『音色』について

2019-03-15 09:36:37 | 作り話

「私の作った寝具で誰かを
幸せにするお手伝いがしたい」
そう思いついたのだが
どうすれば良いか解らない

 

誰を幸せにするのか?

 

そうだ! 
何かに夢中になっている人がいい

 

そうして
“何かに夢中になっている人を
応援する寝具ブランド”
『四六時中』を立ち上げた

第一弾目として将棋が好きで
将棋の事を年中考えている人
そういう人に向けて
『将棋柄のピロケース』を作った

 

もっと多くの夢中人に対して何か
作れないだろうか?
将棋の競技人口は一節によると700万人
チェスは世界に8億人もいるらしい

そうだ!
「チェス柄ピロケース」を作った
(二番煎じと言うより、すごく単純な
発想でそうなった)

 

では次は….

 

丁度その頃「ペルソナ」という
マーケティングのセミナーを受けた

広く、多くの人をターゲットにして
モノづくりをするよりも
その人物が実在しているかのように
年齢、性別、居住地、職業、役職
価値観、家族構成、生い立ち
休日の過ごし方、ライフスタイル
などリアリティある設定をして
作った方が人の心に刺さる
ような気がした

 

『音色』は四六時中ブランドが
出す第三弾の商品コンセプトを
ペルソナの手法を使い
書き出していった数々の言葉を
元に物語風に書き上げてみました。

 

拙い文章にお付き合いして
くださった方々ありがとう
ございます。

 

『四六時中』ブランド 
第三弾
近日発売します。

 

乞うご期待!


音色 -最終回-

2019-03-11 08:24:45 | 作り話

この漁師町に帰って来た時母は
私に言った。
「陽の面倒は私がみるから
あんたもう一度外に出て働いと
いで」
家計を助けるためと言うより
働きに出ることで自分だけの時間
が持てる事の方が魅力だった。 
だからすぐに大町にある会計事務
所で事務職の仕事を見つけた。
最初は娘を一人にして一日中家を
空けるのは心配だったけど陽が
おばあちゃんに良くなついてくれ
て助かった。

母も近所の猫も人の声が聞き取れ
ない。
寡黙な陽と良い関係のようだ。

さて、これからは忙しいな。
卒園式に小学校の入学式、その前
にピアノの発表会もある。
あの子 ちゃんと弾けるかな?

大丈夫だよね、このところ毎日
よく練習しているし、
おばあちゃんも
「陽! だいぶ上手くなったね」

って、母には聞こえるのかしら
陽の音色?
いつもあんなに大きな声を出して
も「えっ?何?」って言うのに?

陽が弾く拙い旋律、お世辞にも
上手な演奏とは言えないが、なん
だか楽しそうな音色に聞こえる時
がある。
まるで陽がこっそり楽しい事を
おしゃべりしているような。

 

4月になったら陽の子供部屋も
出来る。
机やベッドは母がどこからかお古
を貰ってきたけど、フトンカバー
位は新調するか。

大町にある電鉄系のデパート
栄子が高校に通い始めた時から
ここにずっとある。
でも、寝具売り場なんて初めて
来た。

「やっぱり、女の子だからカワ
イイ方が良いかな?」
淡いピンクのカバー 無地の
ように見えてかすかに模様が
あるようだ?

「最近、眼が悪くなったのか
しら? 嫌になっちゃう!」
独り言をつぶやきながらそのカ
バーを手に取り広げてみた。

 

ピアノの柄だった。

 

陽のつぶやく楽しいそうな音色

何故だか急に聞こえてたような
気がする。

 

声なんか出なくても
あの子の手から
あの子の気持ちは
ちゃんと伝わるんだ。

 

値段を見た。
「今日一日のパート代より高い
か~?」
「でもまあいいか! 
又、明日働けばいいのだから」

何故か急に栄子は楽しくなって
来た。
早く、新しい子供部屋にこの
カバーをかけたいな。
あの子どんな顔するだろう?

きっと喜んでくれるはず。

 

駅に向かいながら空を見上げると
薄明るい夕焼け空が見えた。

 

「まあ、気長にやるか!」

 

栄子は手を上げて背伸びをした。


『音色』 -第7話-

2019-03-04 07:05:21 | 作り話

ピアノの先生は48歳の女の人。
日本の音楽大学を卒業した後
アメリカのジュリなんとかって
学校にも行ってピアノを勉強し
てたんだって。

「離婚して故郷の湯川町に戻って
きたらしいよ」
って、おばあちゃんはいつも余計
な事まで教えてくれる。

ピアノ教室は先生1人と生徒は
2人。 グループレッスンって
言うんだって。 
いつも同じ日に練習するのは
湯川町で温泉旅館をやっている
家の子、さっちゃん。

レッスンはいつも指の体操から
始めて次は読譜。

「読むときは実際に弾いている
様子を想像しながら読むのよ!」
って先生が言ってた。

この前さっちゃんは
「ひなた、そんなちっちゃい声
じゃあピアノの音が出ないよ!」
って。

やっぱり私の声、聞こえない位
小さいのかなあ?

だけど先生は
「大丈夫よ。ちゃんと声に出した
とおりに弾けているから。
ほ~ら、ちゃんと音が鳴っている
でしょう」

さっちゃん、解ったような解ら
ないよな感じで
「そっか~」って言ってた。

 

続く


『音色』 -第6話-

2018-11-29 07:35:46 | 作り話

栄子は32歳の時に陽を生んだ。
栄子の嫌いなこの漁師町を出てから
14年目のことだ。

陽は赤ちゃんのときよく泣く子
だったかな?

もうしゃべってよい2歳くらいから
今日まで、あまりにもしゃべらない
我が子しか記憶にない。

最初は発達障害かと思った。
その後は緘黙(かんもく)。
親が過保護過ぎるからだって言われ
た事もあった。
育て方が悪いのではないのかと
悩んだ。

最初にものすごく小さな声が陽から
微かにだが聞こえた時、大泣きした。

「出るんだ! 声!」

しかし、その後もほとんど聞こえない
ような小さな声しか出せない娘に

 

「何を言っているの!」
「どうして欲しいの?」
「何か言って!」

ついつい、大きな声で感情を露わに
してしまう自分にも腹が立った。

出張でいつも家にはいない哲夫に
対しても。

 

何度も
「私にわかるように話してくれ!」
と娘に迫りながら
困惑する娘を見るたび
「ひなた、ごめんね」って何度も
泣いて謝った。

 

『私だけ...何故....?』

辛かった。

 

 


『音色』 -第5話-

2018-11-15 09:46:18 | 作り話

ピアノを習い始めたのはおばあ
ちゃんと見ていたテレビ番組が
きかっけ。

商店街に1台のピアノが置かれて
いて、誰が弾いてもいいの。
通りがかりの人が何気なくピアノの
前に座ったと思ったら、突然何かを
弾き始める。
すごく上手い人もいれば、何だか
さっぱり解らないのもあった。

夢中で見ていたのはそこが宮崎県
って所だったから。
私が生まれた時、お父さんは宮崎県
の日向市って所でお仕事してたの。
お父さん 私の名前を日向
(ひゅうが)って書いて
(ひなた)って名前にしょうとした
らしい。 それをお母さんが、それ
じゃあ女の子っぽくないからって
「陽」って書いて「ひなた」と
読む名前にしたの。

そんなに熱心に見ていたつもりは
無いのだけどおばあちゃん、突然
「あんた、ピアノ習ってみるかい!」
って。

お母さんは最初、ピアノ教室には
いい返事をしなかった。 この前
から3駅隣の「大町」で事務の仕事
をしているから。 朝9時前に出て
夕方5時に戻ってくる。
途中で抜け出して、私をピアノ教室
まで送り向かいをするの出来ない
んだって。

「それに、今の哲夫の給料と私の
パート代じゃあ、これから学費も
かかることだし…」

「私の年金から出すから、あんたは
心配いらないって!」
おばあちゃんいつも強引だ。

 

それで大町市とは反対方向で1駅先
の湯川駅のピアノ教室へ通うことに
なったの。

ピアノ教室にはバスで行くよ。 
おばあちゃんは「途中、途中で止ま
るバスの方が風情があっていいだろ」
だって。

今度小学校に入ったら子供部屋が
もらえるんだ。 今住んでいるアパ
ートの隣部屋、そこも空いてるから。

この家は海から近い所に建っている
けど、どの部屋からも海は見え
ないよ。
海風が強いからそうしたみたい。
でも今度の私の部屋からは背伸び
するとちょっとだけ海が見える。
海はいつも違う表情をしている。
波の動きを見ているだけで、聞こえ
ないのに波しぶきの音まで聞こえて
来る気がするから不思議だ。

 ピアノのは楽しいよ。
鍵盤を強くおせば大きい音が
早く弾けば早い音が出るから。

それに私が弾くピアノの音
誰にでも聞こえるみたいだし。

この3月には発表会。
だけどいつも右手と左手が同じ動き
をするから心配だ。

「週1回の練習だけじゃあねえ~」

おばあちゃんはそう言うとどこか
らか古い電子ピアノを貰ってきた。

「ほら、あの魚屋さんの三瓶さんっ
ているだろ、 あそこの上の子が昔
ピアノを習っていたけど高校に通っ
た後はもうやらないって。 それで
じゃまだし、要らないってさ」

ただじゃ悪いからって、おばあちゃ
ん、町に1軒しかない和菓子屋さん
でお饅頭を買って渡したんだって。

お母さんは「野暮ったい味」って言
うけど、私はほんのりとした甘さの
ここのお菓子が好きだ。