読書の森

物語を読むのも書くのも大好きです。読書感想、創作、エッセイなど綴ってまいります。

時枝の旅立ち その2

2016-10-08 18:46:09 | 創作


時枝は地蔵堂の中で夜を明かした。
父の国民服を借り帽子を被り男姿で顔に墨を塗っている。
ダブダブの服を折り曲げて着ている為か、蒸される様に暑い。
それでも富江に会うという一筋の希望が時枝を我慢させてくれた。

時枝にとって絶えず見えない敵と戦っている日々が続いている。
空襲が始まると同時に名古屋を激震が襲った。
大本営のお達しで被害は全く報道されなかった。
しかし、震災と空襲で美しい名古屋の城と街は壊滅的な被害を受けた。

平和で優しい日々が崩れてきた初めは時枝
が母、志乃が流行病で急死してからである。
時枝は10歳だった。



通夜の晩、富江と功は時枝を励ましてくれた。
隣り組の仲間で富江は志乃と極めて親しくしていた。
佐古田富江は戦争未亡人で夫の建てた家で和裁をして生計を立てていた。

時枝より3歳年長の功は兄妹のように時枝を庇ってくれた。
時枝は二人に縋って泣いた。

何くれとなく世話を焼いてくれた富江おばさんも、時枝の父が再婚すると遠慮して訪問が途絶えた。

時枝はが小学校も上級生になり、処女らしい初々しさが出てくる功はまぶしげな目をして時枝をさせた。

その間時局は目まぐるしく変化していた。
昭和6年満州事変が起きて以来きな臭い戦争の匂いが漂ってきたのだ。

元より時枝はそれを知らない。
ただヌクヌクと育った町も家も次第にとげとげしく変化していくのを感じていた。

新しい母、布佐は美人だがケンがあった。
言葉は丁寧であるがゾッとするほど冷たく時枝に当たった。

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