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櫻井よしこ 美しき勁き国へ

2016年11月07日 08時59分00秒 | 国際・社会
言語道断ではないか? 三菱マテリアル和解の裏に日中関係の悪化を恐れた外務省の「助言」があった!

 過日、国連教育科学文化機関(ユネスコ)に「明治日本の産業革命遺産」として登録された端(は)島(しま)(通称、軍艦島)を訪ねた。総面積1万9700坪だ。最盛時、5267人が軒を重ねるように建つ日本初の鉄筋高層住宅で密集して暮らした。同島は「強制労働の監獄島」だったとの非難が韓国にある。元中国人労働者は端島で強制労働にあえいだとして、三菱マテリアル(旧三菱鉱業)を訴え、後述するように和解を勝ち取った。

 他方、長崎市は、「島民は共に遊び、学び、働く、衣食住を共にした一つの炭鉱コミュニティであり、一つの家族のようだったといわれている。島は監獄島ではない」との見解を示している。

 戦時中、端島を含む各地の炭鉱に日本は中国人を「強制連行」し、企業は彼らに過酷な労働を強いたとして、マテリアルは訴えられてきた。だが最高裁判所は2007年4月、日中間の戦時賠償は個人の請求権問題も含めて1972年の日中共同声明で解決済みとの判決を示し、マテリアルは全ての訴訟で勝訴した。

 それでも、中国人側は日本人弁護士に支えられ要求を続け、同社が譲らない状況が続いた。日本政府は日中間の正式な取り決めに依拠して同社の姿勢を支持してきた。

 ところが今年6月1日、マテリアルが一転、和解した。内容は中国人労働者側の代理人、内田雅敏弁護士が「心からの敬意を」(『世界』2016年7月号)表した程の踏み込んだ謝罪と高額の賠償金、基金80億円、謝罪の碑の建立を含むものだった。

 なぜか。取材を通して、背景に日中関係で前のめりになり自ら敗北の中に飛び込むかのような外務省の「助言」があったことが見えてくる。

 確かにマテリアルを和解に向かわせる状況変化もあった。2014年2月26日、弁護士の康健氏が三菱マテリアルと日本コークス工業(旧三井鉱山)を北京市第一中級人民法院(地裁)に訴え、これがわずか3週間後の3月18日に受理されたのである。

 そのときまでこの種の訴えを受理しなかった中国側が電光石火、受理した。2013年12月に安倍晋三首相が靖国神社を参拝し、日中関係が冷えきっていた中での同措置は、中国の報復という政治的色彩を色濃く帯びていた。

 司法が政治の下にある中国での訴訟に、受理の時点で勝ち目はないと見たマテリアルが和解に動き始めたことは、同社が2014年4月頃から急に積極的になったという内田氏の述懐によっても裏づけられる。

 しかし、外務省は康健氏の訴えが受理される前に、マテリアルに和解を勧めていたのである。外務省は全否定するが、このことは複数の取材源によって確認がとれている。

 冷え切った日中関係の中での訴訟におびえ、日中関係のさらなる悪化を恐れたと思われる。

 日本が和解を受け入れれば中国政府はこれ以上の訴訟を起こさせないように対処してくれるという、根拠のない期待など、外交官は抱いてはならない。日中共同声明の原則に基づけば、中国側の訴えは真の日中友好に反すると主張して、企業を助けるべき局面だった。その闘いの最前線に立つべき外務省でありながら、受理以前に心を萎えさせて企業に和解を勧めたのは言語道断であろう。

 中国の圧力に日本が屈服するのは、日本は常に謝罪し賠償に応じるべきだとの思考に外務省が染まっているからではないか。外交専門誌「外交フォーラム」1992年2月号に元駐韓大使で事務次官の須之部量三氏が書いている。

 戦後処理は、「条約的、法的にはたしかに済んだけれども何か釈然としない」

 同じく事務次官で駐米大使を務めた栗山尚一氏も同誌2006年1月号に書いた。

 「条約その他の文書は、戦争や植民地支配といった不正常な状態に終止符を打ち、正常な国家関係を確立するため欠かせない過程だが、それだけでは和解は達成されない」

 2007年5月17日には、元オランダ大使の東郷和彦氏が朝日新聞に書いた。

 「各企業は、(中略)もう一回、韓国、中国の人たちが陥った過酷な状況に思いをいたし、責任感と大度量をもってできるだけの救済をしていただけたらと思う」

 外務省OBでマテリアルの社外取締役を務める岡本行夫氏も、1972年の共同声明は悲惨な事態を認識しないで結んだとして、企業の謝罪と見舞金支払いを推奨する。

 ベテラン外交官が、問題解決は条約や国際法では不十分で、新たな和解の枠組みが必要だと異口同音に語る。異常ではないか。一連の条約作成に関わったのは彼らであろうに。奇妙なことに、彼らの主張はマテリアルを訴えた弁護士らの主張とほぼ一致する。

 和解でマテリアル側には、訴訟リスクを回避したいという企業防衛の計算もあっただろう。そうした事情を考慮しても、和解の負の影響を同社は深刻に受けとめるべきだ。

 1974年の三菱重工爆破事件の犯人の弁護士を務めた内田氏はドイツ型の「記憶・責任・未来基金」の創設を説く。ドイツの政府と企業群が、約150万のユダヤ人への償いで、各50億マルクを拠出し総額100億マルク(5300億円)で設立した基金のようなものの創設を目指す。

 マテリアルは元労働者各人に10万元(約170万円)を払う。対象者は3700人超、諸費用を加えて80億円規模だ。基本的に元労働者に払われるが、基金創設の第一歩となる可能性も高く、それが、日本をナチス・ドイツと同列に置く不当な枠組みになる危険性も否定できない。
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