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【会津野】モダンタイムス

2017年05月04日 | 宿主からのブログ

おはようございます。旅人宿 会津野 宿主の長谷川洋一です。

「モダンタイムス」といえば、チャップリンの映画が有名。資本主義や機械革命を強烈に風刺し、労働者が個人の尊厳を失い機械の一部となることを描いたものです。

今回読んだのは、伊坂幸太郎の「モダンタイムス」。

こちらは、ネット社会が個人の尊厳を失わせ機械の一部になる、近未来を描いた作品です。

私の気になった文章を3つ。

★ ★ ★

「前にシステムの話をした。政治も経済も、人の気分や善悪も全部、大きなシステムに乗ってるだけだ、ってな」

「覚えてる」

「それが答えだ。誰それが悪いって言うんじゃなくてな、『そういうことになっている』としか言いようがない出来事で溢れてるってわけだ」

★ ★ ★

「世界なんて、誰かが変えられるものじゃないだろう」

「世界を変える、は表現だ。俺が言いたいのは、大勢の人間に何かを行動させるような小説を書きたかったってことだ」

(中略)

「いいか、小説ってのは、大勢の人間の背中をわーっと押して、動かすようなものじゃねえんだよ。音楽みてえに、集まったみんなを熱狂させてな、さてとら、みんなで何かをやろうぜ、なんてことはできねえんだ。役割が違う。小説はな、一人一人の人間の身体に沁みていくだけだ」

★ ★ ★

「占いってのは、それを読んだ人間の解釈次第だ。拡大解釈、読み替え、深読み、何でもいい、とにかく受け取った人間が当たるように考える。それが大事なんだ」

「それが大事って、五反田さん、占いの素人じゃないですか」

「おまえが占いに助けられたっていうのは、おまえ自身が自分を救ったんだよ。おまえの解釈が良かったんだ。占い自体に力はない」

★ ★ ★

1つめは、権力を持った悪者なんて本当はいないのに、スケープゴートを打ち立て、悪者がいるようにして気を晴らしている現代のことを、良く言い替えています。

2つめは、文章というものは、外からの力で人間を変えていくのではなく、内面から読みたいと欲求を持った人間の心に沁みていくことをよくあらわしています。

そして、3つめは、受け取る文章は、その人間が受け取りやすい形に考えて受け取るもの。そこから思考し、思考が人間を動かすことを言っている。

作者の伊坂さんは、たぶんシステムエンジニアの経験をお持ちだろうと私は思う。私もかつてシステムエンジニアだったので、システムエンジニア的な思考による表現が手に取るようにわかる。

この物語の中心は、そんな思考をめぐらす最中にネット検索を通じて得る情報を操作することだ。

検索は、大きなシステムの中のごく一部のことで、人はその結果を「そんなものだ」として受け取る。検索結果は、その文章を読む人にしか伝わらず、小説のようなものである。文章は、占いのように、読んだ人が自分で解釈し、思考を進める。

そういう工程を操作し、恐怖心を与える情報だけに絞ると、どんなことになるか。

思考の方法を考えたうえで、さらに思考を重ねることを読者に求めるこの小説。

かなり完成度の高い、素晴らしい小説。ゴールデンウィークに読みふけるのもいいですね。

今日も素敵な一日を過ごしましょう。

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