読書の森

物語を読むのも書くのも大好きです。読書感想、創作、エッセイなど綴ってまいります。

映画『リリー』

2016-10-29 20:01:50 | エッセイ


私の両親は映画好きで、生活に余裕が出た頃から連れ立って近所の映画館に行っていた。
特にロマンティックな洋画がお気に入りだった。

漸く二人と暮らせるようになった私も、時に相伴に預かった。
1953年封切りになった『リリー』は10歳の私が生まれて初めて見たミュージカル映画であり、初めて知った色付きの画面である。

そこで見た緑の丘や曲がりくねった道、何よりもヒロインの妖精みたいな姿が、脳裏に焼き付いている。

今ネットで『リリー』を検索しても物語の筋が漠然としか説明されていない。
私の記憶の中のインパクトある『リリー』のストーリーをお伝えしたくなった。
記憶違いがあったらお許し頂きたい。

それは、戦勝国である豊かで長閑かで素朴だったアメリカのロマンであり、今は望むべくもない時代のノスタルジックなドラマだ。



孤児リリーは田舎からサーカスの一座に入った。
可愛い素朴で純情そのものの娘である。
と言っても付随した食堂のウェイトレスである。
ハンサムなマジシャンに冗談を言われる内に夢中で好きになっていく。

しかし、リリーの仕事はドジばかりだ。しょっ中怒られる。
傷心のリリーを慰めるのが、舞台の影で演じられる人形芝居である。
人形たちはリリーを賞賛し慰め安らげてくれる。
彼女はそれをてっきり大好きなマジシャンの仕業と思ってしまう。

しかし、人形は密かにリリーを慕う孤独で地味な人形師が動かしていた。
真相を知ったリリーは「騙された」と怒り、一座を飛び出す。
美しい野を越え丘を越え谷を行く彼女は、だんだん自分を本当に愛していてくれた相手の真価を悟っていく。

クルリと引き返し、元来た道を一目散に彼女は翔ける。
谷を越え丘を下り、野を駆け走り彼女は人形師の許へ行く。
人形師と彼女がかたく抱き合う姿でthe
endとなるのだ。



この映画は別に教訓的なものではない。
現実には、イケメンが必ず不実でもないし、真面目な男が心優しい人ばかりとは限らない。

しかし自分も含めて男女を問わず、本当に大切に思ってる相手に、気づき難いのが常である。

自分を理解してくれる相手より、一方的な見せかけに誤魔化されがちだ。
若い頃は往々にして青い鳥を探して人は彷徨ってしまうらしい。

可愛いらしいリリーのハッピーエンドを見て60年間、私は若い日の勘違いに今頃になって気付いている。
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