ノートとえんぴつ

あかしかのつづき

太郎

2016-11-07 20:18:45 | 日々のできごと
いも虫の太郎は11㎝もある巨大いも虫で
顔の前に手をさし出すと
素直に手のひらに上ってくる

そこには
まちがいなく
ぽってりとした重量感があって

6本の前足の確かな足取りの感触とともに
ふくふくとした体をひきずって
手のひらを移動する

無心である

彼は私が誰かも知らないし
私は彼の想いも
目的も
目標も知らないが

ただ習性のなせる業か
やわらかく冷たく
やさしい存在感を
手のひらに残して
動き回る

私はじっとそれを見ている
無心のそれを見ていると
あまりにいじらしく
美しく
心地よく
満たされる

手のひらに残る感触
やわらかさと冷たさと
重量感
これが太郎である
こちらの心もちなど
つゆ知らず期待もせず
ただやさしく存在する
これが太郎である

太郎はりっぱに
大型の蛾になって
見事な変身を遂げたけれど

手のひらにのせると
やはりぽってり重たい
やさしい太郎だった

やさしさとは
こちらを気遣ってくれるとか
気持ちを分かってくれるとか
そういうことではなくて
ただ無心に無防備に
手のひらの上に
存在してくれていること
目の前に
その存在をさらけだしてくれていること

***

きのうゆーきゃんの歌を聴いていた時の
幸福感は
太郎を手のひらにのせている時と
似ていると思った

ゆーきゃんがどんな想いで
何の曲をやったかとか

(きっとそれも大切で
それが空気を作ったのだろうけれども)

そういうことよりも

そこに
ゆーきゃんが存在して
歌ったり話したり笑ったりしていて

私はそれをただ見て
その音と空気に触れて

やわらかく
ひんやりと
やさしい
軽やかなのにぽってりとした
ゆーきゃん独特の感触を

(太郎に似ていた!)

確かにそこに感じて
奇跡のように心地よいと思った

ゆーきゃんはそんなライブを
するんだなあと思った

そんなライブを経験できて
うれしかった
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