氏を推さざるを得なくなった。結果的に親中派内で分裂選挙のような状況に陥り、選挙後も影響が残った。
今回はそのような事態を防ぐため、見かけ上、親中派同士の対決にはなったが、その裏で中央政府はしっかりキャリー・ラムが当選するように画策していたのだ。
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