読書の森

物語を読むのも書くのも大好きです。読書感想、創作、エッセイなど綴ってまいります。

三崎亜記 『流出』前編

2017-01-03 17:24:19 | 書評


三崎亜記の『流出』は現代に於いて身近な問題と言える。
ここで流出するのは全ての個人情報である。
誰もが恐れている「困った」事態をアイロニカルに描いたものだ。
小説すばる12月号にこの作品は載っている。

彼はどこにでもいる独身の会社員である。
道を歩いていても誰も見向きもしない。
仕事を終えて帰り仕度をしている時、渋い顔の上司に告げられた。
君の「情報が流出しているそうだ」と。

その個人情報はどのような内容のものか、何故人の不快感を呼ぶのか、彼自身に全くわからない。
不安な状態の中で同僚の見る目が冷たい。
完全なシカトの中で仕事も手に付かない。

電車の中で、チラチラと軽蔑の目で見られ、「よく表を歩けるな」とまで言われる。
わざわざ彼を見る為に振り返る者もいた。
一様に嘲る顏をしている。

彼は決して神経質な男でもないし妄想に取り憑かれた訳でもない。
なのに、周囲の人は容赦なく彼を非難の的にした結果、非常にナーバスになった。

部屋の中で閉じ籠っていても、流出した情報を丸呑みした他人が彼の自由を侵害する。



全ての人が目を背けた彼の情報は、実は赤の他人のものだった。

疑いが晴れた彼は早速上司や同僚に聞く。
「流出した個人情報ってどんなものだ」と。
誰も応えてくれない。

そして、、。

物語そのものは、どこにでもありそうなホラーである。
しかし、私は激しく身につまされるものがあった。


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