読書の森

物語を読むのも書くのも大好きです。読書感想、創作、エッセイなど綴ってまいります。

夢屋 最終章

2016-10-18 08:58:36 | 創作


「つまり、夢屋は君の為に作ったセットだった」
都心のビルの地下のレストランで田宮は謎解きをした。

子安は春香からSNSにセクハラを訴えられてから、酷く春香を憎んだ。
子安にしては日常茶飯事にをわざわざ暴露するバカで幼稚な女を罰してやろう。

そこで思いついたのが春香にネット情報の形でメールを送る事だった。
「夢屋」の客は春香以外ない
春香の気を引きそうな画面を作った。
HP仕立てのメール添付物なのだった。

人も雇い春香を懲らしめる企ては進んだ。
懲らしめると言っても暴行を加える訳でない。
繊細な春香の心を傷つけまくる作戦だった。

レインボーフィズにも薬は入っていない。
アルコール度を高くして幻想を見せようと思った。
そして恐怖のどん底に陥った春香を解放する。
緊張の解けた春香は寧ろパニック状態になるかも知れない。



「ええっ、私がおかしくなって精神病院に入院するのを狙ってたの?
嘘!」
「さあ〜。ともかく君の神経をズタズタにして知らんぷりを決め込むつもりだったらしい。
君が夢屋の事をいくら言い立てても、夢屋は解体した後だ。
君は妄想を見た事になる。」

高校教師の田宮大はゆっくり噛んで含める様に春香に話す。
その顔を見ている内に春香は全く別の疑問が出てきた。
「田宮君ありがとう。だけどどうしてこの事が分かったの。まさか?」



実は大は学生当時から春香が好きだった。
噂が流れて祐樹との仲が壊れる様にしたのも大である。

しかし春香はさっさと退部してしまった。
思い切れない田宮はストーカーの様に春香を追いかけた。

SNSで偽名を使って友達になり春香の追っかけをした。
今度のネット上の子安の企みは理科系の彼は直ぐに分かったのだ。

怪しいと思った彼は警察に通報して春香を救ったのである。

しかし、どこまで話していいものか?
思案してる彼に春香は声をかけた。
疑う事を知らない彼女にとって、学生時代に帰ったいい気分が続いているのだ。
「いいか、気にしないわ。私の事気にかけてくれてたのね!助かったお祝いに飲み損なったレインボーフィズ飲みたいな」
春香は伸び伸びした声を出した。

祐樹に会えないけど田宮君に会えた。
カチカチの鎧が綻びた。

「本当にいいの?」
(俺も男だぜ)という言葉を呑みかけ、大は彼女のぷっくりした唇や長いまつ毛を蕩ける目で眺める。
好きでたまらない女であった。

「知らないぞ。夢見る夢子さん」
田宮大は心の中で呟いた。
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