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【会津野】「観光(sightseeing)」

2017年05月12日 | 宿主からのブログ

おはようございます。旅人宿 会津野 宿主の長谷川洋一です。

書評家「倉本さおり」さんがおすすめしていた「観光(Sightseeing)」(ラッタウット・ラープチャルーンサップ著)を読んでみました。

7つの短篇からなる小説です。最初の「ガイジン」という短篇は、こんな書き出しで始まります。

★ ★ ★

ぼくたちは暦をこんなふうに分けている。六月はドイツ人---サッカー・シューズ、ばかでかいTシャツ、分厚い舌---がやってきて、唾を吐き捨てるように喋る。七月はイタリア人、フランス人、イギリス人、アメリカ人がやってくる。イタリア人はスパゲティに似たパッタイがお好きだ。明るい布地、サングラス、革のサンダルがお気に入り。フランス人はふくよかな娘、ランプータン、ディスコ・ミュージック、胸をはだけるのがお好みだ。イギリス人はここでも青白い顔で仕事をし、ハシシが大好物。アメリカ人はいちばんデブでいちばんケチ。パッタイや焼きエビ、ときにはカレーが大好きな振りをする。でも、週二回は自分たちの料理、ハンバーガーとピッツァを食べる。最悪の酒飲みでもある。酔っぱらったアメリカ人のそばには絶対に近寄ってはならない。八月は日本人を連れてくる。日本人のそばにはぴたりと張りついていること。円の力をみくびってはならない。手にした大国の金で買えないものはなく、しかし日本人は育ちがよすぎて値切ることを知らない。モンスーンが吹き始める八月の終わりまで、日本人たちは一丸となって、背中をたたき合い、薬を交換し、ベットをともにし、島にあるバーのピンク色の明かりの下で酒を酌み交わし続ける。九月になると日本人はみな出ていき、オーストラリア人と中国人に島を明け渡す。もっとも中国人はそこいらじゅうにいるので、あえて挙げる必要もないけれど。

★ ★ ★

タイ人の作者が、島を訪れる外国人の様子を綴ったと書評されていたことから、宿屋を運営する私も、観光関係者として読みたいなと思ったのがきっかけで手に取ったものです。

本のタイトルとなった「観光」という短篇を読むと、まずバンコクから南へ向かう列車に乗っている風景描写からはじまります。「ガイジン」のような主人公以外の第三者は、ストーリーに出てこない。旅する主人公は、青年とその母親だ。英語で書かれたこの短篇の題名は、原題では「Sightseeing」。訳者が訳した日本語の題は「観光」。話を読み進めると、「sight」と「seeing」、つまり、「視界」と「視ることができる」ということがキーワードとなっていることがわかってくる。一度観光で来たことがあるところも、同じシチュエーションでもう一度視ることはないということを想起させます。

観光業界では、リピータの確保が大事と良く言われる。しかし、そもそも非日常を味わうことが観光なのだから、観光が日常化するという意味を持つリピータというものは、なにか矛盾があると感じてくる。

観光でおいでになる方は、その時に見える視界(sight)と、意思を持って視る(seeing)が、たとえ同じ場所に来たとしても、その都度異なる。受け入れる観光地側は、その都度違う視界を提供することと、ちがう視点を与えることが必要だと気付く。

この短編集は、直接、観光客にフォーカスしているのは「ガイジン」の書き出しくらいで、タイ人の心の中を文字に書き起こし、タイ人の文化や風習を丁寧に綴っているものです。

そういうソフト的な観光客との接点を変化させつつ、リピータを呼ぶことをも考えさせてくれます。

アカデミックでいう「観光学」とはまったく違う「観光」の一面を与えてくれる、すばらしい書籍でした。

今日も素敵な一日を過ごしましょう。

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