世相を斬る あいば達也

民主主義や資本主義及びグローバル経済や金融資本主義の異様さについて
定常で質実な国家像を考える

●「垣根なき世界」がユートピアと語る朝日社説 まさに幻想振り撒く

2014年05月29日 | 日記
正義の偽装 (新潮新書 554)
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●「垣根なき世界」がユートピアと語る朝日社説 まさに幻想振り撒く

 以下は、28日水曜日の朝日新聞の社説だ。ぼんやりと読んでいる分には、まことに結構な考えが述べられている。この文章が西側マスメディアのオピニオンリーダの一角を占める朝日新聞でなければ、素直に受け入れてやっても構わない。しかし、マスメディアが書いたものだと判った瞬間に、一行ごとに突っ込みを入れたくなる。現実に起きてきた、ここ数年の政治的出来事を踏まえながら、一発かましてやる!

 この社説は一行目から、これから嘘をつくから、上手に騙されなさいと、いかにもグローバル経済が普遍的で、未来永劫変わらない価値観のような罠が仕掛けられている。――――人も、モノも、カネも、文化も自由に行き交う。グローバル化は止めようのない世界の潮流であり、国境という垣根はますます意味を持たなくなる。――――

 グローバル経済が理想的経済であるとか、人類のすべてが共通の価値観を持ち、地球に平和が訪れる、なんて幻想を振り撒いているのは、アメリカン・デモクラシーであり、朝日の論調だ。キリスト教、アングロサクソン系移民人口国家の価値観が普遍的で、動かしがたい真実のように語りだす時点から嘘八百だろう。高々数百年の歴史の行に過ぎない米国型デモクラシーが普遍的真実などと、どんなツラして言い出すのか、筆者には狂人的にさえ聞こえてくる。単にネオリベなご都合主義に裏打ちされたグローバル経済が普遍な世界の潮流などと、出鱈目を言うものではない。

 新自由主義と市場原理主義とボーダレスな地球が、米国にとって都合がよく、一国至上主義で手に入れた覇権と云うものの維持に欠くべからざるロジックに過ぎないではないか。アメリカンのどこを、どのように覗きみ、虫眼鏡で観察して見出せる奴は、単に米国教の信者と云うことだ。まぁ、まさしく、現在の朝日新聞は米国教の熱烈信者なのだけはたしかだ(笑)。朝日が「国境なき地球」こそ人類の進むべき道だと信じるのは勝手だ。しかし、巷の無知蒙昧或いは素直にして素朴な人々を、このような実しやかな文章で布教に携わるのは、ジャーナリスト精神に反するのではないのか?

 朝日の危険性が如実に表れているのが“グローバル化は止めようのない世界の潮流”と云う部分だ。この表現を読んでいた、ある状況を思い出した。“米国と戦争するなど、狂気の沙汰だった。しかし、今更やめられない『空気』が充満していた”斯くして朝日新聞は大本営報道のリーダとして、戦前、戦中の国民を騙し続けたのである。まったく現在の世界の状況は似通っている。安倍晋三の方向性も異様だが、朝日の米国教の熱烈信者ぶりも異様だ。

*―――― 国民感情が経済に影響されるのは世の常だ。むしろ事態を悪化させているのは、真の問題のありかを率直に説かず、ナショナリズムに訴える政治手法だ。――――云々かんぬん。

 正直、飢える人間に対し、年収1千万以上の論者に「人はパンのみにて生きるにあらず」などと言われて、「その通り」と答える人間はいるのだろうか。明日は食べ物にありつけるかどうか考えている最貧困層の人々に向かって言えるのか。人口の20%、12億人存在することが理解できているのだろうか。年収が億単位の人々のほどこしで生きるのであれば、“名誉の消滅”を選ぶ哲学的思考や選択があっても良いだろう。

 その最貧困の人々の食糧問題で、世界の食糧問題、温暖化問題、国境なき世界秩序の潮流などと云う議論は成り立つのか?成長こそ善であり、それを抑える力が悪である。そんな綺麗ごとで済む世界の根本的問題だったら、とうの昔に、これらの議論に決着はついている。しかし、この成長に対する善悪の基準は極めてキリスト教的であり、欧米が、共通の益のために創造した価値観に過ぎない。ところが、わが国でも、欧米型価値観は市民権を得るに至っている。この欧米型価値観が資本主義によく馴染む共通の観念に過ぎなかっただけだろう。筆者から見れば、単なる現象に過ぎない。

*――――自由と平等の価値をもって垣根をなくす努力を滞らせてはならない。――――云々かんぬん。

 垣根をなくすことで、その先に、どのような世界があるのか?その世界の具体的イメージが浮かんでいるのか?おそらく、誰一人、その具体像など見えていない。グローバリズムの信者は、その手法や進捗のプロセスだけは示すが、行きつく先がどのような世界で、どのような人類の生活が待っているのか、語る人間は皆無だ。行き先の決められていない列車に、金持ちの多くが乗り込むために並んでいる列に、貧乏人も、ワーキングプワーも、病人も、右に倣えと命じてなんになる。みんなが並んでいるのだから、良いところに向かっているに違いない、と云う思考停止に過ぎないではないか。不幸に不幸が重なる世界に導いてしまう旅かもしれないじゃないか?

*――――景気、金融、環境、移民、どの問題も一国で対応できる構造ではない。だが、政治家たちは「EUが国の権限を奪ったからだ」と弁明してきた。再び国境の垣根を高くすれば問題は解決するかのような幻想をふりまいた責任は重い。――――云々かんぬん。

 単にグローバル経済の世界を追認しているだけの話で、今更戻るのは容易なことではないからこのまま進もう、後は野となれ山となれだと主張しているだけだ。国境の垣根を高くし、自分たちの文化や文明を、垣根の中で研ぎ澄ましても良いじゃないか。禅の世界や悟りと云うものは、そのような環境から生まれる。国ごとに「引きこもり」と云う世界があっても構わんだろう。その中で、必要不必要を交易するだけでも、人類の幸せは得られるはずだ。馬鹿馬鹿しい、行き先の判らない、永遠と連なる列車に乗り込め、と云うのは、それこそが無責任の極みである。

*――――暮らしを左右する政策が、自分とは縁遠い政党や官僚らに決められている。そんな思いが政治への怒りやあきらめとなって投票率を下げたり、過激な主張になびいて留飲を下げたりする現象は世界各地にある。 日本もひとごとではない。世界の現実と地続きにある日本の数々の問題を冷静に説き、そして国を開く賢い処方を多角的に論じる。そんな政治が欲しい。 ――――云々かんぬん。

 国を開き、デモクラシーと云う衣をまとい、「自由だ、平等だ、人類すべて兄弟」と念仏を唱え、搾取に次ぐ搾取のメカニズムに乗っかり利を得ている「既得権益軍団」の口車に乗り、奈落の底に導かれるくらいなら、「オタク国家」となり、自分たちなりの世界に満足する“自己満足”の方が、よほどマシである。“あればあるなり。なきゃないなり”良いじゃないか、それで。人を羨むことなく自我の境地で生きて何が悪い。人さまの国や人々に、「これが正しい」なんて強制されなければならなのだ。朝日こそ、「今更戻れない世界」に嵌りこんだ、「砂の中の思考」をひけらかし、自己満足を他人押しつけているだけだ。


≪ 欧州議会選挙―垣根なくす永遠の試み
 人も、モノも、カネも、文化も自由に行き交う。グローバル化は止めようのない世界の潮流であり、国境という垣根はますます意味を持たなくなる。
 その現実にどう向き合うか。国を開くことが生む国民の不安をどうときほぐすか。それは、いまのどの国の政治にも通じる避けようのない難題である。  欧州議会の選挙で、「反統合」「反ユーロ」を訴える政党が躍進した。全751議席のうち3割近い議席を得た。
 欧州は、国境をなくす最先端の実験に取り組んでいる。だが今回の選挙結果は、欧州社会にいまも根強くのこる抵抗感を映し出している。
 統合をめざす道のりに終わりはないかもしれない。どんな壁にぶつかろうとも、自由と平等の価値をもって垣根をなくす努力を滞らせてはならない。
 欧州議会は、EUと呼ばれる欧州連合の立法機関である。加盟28カ国の有権者が直接選ぶ。
 今回の選挙でただちに統合が頓挫するわけではない。だが、気になるのは、反EU派の多くが移民の排斥を掲げ、国粋的な主張を強めていることだ。欧州各国の主要政党にも、その勢いに便乗し、主張を取り込もうとする動きがでている。
 長引く不況と失業、福祉カット。緊縮財政を各国に課すEUへの風当たりは強い。移民に対しては、雇用を奪い、福祉を食い物にしている、との批判がぶつけられている。
 国民感情が経済に影響されるのは世の常だ。むしろ事態を悪化させているのは、真の問題のありかを率直に説かず、ナショナリズムに訴える政治手法だ。
 景気、金融、環境、移民、どの問題も一国で対応できる構造ではない。だが、政治家たちは「EUが国の権限を奪ったからだ」と弁明してきた。
 再び国境の垣根を高くすれば問題は解決するかのような幻想をふりまいた責任は重い。
 EUは改めて、なぜ国の間の壁をなくすことが利益をもたらすかを説き、自らの改革にも取り組まねばならない。市民の多様な意見に目配りして納得を得る仕組みを整える必要がある。
 暮らしを左右する政策が、自分とは縁遠い政党や官僚らに決められている。そんな思いが政治への怒りやあきらめとなって投票率を下げたり、過激な主張になびいて留飲を下げたりする現象は世界各地にある。
 日本もひとごとではない。世界の現実と地続きにある日本の数々の問題を冷静に説き、そして国を開く賢い処方を多角的に論じる。そんな政治が欲しい。 ≫(14年5月28日付朝日新聞社説)

資本主義の終焉と歴史の危機 (集英社新書)
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