アフガン・イラク・北朝鮮と日本

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非同盟諸国会議は「反米サミット」?

2006年09月19日 23時50分09秒 | その他の国際問題
 9月15日からキューバの首都ハバナで開催されていた第14回非同盟諸国首脳会議が閉幕しました。会議では、米国の単独行動主義・覇権主義やイスラエルのレバノン侵攻を批判し、キューバ制裁解除やイランの平和的利用の権利擁護を求めた宣言・文書が、それぞれ採択されました。

・カストロ議長出席せず ハバナで非同盟首脳会議(共同通信)
 http://news.goo.ne.jp/news/kyodo/kokusai/20060915/20060915a3170.html?C=S
・非同盟会議、「反米」基調打ち出す 声明採択し閉幕(朝日新聞)
 http://news.goo.ne.jp/news/asahi/kokusai/20060917/K2006091701980.html?C=S
・イランの核開発権利を確認 非同盟諸国首脳会議が閉幕(東奥日報)
 http://www.toonippo.co.jp/news_kyo/news/20060917010004061.asp

 上記は、その非同盟諸国会議を取り上げた日本の新聞記事からピックアップしたものです。いずれも、ホスト国キューバのカストロ議長の動向に注目したもの以外は全て、「反米」基調の一点だけを強調したものになっています。これは、ごく一部の例外を除き、此処で紹介しなかったものも含め、私が目を通した全ての記事に大なり小なり言える傾向でした。私はこれを見て、今更ながら、日本のメディアの御用偏向ぶりに唖然とさせられました。

・非同盟ウォッチ
 http://park5.wakwak.com/~asia/nam/nam-j.htm
・非同盟主義
 http://www.tabiken.com/history/doc/P/P137R100.HTM
・非同盟運動(NAM)公式サイト(英語)
 http://www.nam.gov.za/
・非同盟運動関連文献
 http://park5.wakwak.com/~asia/nam/nam_ref1.htm

 非同盟諸国会議というのは、上記の参考資料でも明らかなように、第二次大戦後に独立を勝ち取ったアジア・アフリカ・ラテンアメリカの第三世界諸国の首脳が集まって、大国主導だったそれまでの世界を、より民主的で公平なものに変えていこうと要求している、そういう国々の集まりです。今回の首脳会議で新たに二国が加わり、現在では118ヵ国と1機構(パレスチナ解放機構)から構成される、そういう国家群です。アジアでこれに加盟していないのは、米国と軍事同盟を結んでいる為に非同盟の加入要件を満たしていない日本と韓国だけです。

 非同盟諸国は、バンドン会議(1955年に開催された最初のアジア・アフリカ諸国会議)参加諸国を中心に、1961年に正式に結成されたグループです。
 それらの国々は、戦後50年代の東西冷戦期には、各国の独立・平等・平和共存や軍事ブロックの解消を唱え、反帝・反植民地主義を掲げて未独立地域の民族解放運動を支援しました。そして、各国の政治的独立達成が一段落した60年代後半以降は、経済的独立・経済主権の確立から、公平で民主的な新国際経済秩序の確立に向けての歩みを続けてきました。そして今や、名目上の政治的独立のみに止まらず経済的独立を求めて、南北問題に象徴されるような、大国や多国籍資本によるモノカルチャー・不等価交換貿易によってもたらされた環境破壊や多重債務や生活悪化の押付け・搾取・抑圧からの脱却を求めている、それがこれらの国々なのです。

 勿論、これら非同盟諸国もその内実はピンからキリまで色々あります。国家形態に限ってみても、社会主義を標榜する国(これ一つとってもマルクス主義志向から民族名・自国名を冠したオリジナル「社会主義」まで色々)やその他の普通の共和国からサウジアラビアの様な専制君主国まで多種多様であり、「反米」国家から親西側諸国まで包含しており、その中には軍事独裁を敷いている国々も少なくありません。

 一例を挙げれば、エジプトやオブザーバー加盟のメキシコなどは、いずれも核廃絶・平和運動に多大な貢献を為している有力な非同盟諸国ですが、外交面での進歩性とは裏腹に、国内では非常事態体制を数十年に渡って継続して反政府派の集会・デモを徹底して弾圧したり、米国とFTA協定を結んで国内を農業多国籍資本の草刈場にしたりなど、進歩的とはとても言えないような政治を行っている、そういう一面も確かにあります。

 「国際的に見れば弱者だが、国内においては国家権力として民衆に対峙している事には変わりない」という二重性格を有する非同盟諸国の姿勢を、当該国内においてもより民衆の側に立ったものにするのは、偏に当該国の民衆運動の発展如何に掛かっているのです。

 しかし、「だから非同盟は所詮は絵に描いた餅だ」と言う事にはならないのであって、寧ろそういうピンからキリまである多種多様な国々であるにも関わらず、「大国主導だったそれまでの世界を、より民主的で公平なものに変えていく」という一点では一致している、そういう国々が既に国連加盟国の大多数を占めている、という事が重要なのです。

 そういう下で、SEATO(東南アジア条約機構)やアンザス条約、WATO(ワルシャワ条約機構)などの、かつての米ソ超大国主導の軍事同盟は既に消滅し、ASEAN(東南アジア諸国連合)などの経済主導・共存志向の共同体がそれに取って代わり、NATO(北大西洋条約機構)も今やその性格を米国主導から欧州を中心としたものに大きく変え始めているのです。そんな中で、日本の様に、ひたすら日米軍事同盟にのみ固執して、非同盟、多国間主義、大国も小国もない公平で民主的な国際秩序構築の動きからは徹底的に背を向けている、そういう歪な国の方が、寧ろ今では世界の少数派なのです。

 それが何ですか。言うに事欠いて「反米」? もう「それしか言う事無いのか」という感じ。かつてアフリカ諸国の独立やベトナム戦争、沖縄の祖国復帰運動を取り上げた時の、民族解放や民族自決権擁護の主張に、表向きだけでも連帯・共感を寄せていた、かつての報道姿勢と比べても考えられない位の後退・堕落ぶりです。

 確かに、米国に歯向かうキューバ・ベネズエラ、「悪の枢軸」の北朝鮮、同じく「悪の枢軸」でホロコースト否定発言を繰り返す大統領を戴くイランと、そういう面だけで捉えれば、一面的・断片的な情報操作で悪意を以ってすればいくらでもワイドショー・ネタに貶められるそうな役者も揃っています。しかしこれらの諸国にしても、確かに個別に見れば色々あるものの、少なくとも「大国も小国もない公平で民主的な世界」を希求している、という点では大なり小なり一致しているのです。

 そういう立場からすれば、イラク戦争に見られるような米国の一国覇権主義・単独行動主義に異を唱えるのは至極当然ですし、超大国の核独占やイスラエルの核保有には何ら言及せずに中小国の核平和利用の権利にばかり横槍を入れる横暴にイランが反発するのも、これもある意味では当然です。今回の非同盟会議に際して前ホスト国マレーシアの首相がいみじくも語っていましたが、「我々は別に反米でも何でもない、ただ不公正や不平等に反対しているだけなのだ」という事です。

 「反米」だとか何だとかを強調する前に、もっと強調し報道しなければならない事が幾らでもあるでしょう。例えば、先のレバノン戦争でのイスラエルの蛮行を告発したレバノン代表の発言とか。

 多分、日本の大手商業マスコミは、ブッシュの「悪の枢軸」「対テロ戦争」論に毒された立場から、「親米でなければ全て反米」の論理で前述の記事を書いたのでしょうが、これって、かつての「親ソ・親中でなければ全て反共」の裏返しではないのでしょうか。かつての上辺だけのソ連・中国・北朝鮮礼賛が、そっくりそのまま米国礼賛に摩り替わっただけで、大国や特定の国になびき「長いものに巻かれろ」という、根本にある事大主義・植民地主義の構造はちっとも変わっていないのでは。

 麻生外相が「弱いものが虐められないようにするには、喧嘩の強い相手に追従して守ってもらうしか無いのだ、それが日本の外交だ」みたいな事を自分のHPに書いていますが、「これって根本的に間違っているのでは」と私は思いますね。この思考なども事大主義の典型例です。
 一番大事な事は「喧嘩の強い相手に追従して守ってもらう」事なんかではなく、そんな卑屈な真似をしなくても良いように、公平・平等で民主的な関係を一歩一歩作っていく中で、弱者・強者とか支配・被支配とかいう関係を止揚して、それぞれの多様性が尊重され共存されるような世界を作っていく事が一番肝心な事ではないでしょうか。そしてこれは、軍事力などではなく道義に基づいた外交力に依拠して、初めて可能になる事です。
 http://www.aso-taro.jp/lecture/kama/2006_2.html
コメント (4)
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