読書の森

物語を読むのも書くのも大好きです。読書感想、創作、エッセイなど綴ってまいります。

角田光代 『八日目の蝉』その2

2017-08-09 09:29:07 | 書評

ストーリーはこうである。

一見大人しく嫋やかな希和子は愛する男の家に無断で入り、そこに一人で眠る赤ちゃんを抱いて逃げる。

彼女は家庭のある男と恋をして甘い夢を見させられ、子供を身籠った。
「きっと別れるから今は堕ろしてくれ」というの男の言葉を信じて堕胎をした。
そして手術によって、子供を産めない身体になった。

同時期、男の妻も子に恵まれた。
同時期に二人の女に、子供を身籠もらせた不実そのものの男だった。
それでも希和子は、愛しい男の血を引いたその子が欲しいと思い詰めて行動したのだ。

彼女が仕組んだ誘拐劇は計画的だった。
その裏腹に逃避行は無計画そのものだった。
ひたすら、希和子は子供と一緒に逃げて行く。
彼女が飛び込んだ怪しげな女の家や、裏のありそうな団体の宿舎に、場当たり的に隠れて、懸命に子供を育てる。


子供を堕ろし子宮を病んだ、「がらんどうの女」と男の妻から罵られた希和子は、薫と名付けた子供によってその空っぽな内部を満たされたのである。

彼女が子供を連れて逃げる行為は犯罪である。
それを百も承知していても、あらゆる手を使って逃げ回っているのだ。



彼女が辿り着いた所はキラキラと光る海に囲まれた小豆島である。
そこで料理屋の店番をしながら薫を育てる。
薫は希和子を母と信じてスクスクと育ち4歳になった。

しかし、お飯事の様な生活は宣伝用のポスターに希和子が写った事でガラガラ崩れていく。
希和子は警察に見つかって、逮捕される。薫は実の両親に引き取られる。

この経緯を自分の歴史として振り返るのが、誘拐された薫、本名は恵理菜である。
愛人に誘拐された子供として、彼女はマスコミに騒がれ、居場所が狭まった。
家庭でも、妹を含めた家族に馴染めず、一人暮らしを始めた。
そして希和子と同じく彼女自身が不倫の恋で身籠ったのである。

その時彼女が取った行動は何か?
彼女は八日目の蝉として生きる道を選んだにだと思う。

そして、自分を育てた醤油の香りがする小豆島に渡る。
近くに刑期を終えた希和子も暮らしていた。
二人はすれ違うが、お互いが誰か分からない。
歳月は無常である。

人も自然も長閑で美しい小豆島に溶け込むラストシーンが感動的だった。



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