たんぽぽの心の旅のアルバム

自死遺族です。赤毛のアンとプリンスエドワード島が大好き。自分史・旅日記・観劇日記・日々の思いなどあれこれと綴っています。

第三章 _日本的経営と女性労働 その歴史の概観 _⑧男女雇用機会均等法改正と改正労働基準法

2017年07月29日 | 卒業論文
 1985年(昭和60)に制定された男女雇用機会均等法が1997年に改正され、1999年(平成11)4月1日から施行された。正式名称が「雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律」になった。改正前の勤労婦人福祉法から引き継がれた「福祉の増進」が削除されて、ようやく雇用における男女平等を確保する法律に脱皮したのである。用語も、これまでの「女子」は「女性」に、「男子」は「男性」に改められた。

 改正前の均等法では、女性についてのみ「職業生活と家庭生活との調和」が規定されていたが、改正では、女性を低い待遇の職務に固定させる「女性のみ」の取扱いを禁止することで、性別による職務分離の解消に向けて一歩前進した。女性のみパート募集やコース別雇用管理で女性だけのコースも違法になった。第2に、これまで均等のための努力義務とされていた募集・採用、配置・昇進について、女性に対する差別が禁止され、教育訓練についても一部の差別禁止が全ての差別禁止になった。第3に違反の事業主が勧告に従わない場合は企業名の公表という制裁が設けられ、調停制度も当事者一方の申請の場合の「相手の同意」が廃止され、援助や調停を求めたという理由での解雇など不利益な取扱いの禁止が明文化された。第4に事業主のポジティブ・アクション(積極的是正措置)を促し、それへの助言や援助を国が行うことになる。1)  第5にセクシャルハラスメントに関する雇用管理が規定された。


 以上のように改正法のポイントを記したが課題は残っている。先にあるように「女性のみ」の取扱いは禁止されたが、男女共に適用されるという枠組みには至っていない。また、間接差別に当ると考えられるコース別人事管理や第一章で述べたパートタイマーの低賃金などの待遇についても改善されていない。国際的には、直接差別だけでなく間接差別も禁止しなければ差別はなくならないとされ、1995年(平成7)1月、国連の女性差別撤廃委員会は「日本政府は、私企業等が雇用機会均等法の規定を遵守するよう保証し、かつ私企業等において昇進及び賃金に関して女性が受けた間接的な差別に対処するために執られた措置について報告しなければならない」と勧告している。ところが、1997年の改正では、間接差別に関する規定は設けられなかった。

 しかし、具体的な規定がないから間接差別は違法ではないということにはならない。このように課題は残っているが、全ての雇用上の女性差別が禁止され、制裁規定が設けられたことで、男女平等法の国際的な基準に近づいたといえるだろう。改正均等法の基本的理念は、女性労働者が①性別により差別されることなく、②母性を尊重されつつ、充実した職業生活を営むことができるようにすること、と整理された。

 先に記したように「女子差別撤廃条約」及びILOの「家族的責任条約」は男女が共に職業生活と家庭生活を調和させて差別されずに働くことを基本的理念としている。2つの条約を批准した日本はこの基本的理念を実現するための立法その他の措置をとる義務がある。改正前の均等法では、目的と基本的理念に、女性についてのみ「職業生活と家庭生活との調和」が規定されていたが、条約の趣旨に合致しないのではないかとの疑問がもたれていた。これに対し、95年の育児・介護休業法の改正の際に目的に同旨の規定が加えられ、改正均等法の目的と基本的理念から「職業生活と家庭生活の調和」が削除された。


 同じ日に、労基法の女性に対する保護規定の中で時間外・休日労働制限及び深夜業の禁止規定が廃止され、不十分ながら男女共通規則を定めた改正労働基準法が施行された。改正労働基準法では、男女の均等待遇のために男女共通規制(保護)を設けることを前提に女性に対する時間外・休日労働制限及び深夜業の禁止規定が廃止された。女性労働者に対する保護規定は、原則として妊娠・出産に関する母性保護に限定して、より拡充し、それ以外の健康及び家族的責任に関する保護は男女共通の保護に組み替えていくべきだと考えられたのである。

 しかし、時間外・休日労働及び深夜業の一般的な男女共通規制がきわめて不十分であるため、育児・介護を行う男女労働者の時間外労働の制限及び深夜業の制限が設けられ、深夜業に従事する女性の就業環境等の整備に関する指針が出された。したがって、妊娠・出産保護以外の女性労働者に対する保護は、18歳未満の女性の深夜業禁止、坑内労働の禁止、重量物等危険有害業務の就業制限、生理休暇のみとなった。生理休暇も、重量物制限などと同様、妊娠・出産機能をもつ女性の健康と安全の保護として捉えるのが適切だと思われる。2)改正労働基準法は、1999年(平成11)、改正男女雇用機会均等法と同じ日に施行された。男女共通の労働時間は、現在労基法32条に、1日8時間、1週40時間の限度が規定されている。

 
***************

1)男女平等を達成するためには性別に関係なく各個人に「機会の均等」を創り出すだけでは不十分で不平等状態を積極的に是正するための特別の措置が必要である。ポジティブ・アクションは、北米を中心に、1960年代以来様々な形で施策化されてきた措置である。

2)東京都産業労働局編、『働く女性と労働法[2003年版]』、105-107頁。
ジャンル:
その他
コメント   この記事についてブログを書く
この記事をはてなブックマークに追加
« 日比谷シャンテ雪組ステージ... | トップ | 心に沁みる言葉たち »

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

卒業論文」カテゴリの最新記事

トラックバック

この記事のトラックバック  Ping-URL
ブログ作成者から承認されるまでトラックバックは反映されません。