読書の森

物語を読むのも書くのも大好きです。読書感想、創作、エッセイなど綴ってまいります。

テレビは友達 その2

2017-03-20 20:12:48 | 創作


亜樹は人の気持ちに敏感であるが、恋愛感情については恐ろしく鈍感だった。
それは彼女の生い立ちが影響しているらしい。

彼女は実の両親の愛に恵まれない子供だった。
父は有能な男ではあったが女にひどくだらしなかった。
母はそんな父を憎み、生まれたばかりの亜樹を捨て家出をした。
離婚が成立した後に父は再婚し、亜樹は祖父母に引き取られた。
祖父母は孫を不憫と思うどころか、放蕩息子の父を苦々しく思うだけだった。

祖父母は彼女にストイックな教育をした。
それだけでなく、亜樹に生い立ちの事実をそのまま喋ってしまったのである。
亜樹は深く心に傷を受けた。
亜樹は周りの人の感情に敏感に反応し、嫌われない良い子を演じ続けていた。

幸い大学まで優秀な成績を修め、希望者の会社に就職出来たのである。
しかし、表面だけが成熟した大人だったのである。
保田と飲んでお喋りしただけの時間が、彼女にとって生まれて初めて優しい男と巡り会えた時だった。
職場の誰が見ても、亜樹が保田に夢中になっているのが分かった。



保田は正直困り果てていた。
亜樹は彼の優秀な部下から迷惑でバカなストーカーになってしまったのである。

上司は保田を違う部署に横滑りさせた。
亜樹は厳重に注意されて、そのまま同じ部署に置かれた。
彼女にとって職場は以前と違う針のムシロだった。

亜樹は男をたぶらかす魔性の女だという噂が流れた。
上司や同僚は、仕事が出来るそこそこ成熟した女がそこまで恋愛に無知だとは思わなかった。
居た堪れずに彼女は退職願いを出したのである。

彼女は針のムシロから逃げ出せたが、次の職場を見つけた訳ではない。
直ぐに生活の不安が襲った。
失業手当は3ヶ月後にしか出ない。
亜樹は嫌いな祖父母の下には、死んでも戻りたくなかった。
退職金とコツコツ貯めた貯金を取り崩す生活は先の見えない心細さがあった。

折角入った小綺麗なマンションに住み続けられない。
友人にこんな事情を打ち明ける気持ちになるには亜樹はプライドが高すぎた。
亜樹は滅入った。

そして思い切って保田にメールしたのである。
保田は応じてくれた。
保田と会ったのが、公園のレストランだった。
その時慇懃に言われたのは「もう一切自分に連絡しないでくれ」という事だった。

亜樹は、そのショックで暫く頭の歯車が狂っていたのだろう。
某放送局の広報部に直接電話したのは、この時期である。



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