雨の日曜日

お芝居の感想などを

六月大歌舞伎 昼の部(歌舞伎座)

2017年06月18日 | 歌舞伎
 6月歌舞伎座、昼の部は2回観劇出来ました。

 「名月八幡祭」
 以前吉右衛門さんで拝見して、とても印象深かった作品ですが、松緑さんもとても良い! 真面目で律義で、でもどことなく見る人を不安にさせるような、そんな新助さんでした。粋な江戸っ子が似合いそうな松緑さんですけど、こういう朴訥な田舎の人役も合うなあ。彼の誠意がないがしろにされるの、本当に辛くて胸が痛い。美代吉宅を出て号泣し、その後顔を上げた表情が凄かったの。吉右衛門さんの新助はラストが非常に強烈だったのですけど、松緑さんにはそういう爆発的な狂気は感じなくて、むしろ彼はこれからもずっと美代吉を恨み続けるし、もういない彼女を殺そうとし続けるのかな、みたいな切なさやりきれなさが残りました。もしも彼が魚惣の誘いを断って故郷に帰っていたら、もしも美代吉に恋しなかったら、田舎で彼に釣り合う娘と所帯を持って幸せになっていたのかな。そこらへん、よく分からないのですけど。
 美代吉役は笑也さん。初日近くに見た時はあまりにも台詞が入ってなくて、プロでもこんなことあるんだ?!もしかして御病気とか?と心配してしまったほど。2度目の観劇では落ち着いて見ることが出来ましたが、笑也さんのおっとりした口調はあまり深川芸者には合わないかも。ビジュアルは良かったので残念。
 猿之助さんの三次は、錦之助さんのようなクズ感は薄くて、普通に恰好良い江戸っ子でした。でも美代吉に金をたかる時は、年下らしく甘えて可愛かったなあ。あんな調子であちこちでお小遣い貰ってるのかしらねーふふふ。周りには多少「困った人」と思われているけれど、遊び好きで女性にもてて、特別悪人というわけでもない、江戸には沢山いるような男達の一人。ただ新助とは全く価値観が違った、という悲劇。
 魚惣役の猿弥さんも良かったなー。人情に篤くて新助さんを気遣ってはいるけれど、彼も江戸っ子だから、新助さんの気持ちを理解することはできないんだよね。亀蔵さんは、藤岡様にはまだ若すぎる気がしました。

 「浮世風呂」
 以前こんぴらでかかった時に見られなかったので、今月歌舞伎座で拝見できてとてもうれしかったです! ただひたすら猿之助さんの所作と身体の美しさを堪能しましたよー。うっとり。この前の奴道成寺とかもそうですけど、猿之助さんの舞踊が歌舞伎座の「売り」として定着してきたように思います。
 なんといっても幕開きが良いのですよね。朝日が差し込む風呂屋に、三助の後ろ姿、という絵が美しいです。なめくじ女子とのやりとりも可愛いですけど、そのあとのまぜこぜ節が本当に楽しくて。私に知識があればもっと深く味わえたのになーという歯痒さはありましたけど、でも何も分からなくてもとても楽しかったの。三助さんかなり薄着だから、女方の踊りの時だと色っぽ過ぎて結構目の毒(笑
 ラストは所作立てになって、華やかな幕切れ。なんで大勢の若い者が乱入してきて立ち回りになるのか、何かしら理由があるのかと思ったのですけど、筋書には特に何も書いてないのですよね。
 なめくじは種之助君。可愛いし、猿之助さんとの背丈のバランスも良かったです。ぬめぬめした感じが本当になめくじっぽくて面白い。

 「弁慶上使」
 そう言えば吉右衛門さんは「競伊勢物語」でも実の娘を主君の身代わりにしてたなあ、と思って調べたら、紀有常の娘の名前も「信夫」なのですね。もしかして歌舞伎では不運な女性の定番の名前なの?? 信夫には父だと名乗って、しのぶには顔も見せずに殺してしまうけれど、どちらが辛いんだろう…なんて花道を引っ込む吉右衛門さんを見ながら思ったり。まあ私は女親に肩入れしちゃいますけども。だって今日初めて会った娘と、十何年も大切に育ててきた娘とじゃ、絶対失った時のダメージの大きさが違うと思うんですもん。
 おわさは雀右衛門さん。娘を失った悲しみと恋人に再会できた喜びを行き来するのが、可愛くておかしくて悲しいです。その娘米吉君も可憐でした。又五郎さんも、微かな違和感がラストにつながるのがさすがだなーと。これは夜の部の門之助さんもなのですけど。見事な忠臣っぷりでした。


池田大伍 作
池田弥三郎 演出
大場正昭 演出
一、名月八幡祭(めいげつはちまんまつり)

      縮屋新助     松 緑
     芸者美代吉     笑 也
     藤岡慶十郎     坂東亀蔵
         魚惣     猿 弥
    魚惣女房お竹     竹三郎
      船頭三次     猿之助

木村富子 作
二、澤瀉十種の内 浮世風呂(うきよぶろ)

      三助政吉     猿之助
       なめくじ     種之助

三、御所桜堀川夜討(ごしょざくらほりかわようち)
弁慶上使

     武蔵坊弁慶     吉右衛門
      侍従太郎     又五郎
 卿の君/腰元しのぶ     米 吉
        花の井     高麗蔵
         おわさ     雀右衛門
『演劇』 ジャンルのランキング
この記事についてブログを書く
この記事をはてなブックマークに追加
« 花戦さ(TOHOシネマズ日... | トップ | 六月大歌舞伎 夜の部(歌舞... »
最近の画像もっと見る

歌舞伎」カテゴリの最新記事

トラックバック

この記事のトラックバック  Ping-URL