あまりに面白かった&席が余っていたので携帯から宣伝。
本日9月29日(火)は、仙台市旭ケ丘の青年文化センターで上演されている、ギンギラ太陽'sの芝居「
翼をくださいっ!~さらばYS-11~」を観て参りました。 ギンギラ太陽'sは、福岡の地方小劇団で、今回が初の全国ツアー公演。少し前に、東京で「地方公演」をして話題になっていたのと、個性的な公演作品スタイルがものすご~く気になっていたのとで、興味を引かれていたところ。 予定が読めなかったのと、試験直前だっのとで行くかどうか迷っていたのですが、思い切って当日券で臨みました。
結果から言えば、予想をはるかに上回る非常に面白い舞台でした! 心底行って良かったと思います。
この劇団の作品には、登場人物として人間は一切登場せず、ビルや飛行機、空港などの建造物たちが、史実に基づいたドラマを展開するのですが、特筆すべきはこの、「登場建造物」たち。
ビルや飛行場といった登場建造物たちはみな、なんと、「かぶりもの」をかぶった役者たちによって感情豊かに熱演されているのです!
建物や機械、法人、企業という抽象的な概念に人格を与え、それらの営みを笑いと感動で描いてみせる様子は、ただもう見事というほかありません。 爆笑しながらぼろぼろ泣いてしまったのは、後藤ひろひと氏の「ガマ王子VSザリガニ魔人」以来です。
建造物や機械、会社、いずれも生きものではありません。当然ながら意思も感情もなく、会話などするはずもありません。しかしながら、これらはいずれも人間が作り出したものであり、作り手の意志や想いを担っているものです。存在しないはずの、建造物や機械、会社の「人格」に感情移入し、その想いになぜかしら感動してしまうのは、それらにかかわった多くの人々の想いを重層して見てしまうからなのかもしれない、そんなふうに思いました。
いずれにせよ、他に類を見ない面白さのつまった舞台、私が今年観た中では一番のおすすめです。
仙台公演は明日30日まで。
仙台公演の後は全国をめぐる模様です。
お近くで観てみようかなーと少しでも思った方はぜひに。
面白いものを見るチャンスです。
ちなみに、開演前には、写真撮り放題の「強制撮影会」があります! 行かれる方は開演前お早めにどうぞ!
以下、少しネタバレ。
福岡空港に新規参入した航空会社スカイマークエアラインズが、北九州地区にひしめく空港の覇権争いに巻き込まれたことによって巻き起こるドタバタが、最後の国産機YS-11の帰国を軸として語られる。
・空港はなぜか皆女性として扱われている。お役所様(福岡市役所)と福岡空港の第1ターミナル(第1婦人)、第2ターミナル(第2婦人)、新国際ターミナル(お役所様と第2ターミナルの子ビル)の関係が可笑しい。
長崎空港の高飛車なプライドと、佐賀空港の田舎臭さ、北九州空港の影の薄さなど、地元民だったらさぞかしもっと楽しめるであろうことがうかがえるのが面白い。仙台でこれをやったらと想像するだけでも楽しすぎる。
・航空会社の序列が可笑しい。エリートJAS、優雅なANA、卑屈な弱小JAS。ひよっこスカイマークエアラインズがぞんざいすぎる扱いを受けるリアルなえげつなさが、嫌みを感じさせずコミカルに描かれているのが秀逸。
・空港ではたらく整備車両がいい味を出している。タラップやエアカーゴ、給油車がいじらしく思えてくる。
・YS-11を副題に冠してはいるが、その実は、スカイマークエアラインズ1号機に世話を焼くようになった廃空港「雁の巣飛行場」さんの一代記。影の主役は雁の巣さんのようにも思える。
・スカイマークエアラインズの1号機から5号機までが一堂に会してわいわい騒いでいる冒頭の場面に、「攻殻機動隊」のアニメに登場するタチコマ(人工知能搭載戦車)たちを連想してしまった。
とてもかわいらしい。
生物でないだけに、自らの生殺与奪をドライに、かつ和気あいあいと語る様子はもうそれだけで切なく、それでいて微笑ましい。この時点で既にうるっときてしまったためか、この後一息に作品の世界観に引き込まれました。
・まさかのエンタープライズ号出現には爆笑。
・かぶりもので外観形態を、コスチュームで属性とイメージを表現している。考え抜かれたシステム。どちらが欠けてもおそらく上手くゆかない。
・自然人の登場を徹底的に排し、建物たちの目線で展開する世界が素晴らしい。人々の持つイメージとマッチしたアイデンティティを持って、いきいきと活躍する建物たちが実に愉快。見た目はとんでもなくバカバカしくて、しかしそれでいてどこか荘厳。作品世界には、長いタイムスパンを経る建物たちが歴史の目撃者であるがゆえの重みと感動がある。非常に独特。ギンギラスタイルとでも言えそうな気がする。
ぜひまた観たい舞台。
次回来仙を首を長くしてお待ちしております。