書いては消して
書いては消して。
昨日から繰り返していた。
僕の大好きな大先輩。
昨日の朝、天国へ行っちゃった。
大先輩とは6年前にSTOVE'Sで出会い
「新しいスタッフだよ」って圭に紹介してもらった矢先に
「お前は誰だ?」って言われた覚えがある。俺の顔は完全に引きつってたよ。
毎日現れるそのおじさんは
酒の飲めない俺にテキーラを飲ませようとする。
仲間に聞くと
STOVE'Sがオープンしてからずっと通っているお客さんだって言ってた。
俺と出逢った頃はもう優しくなってたけど、
昔は厳格で怖いおじさんだったって言ってた。
ラルフローレンが大好きで、いっつもお洒落をしていて
「格好良い歳のとり方してるな」って思ってた。
毎日の様に顔を合わせる様になって、俺の名前を覚えてもらってからは
「おう!たかゆき。どうだ?商売は?」
「おう!たかゆき。ちょっと肩揉んでくれ」。てな具合で。
それでいて、毎回言うのが
「おう!たかゆき、どーだ一杯やるか?」
俺が「やらねーよ」と言うと
「あーそーですか」ってニコッて笑うのがいつものやり取りだった。
「じゃあ、たかゆきが好きなのなんか飲め」って。
ちょっと申し訳ないなとも思ってた。
でも、本当にいつかご馳走になろうと思ってたんだ。
その時の笑顔も想像してたよ。
本当にタイミングを考えてたんだ。ごめんね。
毎回毎回、椅子に座るなり
圭やシンヤに「おい!イーグルスをかけろ」って言う大先輩。
普段はそんなリクエストなんて絶対に聞かない圭が
素直にイーグルスをかけてたから
「あぁ、このおやじすげーんだな」って思ってた。
当時は古くさくてダサイ曲だなって思ってたよ。
今では大好きな曲だよ。
高そうな寿司屋に連れて行かれ
これでもかっ、って位食べさせられて
お土産まで持たされた。
ちゃんとご馳走さま言ったけかな?
ご馳走さまでした。
STOVE'Sでは鍵も閉めずにトイレに入るから
最近では俺が一緒について行って
出てくるまで外で待ってた。毎回。
平日の夜は
お店を閉めてSTOVE'Sにご飯を食べに行くと
入ってすぐのカウンター右側がいつも空いてて
真ん中には大先輩がどっしり座ってる。
空いてる右側が、大先輩との待ち合わせみたいだった。
「たかゆき、お前の飯の食い方は綺麗だな。お前は育ちが良いんだ」
なんて褒められたりもした。
思い出はつきないよ。
本当に。
昨日の話しが嘘であってほしいと思いながら圭に電話した。
「悪い冗談だ」と電話の向こうで分かっていながら
そう言う圭。
すこし無言。
しばらく圭と話し
「本当に最後まで間の悪いおやじだな」って涙ぐんで話してた。
シンヤからは「1人じゃ居られないって」メールが来て
俺のお店のベンチでボーッとしてた。
「来月の結婚式まで生きてるって言ってたのにな...」って。
大先輩の部屋には
来月のシンヤの結婚式に行く為のスーツが綺麗にかけられてたって。
昨日の夜
しばらく1人で迷いながら歩いたけど
やっぱり家に帰った。
涙が出るから、帰った。
仲間のお店ではイーグルスがずっと流れてたって。
STOVE'Sに入ってすぐのカウンターには
大先輩がいつも飲んでた
テイラーとでっかいお水と、ケントの1mmが置いてあったって。
もう面倒くさいホテルの手配も
タクシーも
やらなくて良いんだね。
寂しいよ。
おれ
隣で
褒められたくて
綺麗に食べてた。
また逢いたい。
ありがとうございました。