読書の森

物語を読むのも書くのも大好きです。読書感想、創作、エッセイなど綴ってまいります。

宮城音弥 『天才』その1

2016-11-04 19:16:59 | 書評


所用で出かけた時、駅のホームの片隅に小さな本棚を見つけた。
持ち込み、持ち出し自由の古本が並んでいた。
かなり嬉しくなって一冊を持ち帰った。

それが宮城音弥の『天才』という新書である。
著者は1908年生まれ、この新書も初版が1967年、つまり相当に古い本だ。

私は大学生の頃宮城先生の心理学の本を読んだ。
『性格』や『愛と憎しみ』など何回も読み直した。

著者の、深く人間心理に踏み込む手法は推理小説に似て面白かったのである。

宮城先生ならそう書くだろうと予測してこの本を読んだところがある。
というのは、先生自身がかなりペシミスティックな論調の方だからだ。



予測は当たった。
それは、何かというと、天才は狂気を合わせ持つという論説である。

本書では天才と能才は異なると言う。
健全でかつ非常に能力があり、社会に有益な仕事をする人は能才である。

しかし、能才は普通の人が想像出来る範囲内での仕事をする。
殆ど考えも出来ない発想や、異常に激しい感動を呼び起こす創作能力は天才が持つ。

天才の例を挙げると、コロンブス、マルクス、ドストエフスキー、バイロン、ルソー、ポー、ゲーテ、などなどである。
本著で日本人では夏目漱石一人が例に出されている。

ここら辺でちょっと違うのではないかと感じる。
現代の感覚とマッチしないのだ。

著者はなにせ明治の人である。
挙げられた天才もかなり昔の人物である。
更にこの人達は全て何らかの異常性を持つ人達なのだ。
本著の中に正常と言える天才はいない。

例えばアメリカ大陸を発見したコロンブスは、自分の考えに固執して家庭も交友関係も全てぶち壊した。
当時ヨーロッパからインドへ渡るのは至難の技だった。
それをコロンブスは自分は神の使命を受けてるから出来ると思い込んで航海した。

結果的に新大陸へ渡り、今日のアメリカを発見した。
その為に原住民をインデアンと呼ぶのである。
その後のアメリカの発展ぶりはご存知の通りである。

しかし、大陸発見の功労者コロンブスは狷介な性格と異常性から人に疎まれた。
富と名声を得たのは7年間だけで、誰にも顧みられずに死ぬのである。

このように、宮城先生ズバリ天才は異常だと論じてる。

御説の通りであると狂気の持つ何かが天才を生じ易い事になる。
狂気を呼び起こすどの様なメカニズムが天才を生むのだろうか?

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