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固定価格買取制度における売電について考える

2014年12月12日 | 旅行

おはようございます。旅人宿 会津野 宿主の長谷川洋一です。

今朝の報道で、「福島県内の再生可能エネルギーによる電力を他県に優先して売電網に接続する」という内容の記事が、福島民報の1面トップを飾っていました。

今日は、固定価格買取制度における売電について考えてみます。

まず電気の基礎知識として、「電気は電圧の高いところから低いところへ流れる」。これを前提として考えます。

電気の売買を考えた場合、発電することは売ること、消費することは買うことを意味します。

電気は発電したところから消費するところへ流れなくてはならないので、発電側の電圧が高く、消費側の電圧は低くなります。

再生可能エネルギーによる売電は、太陽光パネルなどの発電源を設置した側の電圧を高くし、送電線側の電圧を低くしないと電気は売れません。

なので、「送電線の電圧」というのが売電のキーポイントとなります。

では、送電線の電圧はいつも同じものなのでしょうか? 答えを先に言ってしまうと、一定ではありません。

いつも100Vの電気が使えるのになぜ一定でないの? と思われるでしょうが、電気は同じ発電量の元で電気を消費が増えると、電圧降下という現象が起きます。これは電圧が下がることを意味します。

もし、発電側の能力を超えた消費が発生した場合はどうなるかといえば、電圧が下がり続け、あるとき停電となります。こういうことが発生すると社会全体が困りますので、電力会社は発電量を調節し電力が不足しないように調節しています。

では、発電量が過剰になった場合はどうなるでしょうか? 答えは送電線の電圧が上がります。

では、送電線の電圧が再生可能エネルギーの発電電圧を超えた場合はどうなるでしょうか? 答えは電気が送電線に流れず発電源から電気が消滅してしまいます。(これはわかりやすいように比喩で現していますが、実際は発電側で電力を発生させないように制御するか、熱に変換して空気中に逃してしまうなどのことが行われます)

固定価格買取制度というものは、発電した電力を全量、電力会社が買い取らなければならない制度です。なので、送電線の電圧を太陽光パネルなどの発電源からの電圧より高くすることはご法度です。

では、この送電線の電圧をコントロールできるのは誰でしょうか? それは、送電線の電圧をコントロールできる「送電線を持つ会社」、すなわち「電力会社」です。冒頭に書きました報道では、福島県から首都圏への送電網を持つ東京電力が、福島県を担当している東北電力の他に優先接続の検討をしていることも内包されていますので、東京電力が福島県の再生可能エネルギーのコントロールを行う戦略が見てとれます。

これまでのことから、コントロールにおいて再生可能エネルギーを買い取りたくないときには、送電線の電圧を発電源より高くすれば良いことがわかります。

現在、電力会社がこういうことを恣意的に行っていないことを信じたいですが、いま社会で議論が始まった「全量を買い取らなくても良い制度へ変更する」ということは、技術的にはもう明日からでも可能なことなのです。

☆ ☆ ☆

今度は、再生可能エネルギーの発電側がより多く売るために、恣意的に電圧を高くできるかについて考えてみます。

太陽光パネルなどで発電される電力は、送電線の規格である50Hzの交流(西日本では60Hzの交流)へ変換し、送電線電圧より少し高い電圧で送電しなければなりません。この変換を行う機器をパワーコンディショナーと言います。日本ではJET認証を受けた機器しか販売できない規制があります。この規制では、パワーコンディショナーの電圧範囲が決められており、設置工事業者はこの設定を変えてはいけないと指導しています。これを売電抑制機能と言います。電力会社は送電網に接続する際に、この機能が正しく作動するかチェックをします。つまりは、この電圧範囲より送電線の電圧が高くなると、電力の売電ができなくなるということを担保し、恣意的に電圧を高くされることを防いでいます。

発電した電力の全量を必ず電力会社が買うという保証があるからこそ、そろばんを弾いてビジネスとして参入したという事業者も多いことでしょう。ここで、この前提を崩す法改正を行う場合、補償制度を設け事業者を助けるのか、それとも、売る側のリスク認識不足としてバッサリ切られるのか。大きな論議となることが予想されます。

ところで、旅人宿 会津野の太陽光発電はすべて自己消費として使っています。送電線とつながっているのは買う契約だけです。

電気が充足していてバッテリー電圧が高いときは、発電した電気を無駄に捨ててしまう(正確に言うと、パネルを電気的に切り離してしまう)こともありますが、足りないときは電力会社を使わせていただく。このくらいのモデルの方が、社会に振り回されなくて結局は良かったと感じます。

今日の話のポイントである「送電線を持つ会社」。発送電分離の議論が行われる際、この会社だけは利益を追求しない国営企業のような形式を取ることが望ましいのではないかと、私は考えます。

電気料金や売電制度などに振り回される暮らし、まだまだ長いこと続きそうですね。

今日も楽しい1日を過ごしましょう。

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