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常識とは何?何気なく使う言葉の危うさ。噛みつき亀風味でもの申す。脱線ご容赦。あくまでもお馬鹿な私の私論です。最近ボケ気味

実験的小説セッション   オフ泥棒    第八話

2017年09月24日 20時45分25秒 | 小説

                     

 

   

 

事務所に探偵が忍び込んでいるとは知る由もない私は自宅で久しぶりのオフを満喫していた。

私の自宅は元々は日本で屈指の企業が所有していたものを、戦後に何らかの経緯で叔父のものとなったそうで、敷地は1000坪あった。親の代までその企業に勤務していて毎朝黒塗りの大きな車が迎えに来ていたのを覚えている。私が写真を仕事にしたいと言った時両親をはじめ叔父叔母などの猛烈な反対にあったのだった。素人でありながら数々の賞を総なめにした3年前ですら変わることはなかったのだ。そんなものは一時的な事でちゃんとした仕事に就きなさいと言われていて、じゃぁ大企業の看板を盾にして仕事をすることが偉いんですか等と口論になったことも多々あった。将来が約束されている生き方は陳腐なものだと私は考えていたのだ。サラリーマンとはサラリーを約束されているが、サラリーを自分の腕で稼ぎだす方が余程人生が面白いと思っていた。

 ただ、独学のいわば素人が応募した写真が数多の賞を受賞した後に、受賞の取材などを受けていて、中には私が知らない専門用語などもあり私は私なりに出した答えは、そのままプロにならないで基礎から知識武装をするということだった。だから、3年間の歳月を要したのであった。

 自分のタイミングで。私はそう考えていてもしそのタイミングが駄目だったらその時はきっぱりと写真とは決別するつもりだったのだ。

過去の栄光とは全く無関係に名前もペンネームにして更に顔出しNGにしてプロデビューして再び射止める事に成功した。「X」というペンネームで発表した作品群はまたたく間に業界に知れ渡り幾つもの栄誉ある賞を受賞した。そう、あの時とお同じく。違っている事は偶然の産物ではなく意図を明確にもって撮影したということだろう。受賞の際に、授賞式に出席しないと言うことは異例で批判もされたが、代理人出席で押し通した。とはいえ、仕事なので編集者をはじめ撮影など当然ながら顔をださなければならないことは沢山ある。そこで私は私自身に関する容姿風体について他言しないこと、当然撮影することなどは一切不可という文言を撮影時に取り交わす契約書に織り込んだ。その為ややこしい部分はあるものの、仕事人としての自覚と知識を持って仕事をこなしていけた。今では、スケジュールは早から深夜までぎっしり埋め尽くされていた。なのでこのようなオフは実に久しぶりのことなのだった。篠山紀信が週刊誌のグラビアを写していた時期8ページで200万さすがだと話題になった事があった。私からすれば篠山紀信は天上人で実は写真の知識と造詣の深さにおいて間違いなく日本の写真史を動かしている人だと思っていた。しかし、ギャランティだけを計算すると軽く凌駕していた。

私の自宅での楽しみは、長年連れ添っている愛犬と愛猫と遊ぶこと。また敷地内に建てた3階建て地下1階の自分だけの建物で過ごすことだった。真ん中が吹き抜けでらせん状の階段がある。各階には書架があり、屋上はドーム型のワークスペースとなっていて、地下にはオーデイオや楽器類があった。こじんまりとした建物だが母屋から離れた場所に建てた。

そこでくつろいでいる時に一本の電話がなった。アシスタントからだった。電話に出るなりあわてふためいた口調で「先生僕です。事務所が荒らされたようです。それと、謎の女ですが私では話にならないといって帰ってしまいました。なんだか変な名刺のようなもんを預かりましたが・・。一応警察に届けておきますが、鍵が壊されていて・・・どうしましょう」混乱した声でで一気にまくし立てててきたのだった。私は未納品のカットなどが被害に合っていないか?真っ先にそれが気になった。そしてアシスタントに「警察を呼んでくれる・・それから例の場所にちゃんと納品するのがあるか確認しておいてくれる?」せっかくのオフなので私は少しく不機嫌に答えた。

その姿を双眼鏡で覗いている工藤がいた。近隣マンションの最上階付近でアンテナをもって会話を聞いていたが事務所に侵入した事がばれても焦りの色は全く無かった。

           2017年9月24日 UP

   今回は 単独UPです



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