読書の森

物語を読むのも書くのも大好きです。読書感想、創作、エッセイなど綴ってまいります。

テレビは友達 その3

2017-03-21 11:12:35 | 創作


2005年春、亜樹は、昭和の子供みたいに日がなテレビを見続けていた。
テレビのキャスターの笑顔は傷ついた彼女の心を癒してくれた。
良識と思いやりに満ちた世界に浸りたい為、彼女は番組を選んでいた。
リアルな人間関係に疲れた彼女にとってテレビは温かい友達そのものだった。

パソコンも携帯もネットに繋がってると思うと恐怖感があった。
彼女はささやかな自分のHPを削除したが、未だ安心出来なかった。
かっての同僚が覗き見るのではないか?
根拠のない猜疑心に襲われていたのだ。
テレビは見守るだけで決して自分を傷つける事はない、そう彼女は信じていた。

だが、世間のニュースは不穏なものを伝えてくる。
ニュースキャスターは正義の味方でなければならない。
悪は潰さねばならぬ。
彼女は、政治に対して頗る単純な考え方をしていたのである。

某テレビ局の、ディレクターが捏造報道を作った、という噂が週刊誌にばら撒かれたのはその頃である。
黒幕は某大物政治家とか囁かれているが、不明である。

反対政党の女性議員が不倫をしているという報道だった。
該当の男女が酒場で楽しそうに歓談している様子がゴシップ報道で流れたが、他に不倫の確証などない。
鋭く政治の矛盾を追及する女性議員は、ニュースでは淫らな女そのものに描かれていた。
亜樹は突然訳の分からない怒りにかられた。



亜樹は誤解された女性議員が職場で誹謗された自分に思えた。
真実のみを伝える筈のテレビ局に裏切られた思いで、無鉄砲にも彼女はテレビ局に直接抗議の電話をかけた。

亜樹はかなり感情的になっていた。
日頃、筋道を立てて話してるのが、最初に応対した係が高圧的になった為に、興奮して支離滅裂になった。
虚偽報道の改善を求めるのに、政治報道の在り方にまで飛躍した。

慌てた係の女性は上司を呼び、上司は慇懃な調子で亜樹の住所氏名電話番号を聞いた。
「視聴者の皆様に、ご迷惑をかけて誠に申し訳ないです。
以後二度と同じ間違いをしない様に努力致します」
お詫びの言葉は誠意が籠っていると亜樹は思った。

生テレビの出演者が自分を眺めてると亜樹が思う様になったのは、それから間もない時であった。

^_^
尚この誤報道はフィクションです。
某局とはどこの局も指しておりません。
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