読書の森

物語を読むのも書くのも大好きです。読書感想、創作、エッセイなど綴ってまいります。

木々高太郎 『文学少女』

2017-06-17 10:06:28 | 書評


著者、木々高太郎は医学博士であり、大脳生理学者としても有名である。
本名林髞名で『頭のよくなる本』はベストセラーとなった。

大学教授や研究所の所長を兼任し、人づき合いも良く、多才な人だった。
戦前から戦後にかけて常に成功者として生き抜いた人である。

ところがどっこい、木々高太郎名の著書の内容は危ない人で満ちているのだ。
精神を病んだ人間は時々登場するし、病的な性衝動に駆られた大学教授の破滅について語られる。

これは、健全そのものに見える人間がいかに裏の闇が深いかを象徴するようなものである。

言葉通り、文字通りのツルンとした人間でなければならないという規則はなく、人間の奥が深いからこそ人間だという事を彼は教えてくれる。

この方が提唱した中で「人生二度結婚説」というのがあり、自ら実行した。
最初の奥様はかなりの年上で、思い切り甘え羽根を伸ばし性を教えられた。
死別か生別かは知らないが再婚した時はかなり年下の可愛い女性で、自分が蓄えた人生の知恵を教えると言う。

これを当時の週刊誌で読んだ私は途端に林先生が其れこそ「下衆の極み」に見えた。
では「愛」は一体どこにあるのか?
先生の頭の中は性と知識しかなくて、情趣や生活、子供への思いは無いのだろうか?
と私は憤慨したが、多子の時代には新鮮に受け止められたようである。

この事で分かるように、彼は頗る唯物的な人で、作品も一貫して情よりも知が勝ったところがある。

それでも、彼独特の精神分析学など面白い点は多い。



さて、この『文学少女』は昭和12年に上梓された『柳桜集』の中の小品である。

ひと言で言えば文学に魅入られて、現実の幸せを捨てた孤高の女性の物語である。

人妻となっても生涯文学少女の殻から抜け出なかった。

劣化した環境から逃れようと文学を求める私のような輩と品が違うようだ。

もしかしたら、文学少女的な女性は林先生(木々高太郎)好みだったのかも知れない。
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