読書の森

物語を読むのも書くのも大好きです。読書感想、創作、エッセイなど綴ってまいります。

夢屋 その2

2016-10-17 19:14:24 | 創作


春香はネットで見た住所を辿る。
マンションの一室でなく一軒家というのも興味深い。
意外にも夢屋は下町の路地裏のしもた屋だった。
バブルの時の立て壊しを免れた様な平家に、小さく夢屋の看板が掲げてあった。

そのオンボロさ加減に春香は躊躇した。
と、躊躇してる彼女の前に上品な中年紳士が現れた。
「夢屋を訪ねて来られたのですね?
ようこそいらっしゃいました」



玄関は下町風の板の間だった。
しかし、部屋の内部は外見と裏腹に豪華だった。玄関の横の6畳の応接間に厚いベージュ色の絨毯が敷かれている。

ローズウッドのテーブルにドッシリした深緑色のソファー。
同じくローズウッドのサイドボードに青磁の壺が置いてあった。

窓は緞帳のようなベージュのカーテンで覆われている。
煌々と点いた電気が無ければさぞかし暗い部屋だろう。

春香はソファーに腰掛け、アンケートを手渡された。

「個人情報を書いていただく所はお名前だけですから」
紳士は礼儀正しく丁寧な口調で言った。
その丁寧さは身に付いたものである。

「何かおかしい。第一、この家の外側とこの部屋とあの男とのギャップが激し過ぎる。
ひょっとして俄か仕立ての店ではないか?俄か仕立ての調度でこの部屋を作ったのではないか?
あの男はこの辺りの住人ではない。
上流階級の人間に見える」

春香は全身にアンテナを張り巡らしてアンケート用紙を眺めた。

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