赤峰和彦の 『 日本と国際社会の真相 』

すでに生起して戻ることのできない変化、重大な影響力をもつ変化でありながら一般には認識されていない変化について分析します。

日本の役割が拡大するCOP21 コラム(92)

2015-12-12 00:00:00 | 政治見解



コラム(92):日本の役割が拡大するCOP21

パリで開かれている地球温暖化対策の国連の会議COP21では、先進国と発展途上国との主張が噛み合わず、どこまで歩み寄れるかが大きな焦点となっています。


国益という名のエゴイズム


国際会合で意見が集約できない理由は国家間の利害の衝突にあります。「国益」という名のエゴイズムが存在するので意見は簡単にまとまるはずがありません。

環境汚染の発生源となっている国がなかなか改善できないのは、CO2の削減や環境汚染を取り除くことが国の経済成長を止めてしまうと考えているからです。こうした問題を解決しない限り地球規模での合意を取り付けることはできません。


方向性を示した安倍首相

今回の会議でも日本は本質的な問題の調整を担っています。1997年の京都議定書を取りまとめ、先進国に対して温室効果ガスの削減を義務付けた実績から、今回も調整役としての役割が期待されていました。

COP21の首脳会合で、安倍首相は以下のような具体策を提示しています。

1.地球の中心部にある地熱エネルギーを取り出し、アフリカにクリーンな電気を届ける
2.電力網が張り巡らされていない地域に、太陽光で光を灯す
3.日本の都市の経験を、急速に人口が集中しつつあるアジアの新興都市に伝える
4.太平洋島嶼国の人々が、台風の接近前に余裕を持って避難できるよう、早期警戒のための設備やノウハウを提供する

メディアでは途上国に1.3兆円の支援表明をしたことだけが報道されていますが、COP21に方向性を示す大きな役割を果たしているのです。


二国間クレジット方式がもたらす効果

一方、全体会議でなかなか合意がとれない状況の中、ここでも日本は画期的な提案をしています。

日本が途上国に対し温室効果ガス削減技術やシステム、インフラ対策等を支援することで、途上国の温室効果ガスの排出を減らそうとする二国間クレジット方式(JCM)の提起です。

日本はすでに16カ国(モンゴル、バングラデシュ、エチオピア、ケニア、モルディブ、ベトナム、ラオス、インドネシア、コスタリカ、パラオ、カンボジア、メキシコ、サウジアラビア、チリ、ミャンマー、タイ)との間で実施し、まもなくフィリピンとの合意も予定されています。

丸川環境相はJCM参加国との会合で「JCMは議論をするだけではなく、実現するものだ」とスピーチし、多くの国の賛同を得ています。このような二国間の合意による方式は、より具体性のある方法として期待が高まっていて、今後さらに多くの国々と積み上げることで実効効果をもたらすと思われます。

単に資金援助だけでなく、相手国の発展を願っての政策は、確実に途上国の発展に寄与することが出来るのです。

覇権を目的とした中国のAIIB構想に距離を置くアジア諸国にとっても、日本のJCM構想は受け入れやすいものとして歓迎されているのです。


国家的エゴイズムに決別を

地球の環境破壊は、元をただせば自国の利益だけを追求した国家的エゴイズムの結果です。

これからの時代、相互に思いやる外交なしに国際社会は一歩も動かなくなっていることを再認識したいと思います。



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