世相を斬る あいば達也

民主主義や資本主義及びグローバル経済や金融資本主義の異様さについて
定常で質実な国家像を考える

安倍と記者クラブの嘘 「減反廃止」大見得の裏に補助金、実質存続又は増額

2013年12月16日 | 日記
成長のない社会で、わたしたちはいかに生きていくべきなのか (一般書)
クリエーター情報なし
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●安倍と記者クラブの嘘 「減反廃止」大見得の裏に補助金、実質存続又は増額

 12月9日の安倍が記者会見の席上、高揚した“ドヤ顔”で言い出した。「40年以上続いてきた米の生産調整を見直し、いわゆる減反の廃止を決定した。減反の廃止など絶対に自民党にはできないと言われてきた。これを私たちはやったのだ!」。本当ならたいしたものだが、安倍の言葉を鵜呑みにするほど国民は馬鹿ではないだろう。(そう思いたい)しかし、各紙の見出しを見る限り「減反廃止」の活字だけが紙面を埋めていた。勘違いする人々も大いに違いない。アホの橋下など「首相に先を越された!残念」等と、愚衆の典型のような顔で、大評価している有様だ。

 正直、日本の農政は常に基本政策が不在で、票田として期待される分だけ“ばら撒き体質”は、まったく今回も変わっていない。名前を変えて出ています、という状況に過ぎない。最近のTPP問題に端を発する700%を超える関税も問題だが、成長戦略という見出しとは、まったく関係のない“改革断行”が行われただけである。言い換えるなら、民主党政権で行った政策は、善かれ悪しかれ、すべてを否定する為になされた政策の看板のすげ替えだ、と論破可能である。

 但し、グローバル化の中における合理性に追求では、極めて不利な立場にある稲作農業だが、日本の水田稲作文化の継承と云う縄文弥生から受け継ぐ文化をどうするのか、という切り口から考える場合は、異なる解が導かれるだろう。真正保守としては、合理性の面で叩かれる稲作、コメ作りの文化を絶やす事には、大いに違和感を憶える。国土の景観の問題もさることながら、治水や滋養の面で、水田は大きな役割を発揮していたし、農業地域の共同体自治を成立させる生活習慣としての有益性も見逃すことは出来ない。労働集約と云う行為を通じて、日本文化が継承された歴史的意義を、どのように捉えるかで、合理性が悪である場合もあると云う問題を21世紀の人間は考えざるを得ない。

 宮台真司が以下のマル激トーク・オン・ディマンドの中で、最後の方で「誰が、誰の為に、何をしているのか。それが判らないのが問題だ」的な表現をしていたが、いま我々の世界で起きている出来事のすべてが、この言葉になぞらえて考えていくと、誰が主体で、誰が恩恵を受け、誰が犠牲者になるのか。そして、何に向かって、誰がどのような方法で行っているのか、そういう事を色々と考えさせられる。農業問題は、以下の安藤准教授の話の通り、農作物生産の技術的問題から、仕組みの複雑さなどで、専門外の筆者が、一言で切り分け出来る問題でもなく、経済学者如きの合理性で切り貼りされたら、元も子もなくしてしまいそうだ。以下にマル激トークと経済面から批判的なダイアモンドの記事を参考添付する。経済合理性論、農業技術論、日本文化論の次元では、安倍の政策転換は、零点又はマイナス政策と云うことだ。最後に一言だが、アメリカが戦略的に他国の農業生産メカニズムを破壊する為に行っている、農産物の輸出奨励補助金制度こそ、TPPの俎上に乗せるべき重大な問題だ。


≪ マル激トーク・オン・ディマンド 第661回(2013年12月14日)
「減反廃止」で日本の農業は生き残れるか
ゲスト:安藤光義氏(東京大学大学院農学生命科学研究科准教授)

 政府は12月10日に決定した「農林水産業・地域の活力創造プラン」で、「減反政策の廃止」を打ち出したとされる。安倍首相は9日の会見で、「40年以上続いてきた米の生産調整を見直し、いわゆる減反の廃止を決定した。減反の廃止など絶対に自民党できないと言われてきた。これを私たちはやったのだ」と長年の課題だったコメ農政の大転換に胸を張ってみせた。政権の意向を受けたものかどうかは定かではないが、確かに11月下旬頃から大手メディアもこぞって 「減反廃止」を大々的に報じている。しかし、専門家や農業関係者からは、今回政府が決定した内容は実際には、安倍首相が誇ってみせたような「減反政策の廃止」とはほど遠い内容ではないかとの指摘が聞こえてくる。

 減反政策というのは、コメの値崩れを防ぐために、転作に対して補助金を出すなどして、コメの生産を管理することである。しかし農政問題に詳しいゲストの 安藤光義氏によると、今回、政府が決定した内容では、実際にはこれまで通り転作奨励の補助金は続けられる。いや、むしろ項目によっては新設・増額さえされている。また、これまで政府が行ってきたコメの生産数量目標の管理も、これまで通り政府が行うという。唯一の違いは、これまで都道府県別に割り当てていた 生産数量目標を廃止し、政府は国全体の生産目標だけを公表することになった点だという。

 民主党政権時代に鳴り物入りで創設した戸別所得補償制度は5年後の廃止が決まったものの、全体としては従来の補助金農政と変わらない、それどころか項目によっては補助金が増額されている分、農政全体の予算規模は膨らむ可能性すら指摘されているのが、今回の決定の実態なのだ。

 日本のコメ農政は戦後一貫してコメ自給率100%を掲げて進められてきた。1970年代に入ると需要の頭打ちや豊作などもあってコメの供給過剰が表面化 し、政府がその需給管理に本格的に乗り出すことになった。政府は毎年の米価を決めて、コメを全量買い上げる一方、コメ農家に対しては、麦や大豆などへの転作を奨励してコメ生産を抑制することで補助金がつく仕組みを設けて全体の供給量を管理するいわゆる減反政策がスタートした。

 安藤氏は減反政策は当初うまく機能していたと評価する。しかし、その後、日本人のコメの消費量は年々減少し、コメ余りが深刻化すると同時に、ブランド米などの自主流通米が拡大したために、今や250万ヘクタールある日本の水田の4割にあたる100万ヘクタールが、減反の対象となってしまった。転作による生産調整も転作率が4割を超えるところが多く、減反という名の補助金によって米価を買い支える日本の農政の基本モデルはもはや限界を迎えていると安藤氏は指摘する。そして更に日本人のコメ離れとTPPなどによる市場からの圧力が加わることは必至な情勢なのだ。かといって、日本の財政の現状を考えると、これ以上のコメを買い支えるだけの財源などどこにもないことも論を待たない。

 なんだかんだ言っても減反はやめられない。一方で、減反による米価の買い支えももはや限界を迎えている。しかも、これ以上買い支える財源もない。安藤氏は、もう少し早ければ減反をやめるという選択肢もあったかもしれないが、もはやそれも難しいという。そのような袋小路にあって、相変わらず抜本的な政策転換を図ることができなかったというのが、今回安倍首相が胸を張り、マスコミ各社が大々的に「減反廃止」と報じた新しい農業政策のもう一つの現実なのだ。

 「日本から4割の水田が消えた時の景色を想像できますか」と安藤氏が指摘するように、日本にとって水田が持つ意味は単なるコメを作る耕作地以上の意味を 持つ。今、われわれにはどのような選択肢が残されているのか。それでもこのような弥縫策を続けた場合の最悪のシナリオとはどのようなものなのか。ゲストの 安藤光義氏とともに、ジャーナリストの神保哲生と社会学者の宮台真司が議論した。 ≫(ビデオニュース・ドットコム)


 ≪ 大山鳴動してねずみ一匹 “減反廃止騒動”の真相
2013年11月26日(火)09:00
 与党・自民党がコメの生産調整制度の改革を進めている。国による生産数量目標の配分の廃止などをもって、減反制度の廃止ともてはやす報道も多い。だが、実際はそういうことにはならなそうだ。 「減反から国は手を引く、これからは自分たちで生産調整をやってくれということか。愛情のかけらもない農業改革だ」「この時期にTPP(環太平洋経済連携協 定)と一緒に減反廃止の話が出てきてたまげた。今後の所得について農家が心配している」……。会議室をびっしり埋めた議員から、不安や不満の声が相次いで上がった。

 11月6日、コメの生産調整制度に対する中間とりまとめ案が検討された自民党農林水産戦略調査会・農林部会等の合同会議だ。
  一種の“ガス抜き”のような怒号が飛び交う会を経て、「個別に農家の収入がどう変わるかの金額が出ていないのでまだ不安はあるが、大きな方向については全員の理解は進んだ。次年度の生産調整数値を出す11月末までには、政府与党で合意した案を固める」と齋藤健・自民党農林部会長は言う。

 減反とは、主食用のコメの供給を国や自治体、農業生産者等の調整で抑制して、米価を高値維持し、生産者の経営を安定させる政策を指す。この40年間綿々と続いてきた、いわば生産カルテルだ。
  この日本農政の根幹にくさびを打つかのような、10月末の与党方針発表と林芳正・農林水産大臣の発言があり、「減反廃止」として報道が過熱した。しかし、 与党の政策と報道には乖離があって、現実には減反廃止にはつながらないだろう。その理由を知るには、過去の経緯からひもとく必要がある。

 “減反破り”へのペナルティはすでに存在しない  

  減反が始まったのは1970年。戦後のコメ不足を背景に、生産されるコメを国が買い上げ、供給量と価格を管理した食糧管理制度の時代のことだ。60年代後半からコメは過剰生産となり、国の買い入れ負担は重くなっていた。買い入れ量を減らし財政負担を削減することを目的に、減反は生まれた。  生産者にとって減反に協力することとは「主食用米を規定の生産数量目標以上に生産しないこと」だ。これに協力すれば補助金(交付金)が交付され、協力しなければ翌年の減反義務の面積の増加や農業機械購入時の補助金が受けられないなどのペナルティがあった。アメとムチの政策だ。  どれだけ減反を行うか(生産数量目標)の枠は、国から都道府県、市町村、そして個々の生産者へと順次下りてきて、配分された。

 そもそも今日、「ペナルティを伴った減反の義務はすでにない」(林農水相)。民主党政権時に廃止されたからだ。詳しくは表に示したが、増産したい 生産者は存分に増産できる一方、減反に協力した生産者には生産面積に応じ10アール当たり1万5000円が支払われる。ムチはなくなり、アメだけの政策に なったのだ。この「戸別所得補償制度」を、自民党はバラマキとして厳しく批判、その撤廃を1年前の衆議院選挙の公約として掲げた。

 今回、自民党が打ち出した“新方針”は主要なもので三つある。
 第一に「2014年産米から直接支払い交付金を漸減させた上で、18年産米からは廃止する」。第二に「国から都道府県への生産数量目標の割り当て を5年後をめどに廃止し、集荷業者や農業団体などが一体となって需給に応じた生産を行う状況になるよう取り組む」。第三に「飼料用米など非主食用米の生産に対し、現行よりもさらにインセンティブの厚い補助金を導入する」というものだ。
 メディアの報道では、最初の二つの新方針をもって「減反廃止」と表現しているものが多い。
 確かに、第一の新方針、主食用米の生産数量目標の順守を条件に支払われる補助金が廃止されること(いわゆる戸別所得補償制度の廃止)は、大きなアメの撤廃だ。また、第二の新方針で、国の関与はなくなるかのようなトーンだ。

 飼料用米生産への“アメ”を大拡充 主食用米減産を牽引

 しかし、その代わりに用意されたアメは、相当に甘い。
 まず、地域内で生産者が農地を維持していくために行う活動に対して支払う「多面的機能支払制度」がある。この詳細は明らかでないが、形を変えた補助金だ。  そして、前述の第三の新方針、「飼料用米など非主食用米の生産に対する補助金」だ。実質的に主食用米の減反がこれからも続くのは、この政策によるものが大きい。

 つまり、主食用米の作付けを生産者に割り当てて制限するという旧来の「減反」から、非主食用米の作付けについてのインセンティブ(アメ)を格段に手厚くすることで「転作」を奨励し、結果的に主食用米の作付けを減らす形になるわけだ。過去の自民党政権時にも実施されていた方式だが、今度は表現が微妙に変わった。

 いまでも非主食用米を作る生産者には、その米粉や飼料用米の販売収入と、主食用米収入との差額を埋めるため10アール当たり8万円が支払われているが、この金額は江藤拓・農水副大臣が「現状よりも上げたいという思いはある」と言うように今後増額される可能性が強い。さらに、飼料用米の生産数量に応じて補助金を支払う数量払いも加わる。
 結果的に、国民負担が増えることもありそうだ。

 現在減反されている面積はおよそ100万ヘクタールある。米粉・飼料用米への転作による減反分は現在6.8万ヘクタールと10%未満しかないが、 「すでにここに544億円が支払われている。現在の8万円の補助金が仮に今後10万円に増え、生産者がこれに応じ20万ヘクタールに作付面積を増やすと総額2000億円が財源として必要になる。自民党では戸別所得補償制度の廃止により浮いた財源をこの非主食用米生産のインセンティブ拡充に充てる予定というが、これでは収まらず、必要となる予算額はむしろ現在より増える可能性も高い。減反廃止どころか、減反の強化だ」と山下一仁・キヤノングローバル戦略研究所研究主幹は批判する。  細部の金額は今後決まる部分が多く、実際にどのような形で着地するかは不明だ。また、たとえ飼料用米生産へのインセンティブが増額されても、やはり人が食べるコメを作りたいという生産者もいる。実際の生産数量がどうなるかは見えにくい。

 また、新方針では、国が行う生産配分の代わりに、国の出す需給見通しに応じて自治体や(JAなどの)生産者団体が数量配分を自主的に行う、としている。新潟・北海道など、単価の高いブランド米を生産しJAの統制力が強い地区であれば、価格を維持するために地域内で実質的な生産調整が行われる可能性がある。そうでない地域ではどうなるか。今後5年間の移行期間で政府は調整を迫られることになるだろう。  さらに、米価の下落による収入減を補填する制度も拡充される。これまでその対象は4ヘクタール以上の大規模農家のみだったが、15年からこの規模要件は撤廃され、小規模農家の集合体である集落営農にも適用される。

 補填がなければ、小規模生産では経営が立ち行かず、農地を売却したり貸したりすることになるはずが、「(小規模生産の)兼業農家も補填を受けられるので、農地は主業農家に集まらず、全体として大規模化による生産効率の向上が進まない」と山下研究主幹は言う。  減反を行う中でも、日本のコメの生産技術は年々進化し、日本米とミニマムアクセス(高関税で国内米を保護する代償として設定されたコメの輸入枠)による輸入米の価格は接近しつつある(図参照)。

 こうしたコメの実力を生かし、輸出などの攻めに転じる方策もあったはずだが、この三十数年間のコメ農政の根幹の“税金で主食用米の価格を高く維持する”政策はそう簡単に崩れることはなさそうだ。このままでは、「空騒ぎ」に終わりそうな“減反廃止騒動”だ。
  ≫(「週刊ダイヤモンド」編集部 鈴木洋子)

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