イチロー・トークスペシャル(2008年1月22日放送) | NHK プロフェッショナル 仕事の流儀
住吉 自分の楽しみのための、いわゆる蛇足なもの、っていうのは入れないんですか?
イチロー あー、DVDはもちろん持っていくんですけど、まっ、それぐらいですね。
住吉 それは、たとえばどのDVDを、この遠征先には、っていう、やっぱり拘りっていうか?
イチロー 弓子と2人でいるので、弓子が面白いと、で、僕にもたぶん面白いと感じるだろうというもの(強く)しか持っていかないです。狡いタイプ。だから、あのー、ドラマとか、ありますよね、もう再放送しか見ないですよ。見ないですよ。先は分からないし、まっ、一週間、待てないし、面白くない可能性があるんで……。(じゃ、面白いと分かったものだけ見るっていう)最悪なんですよ、僕。だから、女の子に好き、って(間。2人の顔を見て)表わしてもらえないと、俺も好きだって言えない、みたいな感じ。(えーっ)分かります? 自分から勇気を持って言えない狡い人間なんですよ。(保証が欲しい? みたいな)(照れて)ちょっとね、(強く)そこに関しては。
住吉 でもイチローさんだったら、別に誰、言っても(先に告白しても)ちゃんと返してくれるでしょう?
イチロー いやいや、そんなことはない。狙ったものは僕は離さないですけど、それはね、保証はないですよ。うん。
イチローはひじょうに知的で理性的である。「自分から勇気を持って言えない狡い人間」とは、自分が責任の持てない野球以外での偶像を牽制しての謙遜であろう。スターの恋愛観という興味本位を、その本質から粉々にしてしまうような言葉だ。
しかしながらこれらの言葉は嘘ではない。
イチローはインタビューに誠実に対応している。
今までのこちらの分析でも理解できることである。
「女の子に好き、って(間。2人の顔を見て)表わしてもらえないと、俺も好きだって言えない、みたいな感じ。(えーっ)分かります? 自分から勇気を持って言えない狡い人間なんですよ。(保証が欲しい? みたいな)(照れて)ちょっとね、(強く)そこに関しては」
これは、自分と他者との差や溝を強く意識してしまうためである。確実性を得るための葛藤が強いのだ。それがイチローなのだろう。それで「(強く)そこに関しては」と、はっきり言ってしまうのだ。
特に異性とは、普通の人間でも、その性における差は大きく感じるだろう。それ以上にイチローは他者との差や溝を強く意識してしまうのだ。それが特に女性なら、ますますその差は広がるであろう。
しかし確実性を認識できるのであれば、そしてその価値をも評価できるのであれば、以前のDVD、白い巨塔を30回以上も鑑賞するようなエピソードと同様に拘り続けるのである。それが「狙ったものは僕は離さないですけど」と言わせるのだろう。
茂木 このセーフコフィールドに来てね、その、コリドを歩いていると、もうイチローさんの新聞の切り抜きとか、そういうのばっかりですよ。だから、いかにね、あのー、改めてね、シアトルの人が、イチローさんを愛しているのか、っていうのが本当に分かったんですよ。これは、もう、大変なことだなー、と思って。で、何か、愛されれば愛されるほど何か期待に応えなければならないっていう、そういう重圧は、やっぱり強いんじゃないですか?
イチロー もちろんです。もう、一番強いと思いますよ、今。でも、それを受け入れる自分がいるし、おそらく彼らを満足させられるという自信もあるんですよね。
茂木 イチローさんがね、子供のときに、プロ野球選手っていうのは、みんなできるんだって思っていたのと同じように、おそらくシアトルの今、少年たちは、イチローは、もうオールマイティーで、とにかくどんなときでも打ってくれるんだって思っていると思うんですよね。
イチロー 思っていてくれていいと思いますね。っていうか、むしろそれに期待します。
ここでは1つの球団がある地元の都市で、確かに大勢のファンに愛されているという実感を全身で感じていることであることであり、それは単なる恋愛観とは違うことである。だがこれはチームの一員としてのプロフェッショナルとしての自覚の問題である。学生時代での寮生活から、ドラフトを経て培ったきたものだ。応援してくれる人達に感謝し、チームとして団結するという、チームワークとスポーツマンシップは、イチローの個性以外のものであるから、分析には及ばないだろう。むしろそういうプロの自信意外に、メジャーリーグでの首位打者と、目指すものが大きいからこそ、避けられない重圧に葛藤しなければならないのだ。
しかしそれにしても、自分の個人のバッティングの結果としての首位打者というタイトル争いには、精神をすり減らすほどの苦悩がありながらも、1つの球団がある地元の都市で、大勢のファンに期待されているという重圧に対しては、シアトルマリナーズのチームの一員として、その愛や期待を喜んでいるとしたら、それはとても健全なことではないか。個人の技術の研鑽と、チームの一員としての責任を別に考えることで、精神のバランスをとりながら、さらにトッププレーヤーを目指すことができるのだ。
それこそイチローの、あの恩師の教えであろう。
イチロー 仰木監督との出会いですよね。もう、これが、まっ、プロに入ってからで言えば、最も大きなポイントとだったでしょうね。
茂木 仰木監督は、イチローさんの、そのスタイルは分かってくれたわけですか?
イチロー 分かってたと信じてますけどね。もう、そのまま、もう、ほっといたらやるわ、みたいな感じでしたからね。しかも、仰木監督がすごいなと思ったのは……。それはよくある話しじゃないですか、個性をそのまま伸ばしたいために、放っておくというのは、よくあることではあるんですけど。ある試合で負けたんですね。うちが負けて、僕は4打数1安打、2塁打1本。もう、負けたんで、バスの中も暗いしね、もう、雰囲気、最悪なんですよ。で、僕も同じように、へこんでたんですよね。負けちゃったー、って。そしたら監督が、何だお前は、って、2塁打1本、打って喜べよ。チームのことなんて俺がやるんだから、お前は自分のことだけきっちりやれよ、と。今日は2塁打1本、いいじゃないか。って言ったんですよね。すげー、このおっさん、と思って。そっからね、大きなリスペクトが始まりましたね。この人違うわー、って。だから、もちろん感覚を信じてやったんですけど、そうやって学んでものもあったんですよ。
住吉 自分の楽しみのための、いわゆる蛇足なもの、っていうのは入れないんですか?
イチロー あー、DVDはもちろん持っていくんですけど、まっ、それぐらいですね。
住吉 それは、たとえばどのDVDを、この遠征先には、っていう、やっぱり拘りっていうか?
イチロー 弓子と2人でいるので、弓子が面白いと、で、僕にもたぶん面白いと感じるだろうというもの(強く)しか持っていかないです。狡いタイプ。だから、あのー、ドラマとか、ありますよね、もう再放送しか見ないですよ。見ないですよ。先は分からないし、まっ、一週間、待てないし、面白くない可能性があるんで……。(じゃ、面白いと分かったものだけ見るっていう)最悪なんですよ、僕。だから、女の子に好き、って(間。2人の顔を見て)表わしてもらえないと、俺も好きだって言えない、みたいな感じ。(えーっ)分かります? 自分から勇気を持って言えない狡い人間なんですよ。(保証が欲しい? みたいな)(照れて)ちょっとね、(強く)そこに関しては。
住吉 でもイチローさんだったら、別に誰、言っても(先に告白しても)ちゃんと返してくれるでしょう?
イチロー いやいや、そんなことはない。狙ったものは僕は離さないですけど、それはね、保証はないですよ。うん。
イチローはひじょうに知的で理性的である。「自分から勇気を持って言えない狡い人間」とは、自分が責任の持てない野球以外での偶像を牽制しての謙遜であろう。スターの恋愛観という興味本位を、その本質から粉々にしてしまうような言葉だ。
しかしながらこれらの言葉は嘘ではない。
イチローはインタビューに誠実に対応している。
今までのこちらの分析でも理解できることである。
「女の子に好き、って(間。2人の顔を見て)表わしてもらえないと、俺も好きだって言えない、みたいな感じ。(えーっ)分かります? 自分から勇気を持って言えない狡い人間なんですよ。(保証が欲しい? みたいな)(照れて)ちょっとね、(強く)そこに関しては」
これは、自分と他者との差や溝を強く意識してしまうためである。確実性を得るための葛藤が強いのだ。それがイチローなのだろう。それで「(強く)そこに関しては」と、はっきり言ってしまうのだ。
特に異性とは、普通の人間でも、その性における差は大きく感じるだろう。それ以上にイチローは他者との差や溝を強く意識してしまうのだ。それが特に女性なら、ますますその差は広がるであろう。
しかし確実性を認識できるのであれば、そしてその価値をも評価できるのであれば、以前のDVD、白い巨塔を30回以上も鑑賞するようなエピソードと同様に拘り続けるのである。それが「狙ったものは僕は離さないですけど」と言わせるのだろう。
茂木 このセーフコフィールドに来てね、その、コリドを歩いていると、もうイチローさんの新聞の切り抜きとか、そういうのばっかりですよ。だから、いかにね、あのー、改めてね、シアトルの人が、イチローさんを愛しているのか、っていうのが本当に分かったんですよ。これは、もう、大変なことだなー、と思って。で、何か、愛されれば愛されるほど何か期待に応えなければならないっていう、そういう重圧は、やっぱり強いんじゃないですか?
イチロー もちろんです。もう、一番強いと思いますよ、今。でも、それを受け入れる自分がいるし、おそらく彼らを満足させられるという自信もあるんですよね。
茂木 イチローさんがね、子供のときに、プロ野球選手っていうのは、みんなできるんだって思っていたのと同じように、おそらくシアトルの今、少年たちは、イチローは、もうオールマイティーで、とにかくどんなときでも打ってくれるんだって思っていると思うんですよね。
イチロー 思っていてくれていいと思いますね。っていうか、むしろそれに期待します。
ここでは1つの球団がある地元の都市で、確かに大勢のファンに愛されているという実感を全身で感じていることであることであり、それは単なる恋愛観とは違うことである。だがこれはチームの一員としてのプロフェッショナルとしての自覚の問題である。学生時代での寮生活から、ドラフトを経て培ったきたものだ。応援してくれる人達に感謝し、チームとして団結するという、チームワークとスポーツマンシップは、イチローの個性以外のものであるから、分析には及ばないだろう。むしろそういうプロの自信意外に、メジャーリーグでの首位打者と、目指すものが大きいからこそ、避けられない重圧に葛藤しなければならないのだ。
しかしそれにしても、自分の個人のバッティングの結果としての首位打者というタイトル争いには、精神をすり減らすほどの苦悩がありながらも、1つの球団がある地元の都市で、大勢のファンに期待されているという重圧に対しては、シアトルマリナーズのチームの一員として、その愛や期待を喜んでいるとしたら、それはとても健全なことではないか。個人の技術の研鑽と、チームの一員としての責任を別に考えることで、精神のバランスをとりながら、さらにトッププレーヤーを目指すことができるのだ。
それこそイチローの、あの恩師の教えであろう。
イチロー 仰木監督との出会いですよね。もう、これが、まっ、プロに入ってからで言えば、最も大きなポイントとだったでしょうね。
茂木 仰木監督は、イチローさんの、そのスタイルは分かってくれたわけですか?
イチロー 分かってたと信じてますけどね。もう、そのまま、もう、ほっといたらやるわ、みたいな感じでしたからね。しかも、仰木監督がすごいなと思ったのは……。それはよくある話しじゃないですか、個性をそのまま伸ばしたいために、放っておくというのは、よくあることではあるんですけど。ある試合で負けたんですね。うちが負けて、僕は4打数1安打、2塁打1本。もう、負けたんで、バスの中も暗いしね、もう、雰囲気、最悪なんですよ。で、僕も同じように、へこんでたんですよね。負けちゃったー、って。そしたら監督が、何だお前は、って、2塁打1本、打って喜べよ。チームのことなんて俺がやるんだから、お前は自分のことだけきっちりやれよ、と。今日は2塁打1本、いいじゃないか。って言ったんですよね。すげー、このおっさん、と思って。そっからね、大きなリスペクトが始まりましたね。この人違うわー、って。だから、もちろん感覚を信じてやったんですけど、そうやって学んでものもあったんですよ。












