みなさんご存知のフィギュアスケート浅田真央が引退しました。10日夜遅くの一報、そして12日の記者会見。「突然の引退表明でびっくり」的な報道が目立ちます。ですが、12位に終わった昨年暮れの全日本選手権をテレビで見ていたときには、もう時代が終わったなという雰囲気をひしひしと感じました。本人も会見で「もういいんじゃないかと思った」と語っています。今回の引退に合わせて、ほとんどのテレビ局が多くの感動を呼んだソチ五輪のフリー演技をノーカットで放送していましたが、もしあれが最高なら、やっぱり時代は変わったのだなという意を強くしました。
レベル高さを示した年末の日本選手権
昨年の日本選手権。宮原美佐子が優勝し、樋口新葉2位、三原舞依3位、本田真凛4位で全員が十代でした。年齢はともかくその演技内容のレベルの高さで、3回転3回転のコンビネーションジャンプをいとも簡単に決め、得点が1・1倍になる後半に飛ぶケースも珍しくなくなりました。ソチでの浅田のフリーは私を含め多くの日本人が感動しました。ショートで失敗し16位から6位に巻き返した演技は代名詞のトリプルアクセルに成功し、3回転のコンビも飛びました。フリーの得点は140点台で、優勝のソトニコワ、2位キムヨナに次ぐ得点でしたが、それを上回る演技と感じたものでした。
ソチ五輪のフリー演技も今のレベルだと
ところが、あらためて放映されたフリー演技を見ていると、トリプルアクセルこそ成功したものの、コンビジャンプ、単独の3回転いずれも、高さ幅などどこか迫力がないのです。あまり加点は得られなかったのではないか、ジャンプの浅田と言われたけど、実際はそうでもなかったのではないか、と見えました。評判が良かったステップも硬く滑らかさに欠けていたように感じました。まあ、いずれも素人目なのですけどね。ジャンプでいえば世界ジュニア選手権3位の坂本花織のダイナミックさの方が上に感じます。本田真凛のコンビはとても軽やかで高さもあります。宮原はジャンプやステップスピンいずれも迫力はないけど、どんなときもほぼ失敗がありません。
200点台が当たり前に
浅田がトップの時代、国際競技会でも女子が総合得点200点を超えることはまれで、180点、190点台の優勝はよくありましたが、現在日本だけでも宮原、三原、本田が200点を超えました。先日の世界選手権では優勝のメドベージェワはなんと230点台、2、3位のカナダ勢も210点台でした。コンビも単独もジャンプのレベルが確実に上がっているためではないでしょうか。おそらく浅田が現役を続けてトリプルアクセルを成功させても、加点のもらえないほかのジャンプやステップでは200点は出せないでしょう。それぐらいレベルは上がっているのではないか。引退表明は、自分のレベルではもはや世界と戦えなくなっている、そんな冷酷な事実を冷静に受け止めたということではないでしょうか。
Number5/5特別増刊号「永久保存版 浅田真央 ON THE ICE 1995‐2017」 (Sports Graphic Number(スポーツ・グラフィック ナンバー))クリエーター情報なし文藝春秋