いわき市・子年生まれの”オヤジ”

草莽崛起
日本人よ、歴史を取り戻せ!

天皇が継承される神道文化とは 「祈る」ことにより祖先へと「続く」

2016年11月05日 16時20分37秒 | 社会・政治
 明治神宮は晩秋も樹木が鬱蒼としている。都の中にありながら、山野の中にあるがごとき代々木の森ほど、東京に住んでうれしい場所はない。明治天皇皇后を追慕し、明治の日本を偲んで造られたこの森は、人工でありながら、人工の感を与えない。

神宮内苑が醸す厳かさと尊さ

 両陛下を祭神に祀る明治神宮が大正5年に起工されて100年がたつ。私が子供の昭和初年のころは玉砂利を踏みながら軍人さんが粛々と行進して参拝した。近ごろは参道でさまざまな外国語が耳に入る。

 山手線をはさんで東側に明治神宮の外苑がひろがる。花火があがる神宮球場などスポーツ施設や緑地帯が整備された地域で、次のオリンピックでさぞかし賑わうだろう。ここも国民の献金で創建されたが、外苑中央に位置するのが聖徳記念絵画館で、明治を一望する壁画が常時展示されている。徳川慶喜の「大政奉還」、西郷隆盛と勝海舟の「江戸開城談判」、明治天皇の「東京御着輦(ごちゃくれん)」、横浜湾での「岩倉大使欧米派遣」、「日露役奉天戦」で馬に跨って入城する大山巌総司令官など、教科書で目にした歴史の名場面に再会するだろう。

 明治時代とは何であったのか、画を描いた昭和初期の作家は明治をどう認識したのか-。近代日本は西洋列強に対抗し中央集権の国造りに邁進した。

聖徳記念絵画館の80点の絵はその証言である。だが日本の天皇の一代記を、ルイ王朝の一代記とか、ドイツ皇帝(カイザー)の一代記と同じように見てよいのか。もし違いがあるとすれば何か。

 11月20日まで続く外苑の聖徳記念絵画館の大展示に先立ち、内苑の参集殿で私はそれについて講演し、そのおり聴講者とともに二つの場所を往復した。近代文明の所産のスポーツ競技場、緑地帯、石造の聖徳記念絵画館、日本画と洋画、それぞれに立派である。だが、そんな外苑の公園よりも代々木の森、池、鳥、そこに鎮座します神宮-この内苑の方が厳かで、尊くて、すがすがしい。この誰もが感じる違いは何を意味するか。


皇室の「聖」と「俗」の二面性

 内苑と外苑のこの異質感は何に由来するか。それは皇室が有する「聖」と「俗」の二面性に由来する。聖とは英語でいうsacredで、天皇は第一に天照大神を皇室の祖神と仰ぎ神道の祀り事を行う大祭司である。その宗教文化的伝統の継承者として陛下は国民とともに祈り、先祖の霊を祀り、おつとめをはたされ、ご自身も神宮に祀られた。

 そして第二の俗secularの面では、憲法に規定される日本国民統合の象徴として国事行為や公務をなされた。ただ聖徳記念絵画館の画家たちは天皇の国王(キング)としてのおつとめは描いたが、祭司(プリースト)としてのおつとめは描くことが難しく、伊勢の「神宮親謁」「大嘗祭(だいじょうさい)」など点数も限られた。皇室のおつとめには視覚化しがたい、厳かで、尊くて、すがすがしい要素がある。それが「聖」の面であり私たちは外苑から内苑にはいると、ここが神域であることを直覚する。

 ではその聖俗いずれのおつとめが日本の天皇にとり大切か。日露戦争の翌年、明治天皇は詠まれた。


-かみかぜの伊勢の宮居を拝みての後こそきかめ朝まつりごと-

 天皇家にとり「まつりごと」とは「祭事」が第一で、天皇は国民にとってまず神道の大祭司である。

 それだから「伊勢の宮居を拝みて」の後に「まつりごと」の第二である「政事」の仕事に国王として耳を傾ける。


神道の文化的伝統の継承者

 大切なことは、万世一系の男子世襲の天皇は神道の文化的伝統の継承者であるということで、だからこそ権力はないが権威がある。いまの憲法に書いていないからといって、法学者は言及せず、官僚は自覚せず、新聞も報じないが、天皇家が民族の永生の象徴であるのは「祈る」ことにより祖先へと「続く」からで、存在することに意味がある。皇室には歴史的にそのような聖俗二つの面があることを忘れないようにしたい。

 文化や美術は、キリスト教文化とか仏教美術というように、宗教とともに発達した。それぞれ特色があり、イスラム美術は建築・工芸にすぐれるが、神は不可視的存在として偶像崇拝は禁じられ、それゆえ肖像画・人体彫刻は少ない。神道にも似た宗教文化的特性がある。

 ルイ大王などと違って明治天皇の一幅の大肖像画や騎馬像がないのは、帝を描くことは畏れ多いという感覚が働いたからだろう。聖俗の第一の面、明治天皇が天照大神に祈られた御製は戦前は小学校教科書に載っていた。

-とこしへに民やすかれといのるなるわがよをまもれ伊勢のおほかみ-

-わが國は神のすゑなり神祭る昔の手ぶり忘るなよゆめ-

 この歌は明治天皇のご子孫や国民へのご訓戒と拝察する。謹みて皇室の御安泰を祈る次第である。


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