C'est la vie.

人生ままならぬもの。成り行き任せか、C’est la vieか。電子のカオスの中で思いが遂げられたらと思う今日この頃。

時間かかったけど楽しませてもらった 文庫本化された和田竜の「海賊の娘」

2017-04-01 23:37:14 | Weblog

村上海賊の娘(一)(新潮文庫)クリエーター情報なし新潮社

 

 一巻から四巻まであり結構、読破には時間がかかったが面白く読ませてもらったのが、文庫本化された和田竜の「海賊の娘」だった。 村上水軍という名前は聞いたことはあったが、瀬戸内海を根城とする海賊という犯罪組織ぐらいにしか思っていなかった。キーワードとなる石山本願寺、木津川の合戦も同様で、名前を知ってるだけで歴史的にどういうものかは考えたこともなかった。

豊臣秀吉の大阪城は石山本願寺跡地だった

 本書に出てくるのは織田信長が歴史の中心だった当時。だが、宗教がらみといえば、比叡山延暦寺の焼き討ちのことしか記憶にない。大河ドラマなどでも描かれるのは、比叡山を焼き討ちし、僧だけでなく女や子どもまで皆、首をはねたこと。信長の残虐性を強調するエピソードとしてよく登場する。これに対し、石山本願寺は信長との戦いは続いたものの最終的には浄土真宗側が撤退することもあって描かれることは少ない。しかし、石山本願寺があった場所こそ、豊臣秀吉が築城した大阪城そのもの。本願寺明け渡しから時を経ずして信長は本能寺の変で死に、その遺産とも言える土地を秀吉が有効利用したことになる。確かに台地にある大阪城一帯は、当時の戦略としてかなり価値があったように見える。大阪城を本願寺の跡地として見たことはなかっただけに少々、驚きではある。


本願寺攻防戦、一方の主役だった村上水軍

 小説の主役ともなる村上水軍。愛媛県や山口県の在住者の間では村上水軍の名前はよく出る。「あの人は海賊の末裔だから」などという言葉を聞くことも多い。実際、村上という名字は愛媛県沿岸部を中心にかなり多い。だが、歴史と結びつけて考えたことはなかった。毛利元就が中国地方の覇者となる厳島の合戦で村上水軍の船団を利用していたことや、石山本願寺をめぐる戦いでは、水軍は毛利軍の中心となり、本願寺に食料を運び込むために大船団を率いて大坂に向かい、木津川河口付近で織田軍と激突、激しい戦いを繰り広げた(木津川の戦い)ことなど、ほとんど知らなかった。ある時期まで水軍は非常に大きな存在だったようだ。

体がわくわく、目頭熱く ヒロインの想像も楽しい

 さて、そんな歴史的な背景の中でストーリーは展開する。「海賊の娘」というだけあって主役は女性。ただ、その先のことは、読む人に悪いので割愛する。活劇時代劇といえる内容の中で、読むという行為の中では珍しく、わくわくして体が熱くなったり、目頭が熱くなったりする場面が2カ所あった。それと、映画化されたら誰がヒロインを演じるのだろうと想像するのが楽しくなったのも事実だ。



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