読書の森

物語を読むのも書くのも大好きです。読書感想、創作、エッセイなど綴ってまいります。

夢屋 その4

2016-10-17 21:40:52 | 創作


春香はこのカクテルの思い出が浮かばない。
会社の飲み会には義理で出席してるし、その場でカクテルが出た事もある。
ただレインボーカクテルを見たのは一回きりだった。
それがいつだったか忘れてしまったのだ。
多分何か抑制が働いているらしい。

「まあいいや、夢屋と関係ないわ」と春香はカクテルを飲もうとした。
そして止まった。
カクテルの中に何か入ってる可能性が高い。

春香はカクテルを口に含む動作をしてグラスを持ったままドアに近づいた。
ドアはロックされていた。
春香は後悔と共に危険を肌で感じた。
グラスを身体の陰で中身を絨毯に零した。

そしてフラフラとソファーに戻り、震える手で夢屋のホームページを開いた。
「ようこそ!」
次へを押す。
そこに展開したのは夢でない。

レインボーカクテルを呑んだ晩の話がアニメで展開した。



春香はその華やかな容姿故か、マスコミという職場故か男の誘いがあった。
直ぐに誘う男は大体軽薄な男だと春香は決めつけていた。
やんわり断るどころか、ピシャリと撥ね付けるのでかなり評判が悪くなった。

しかし、子安由人の場合は違った。
何故なら彼は有名なプロデューサーであり、番組制作過程に置いて師と仰ぐ事も多いからだ。
彼女は子安の誘いに乗った。

その晩高級クラブで子安が春香の為にオーダーしたのがレインボーカクテルであった。
中年を過ぎているが小柄で俊敏な顔つきの子安は若々しい。

話は面白く春香を笑わせた。
しかし、男の思いは何故誰も一致するのだろうか?

一通り飲み食いした後、子安は春香の肩に腕を回し背中を撫ぜた。
「一緒に夢を見たい」

その瞬間春香は酔いが覚めて子安の頬をピシッと叩いた。
「止めて下さい。私はそんな女でありません。いやらしい!」
彼女は一目散に逃げた。

それだけなら良かった。
彼女はSNSで子安のセクハラを告発してしまったのである。
反響があったが小さな騒ぎだった。
子安は才能ある人なので、一ヶ月ほど自粛しただけで元どおり活躍している。

誘った方も悪いがそれに乗った方も同罪だと見做された。
つまりこれは無かった事と同然な筈だ。

しかしパソコンに映る画面は、その高級クラブから二人がホテルに行く所だった。
実際には無かった濡れ場が展開する。

春香は悲鳴を上げた。






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