世相を斬る あいば達也

民主主義や資本主義及びグローバル経済や金融資本主義の異様さについて
定常で質実な国家像を考える

●何かが違う、米英・EU・露中・中東アフリカvs日・豪・ASEAN ・南米

2017年04月26日 | 日記



アメリカで感じる静かな「パープル革命」の進行とトランプ大統領誕生の理由
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新政権で米国はこう変わる! トランプ解体新書 (日経BPムック 日経ビジネス)
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●何かが違う、米英・EU・露中・中東アフリカvs日・豪・ASEAN ・南米

 見出しは、ザックリとした括りだが、どこか前者と後者には、言うに言われぬ温度差を感じる。それが何なのか、筆者は充分には理解していない。大局的な感想だが、前者は苛立つように国や社会が熱く動いている。後者は、前者同様なファクターでは動いてはいるのだが、どこか情熱的ではない。良く言えば、牧歌的な感じだ。牧歌的とは穏当な表現で、気づいていない国家や人々と云う感じだ。結局は、メディアが正当な批判能力に欠けている国々と云う側面も、ありそうだ。

 無論、局地的には、冗談じゃないと云う激しい闘争が繰り広げられているのだろうが、メディアなどを通じて知る限り、情熱や情念や怨嗟や理念のようなものに突き動かされ、ダイナミックに、且つ暴力的に動いている地域と、そうではない地域と云う印象を持つ。

 この差は何なのだろうと考えるのだが、明確な答えは得られていない。民主主義、自由主義の後進性に由来する面もありそうだが、一律ではない。敢えて探すとなると、対米関係の距離感などにポイントがありそうだ。日豪は完璧に、アメリカの属国と認定しても良いので類似性がある。南米は、対米において、親米反米感情が拮抗した地域であり、且つ距離の近さから、米国諜報機関の訓練場のようにもなっている。また、カストロやゲバラの影響を受け、日豪やNATOのように、イエスマン国家になり得ない国家的環境があるのだろう。常に、南米では、どこかで国家的抗争が起きているが、常にCIAの関与が噂されている。

 日豪と形態こそ異なるものの、米・英・EU・露・中・中東・アフリカ等々の国々の、米英覇権型世界に影響を与える勢力圏からは遠ざけられている。その意味で、ASEANにも、同様の臭いがある。残念ながら、日豪、ASEAN、南米や韓国などは、米国の支配が強すぎて、抵抗する手立てをほとんど持っていないと考えても良いのだろう。無論、抵抗することが不可能ではないのだが、アメリカナイズされた、行政機関や社会習慣、国民が、雲のように覆っているアメリカ支配を痛みとして感じない以上、抵抗は自ずと限られる。つまりは、哲学と縁遠い、怪しげな民主主義を鵜呑みにした国家や地域の共同体意識は、ひどく脆弱だ。

 米・英・EU・露・中・中東。アフリカなどで起きている、政治変革や内戦やテロなどには、時代の流れを感じる。グローバルな世界構築が、限界点に達したうめき声が、この地域にはある。日本の安倍などは、未だに、グローバルな世界構築は永遠なりと、突き進んでいるわけだが、今や世界の潮流は、その落とし処、次なるフェーズ探しに悶々としているのだ。この、世界的流れを、肌で感じない、日本の国民、政治家、行政機関等々は、結局意志なき共同体、謂わばロボット装置のような人間の塊りと云う認識で終わるのかもしれない。いま現在の安倍政権などは、実際問題、世界の流れに逆らって生きている、そんな感じの政権だが、過半数の支持を得て安泰なのだから、治安が好くても、米・英・EU・露・中・中東、アフリカなどから、何歩も遅れた国地域なのだな、そんな感慨を持つ今日この頃だ。

*以下は、世界が時代への温度差で、奇妙に二分化されている事情に関して役立ちそうなコラムを参考掲載しておく。


≪ 私たちはどんな時代を生きているか〜世界を覆う新しい「戦争の構造」
蔓延する武力紛争、危機的な国際秩序





 ■アレッポ陥落が象徴するもの
2016年はアレッポ陥落の知らせによって終わることになった。
:この12月、欧米系のメディアやSNS、あるいは国連機関やNGOは、アレッポに関するニュースやアピールなどであふれかえった。われわれが生きる時代の象徴のひとつが、シリアのアレッポだろう。
:アレッポで見られたのは国連やら国際社会の人道主義やらの限界だけではない。
:そこには、アメリカの力の低下のみならず政策の迷走が大きくかかわっていた。あるいはロシアやトルコやイランの地域的な影響力が明白になっていた。そして中東内部の宗派対立の図式に沿った分断が色濃く反映されていた。
:さらに言えば、中東の諸国に代表される20世紀国民国家の存在の脆弱性が劇的なまでに露呈されていた。
:冷戦終焉直後の1990年代初頭に歴史的な最大値を記録した世界の武力紛争数は、その後の約20年間でゆっくりと減りつづけた。しかしその傾向は、過去5年間ほどの間の急激な武力紛争数および紛争犠牲者数の増加によって、終止符を打たれた。
:今日の世界では、冷戦直後の記録を抜く数の武力紛争が発生している。われわれは歴史的な数の武力紛争が蔓延している時代に生きている。その傾向を牽引しているのが、中東であり、シリアである。
:2001年の9.11以降、アメリカのブッシュ大統領は「体制変換」を狙う軍事行動で中東に「民主化のドミノ現象」を起こそうとした。その後、「アラブの春」と呼ばれた大衆運動が巻き起こった。
:しかし2010年代の6年間において、中東の独裁政権の崩壊は、「混乱のドミノ現象」しか生み出さないことが明らかとなった。
:拙著『国際紛争を読み解く五つの視座―現代世界の「戦争の構造」』(講談社選書メチエ、2015年)においては、冷戦終焉とともに世界標準のイデオロギー体系となった自由主義を標榜する米国およびその同盟国群が維持している国際秩序にたいして、いくつもの深刻な挑戦がなされていることを論じた。
:2016年の世界情勢は、その国際秩序が、さらにいっそう深刻な危機にさらされた年であったと言えよう。

■自由主義的な国際秩序にたいする挑戦
:『国際紛争を読み解く五つの視座』では、自由主義陣営が中心となって維持している国際秩序にたいする挑戦を、地域ごとの特徴を持つものとして描き出した。
:東アジアには勢力均衡論、ヨーロッパには地政学の理論、中東には文明の衝突論、アフリカには世界システム論、アメリカには成長の限界論という視座を適用し、各地の紛争の構造的な背景も明らかにすることを試みた。この視座は、2016年の世界をふりかえる際にも有効だろう。
:東アジアでは新たな超大国・中国の台頭が、伝統的な地域の勢力均衡を揺るがせている。
:7月、国連海洋法条約(UNCLOS)にもとづく南シナ海仲裁裁判所が、中国の領有権の主張を退ける判決を下した。ところが提訴国であるフィリピンに生まれたドゥテルテ大統領は、むしろ中国に配慮を示して多額の援助を受け入れながら、反米的発言をくりかえした。
:2015年末からおこなわれている米海軍による南シナ海における「航行の自由」作戦も、その効果は不明瞭である。
:ヨーロッパでは、ウクライナ情勢が硬直化している間に、シリア問題への対応をめぐるロシアとトルコの間の駆け引き、難民大量流入をめぐるヨーロッパ諸国とトルコの間の駆け引きが顕在化した。そのなかでマッキンダー流の地政学でユーラシア大陸の政治情勢を見る視点が、いっそう重要になった。
:「ハートランド」としてのロシアの南下姿勢と、それを食い止めようとするヨーロッパ諸国のロシアへの根深い警戒心、そして両者の中間に立つ位置を占めるトルコの存在感は、2016年も顕著であった。
:なお6月にイギリスでEUからの脱退の是非を問う国民投票が実施されたが、ブレグジット派の勝利によって、史上初めてEUが拡大を停止し、縮小しはじめることになった。これは地政学的意味における「海洋国家」群と「大陸国家」群の再編を予兆させる大きな歴史的分岐点になりうるだろう。
:ユーラシア大陸の東と西で、勢力均衡や地政学の視点から理解すべき権力政治の動向が激しくなっている。
:いずれの場合でも、欧米諸国を中心とする諸国が既存の国際秩序の維持を目指す一方で、有力な非欧米国がその秩序に挑戦しているという流れが出てきている。

■イスラム世界内の「文明の衝突」
:よりいっそう激しい政治動向を見せたのが、マッキンダーの言う「世界島」の中央に位置する中東であった。
:2016年はサイクス・ピコ協定締結100年目にあたったが、あらためて中東の政治秩序の脆弱性に注目が集まった年でもあった。
:イラクからシリアにかけて広がる戦乱は依然として甚大であった。イスラム国の組織的勢力は削ぎ落とされているが、壊滅したわけではなく、むしろ組織化されていないテロが拡散する傾向がある。シーア派とスンニ派の対立構造は、イエメンなどを舞台にして、中東の至るところで激しいものでありつづけた。
:統計上はイランとサウジアラビアでは紛争が起こっていない扱いになるが、両国の間では地域的覇権争いが激しい。
:イランの東側であるアフガニスタンとパキスタンから、北アフリカのリビアなどにかけてのイスラム圏は、現代世界の紛争地帯の中核だ。
:文明の衝突論は、あまりにも通俗化されてしまった。文明の存在を実体的に考えすぎるならば、それは非現実的なフィクションでしかない。戦うのは常に人間であり、文明ではない。
:しかし本来の文明の衝突論で問題なのは、文明といった概念で表現しうる人間集団のアイデンティティが、現代世界の紛争に大きく関わっているという認識だ。
:もともとサミュエル・ハンチントンが1990年代前半に文明の衝突の着想を得たのは、当時のボスニア・ヘルツェゴビナの紛争などからであった。それはアイデンティティの境界線をめぐる闘争が武力紛争を引き起こす、という見かたであった。
:ところがハンチントンは、世界的規模の文明の衝突をめぐる議論では、西洋文明vsイスラム文明という対立図式に焦点を定めた。少数の過激主義者がいるだけでイスラム文明は西洋文明と対立していないというエリート層の公式見解を、ハンチントンは否定した。
:2016年の大統領選挙で勝利したドナルド・トランプは、ハンチントンに親和性のある見かたを持っているだけだとも言える。
:今日の中東では、紛争が地域に内在するかたちで頻発している。おそらくは対テロ戦争の勃発にともなうアメリカの中東への直接介入が、流れを変えた。 中東内部に西洋文明の暴力が入りこんでしまえば、中東内部において文明の衝突の現象が誘発されるようになる。そしてヨーロッパ人が定めた国境線を超えたイスラム主義の運動が必要だという議論が勢いを持つようになる。さらに、そのことがかえってイスラム文明の内部の紛争も誘発するようになる。
:拙著『国際紛争を読み解く五つの視座』で論じたが、イスラム文明圏の統一が目指されるがゆえに、イスラム世界の代表の地位を得るための中東内部の紛争も劇化するのである。スンニ派対シーア派という対立図式が非常に重要なものとなるのも、文明の代表をめぐる争いが切実なものとなっているからだ。 文明の衝突論は、対テロ戦争の時代における西洋対イスラムという対立図式だけでなく、真正なイスラムの代表をめぐる地域内の「内戦」の構図にもかかわる視点なのだ。
*イスラム国という具体的な政治運動は長続きしないかもしれないが、同じような現象はくりかえされるだろう。なぜなら終わりの見えない対テロ戦争の国際政治構造が、文明の代表をめぐる地域内の戦いもまた誘発するからである。

 ■中東の紛争構造に影響されるアフリカ
ところでアフリカに目を向けてみるならば、過去数十年の間、一貫してそうであったように、依然として紛争多発地域だ。しかし20年前と比べてアフリカが変わったのは、南部アフリカが平穏化したことである。
:代わって北・東・西アフリカで新たな紛争が起こりつづけている。サハラ砂漠の南側のサヘル地域が、紛争多発地帯として立ち現れてきた。マリ、ナイジェリア、チャド、スーダン、南スーダンなどが、具体例である。
:厳密にはサヘルには属さないが、政治的には同じようなサハラ砂漠を越えてくる中東の影響を受けやすい帯に属する紛争地域として、さらに中央アフリカ共和国、ソマリアなどの紛争地が存在している。
:基本的な構図として、北アフリカでは「アラブの春」以降の中東の混乱が、継続して発生している。サヘル地帯の諸国では、イスラム過激派勢力が台頭し、紛争状態が蔓延している。ボコ・ハラム、AQIM、アル・シャバブなど、アルカイダやイスラム国の影響を受けているテロリスト勢力が紛争に大きくかかわっている。今日のアフリカの戦争は、中東を震源とする紛争構造に大きく影響されながら進展しているのだ。
:1990年代以降、世界の地域紛争分析の主な対象は、アフリカだった。甚大な「格差」が広がる「世界システム」の中で、冷戦終焉の余波を最も激しく被ったのがアフリカだった。
:中東を震源とする「対テロ戦争」が継続中の現代世界においては、別のかたちをとりながら、アフリカは新しい時代の構造的な影響を激しく受けているのだとも言える。

 ■対テロ戦争とトランプ大統領
:過去25年ほどにわたって、多くの識者が同時代を「冷戦終焉後」の世界と描写してきた。近年は、新しい冷戦が始まった云々といった言説で、「冷戦終焉後の後」の国際社会が語られる場合が見られるようになった。
:だが世界の紛争状況を見るかぎり、「冷戦終焉後」の時代はすでに相当前に終わっていたと言うべきだろう。すでに新しい世界戦争の構造が発生している。
:われわれは、「対テロ戦争」という終わりが見えない新しい構造的な世界戦争の時代に生きている。「対テロ戦争」とは、中東で、アフリカで、アジアで、ヨーロッパで、アメリカで、甚大な影響をまき散らしている世界的規模の構造的な戦争のことである。
:アメリカではトランプ政権が誕生する。「アメリカ・ファースト」を掲げる大統領の就任によって、アメリカは数々の国際協調の場面から撤退することになるだろう。自由主義的価値規範の世界的な広がりを推進していた冷戦終焉以降のアメリカの外交政策に、トランプは大きな変化をもたらすだろう。
:しかしそれは、日本のマスコミが言う「孤立主義」の政策だけをトランプが採用することを必ずしも意味しない。中東で大規模な軍事介入を試みるということはないだろう。しかしそれでも安全保障面でアメリカが「対テロ戦争」の構造から逃げ出すことは想定しにくい。
:むしろ「対テロ戦争」の構図の中で、勝ち抜くことを目指していくだろう。そのとき、戦争の構造は、いっそう強くわれわれを縛りつけることになるだろう。
:日本の高校の教科書で「孤立主義」と描写されている「モンロー主義」が導入された19世紀前半のアメリカでは、たとえばアンドリュー・ジャクソン(第7代大統領。ちなみにジェームズ・モンローは第5代大統領)が白人男子普通選挙を導入して「ジャクソニアン・デモクラシー」を進めた時代だった。
:そのジャクソンは、インディアン(ネイティブ・アメリカン)にたいする大量虐殺や強制移住を主導する苛烈な人種差別主義者であった。
:トランプもまた、国際協調主義からは逸脱するとしても、なお経済面において、そして軍事面において、アメリカの利益を確保するかたちで無限の「成長」を追い求める大統領になるのではないか。
:トランプの言説を見ても、安全保障政策にあたるトランプ政権の閣僚の顔ぶれを見ても、「対テロ戦争」の構造は、トランプ政権下のアメリカによって弱められることはないと予測するのが妥当だ。
:2017年を通じて、アメリカの同盟国である日本は、その現実を思い知らされることになるかもしれない。

*篠田英朗――1968年生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。同大大学院政治学研究科修士課程修了。ロンドン大学(LSE)で国際関係学Ph.D.取得。広島大学平和科学研究センター准教授などを経て、現在、東京外国語大学総合国際学研究院教授。専攻は国際関係論、平和構築。著書に『国際紛争を読み解く五つの視座』(講談社選書メチエ)、『集団的自衛権の思想史―憲法九条と日米安保』(風行社)、『国際社会の秩序』(東京大学出版会)、『平和構築と法の支配―国際平和活動の理論的・機能的分析』(創文社、大佛次郎論壇賞受賞)、『「国家主権」という思想』(勁草書房、サントリー学芸賞受賞)、『平和構築入門』(ちくま新書)などがある。
 ≫(現代ビジネス:東京外国語大学教授・篠田英朗)



 

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