進化する魂

フリートーク
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AKB48を語るときに知っておきたい「フリー」

2012-11-23 18:33:16 | AKB48_行動原理系
題名が偉そうですみません・・
今日は過去エントリの補完をしておきたいと思います。

※よく使う概念は書いておいて使い回すのが吉ですな


如何にして顧客の日常となり得るか ~ 「ゼロの力」とググタスの未来 ~
http://blog.goo.ne.jp/advanced_future/e/4c9821ec2aceb2416ab5aa3af807c062


上のエントリで「ゼロ」の力を使ったAKB48の戦略のあるべき姿を述べたのですが、一段と理解を深めるために、今回はそこでは説明しなかった前提知識をいくつか書きます。

参考図書は、フリーといえばこの本が有名ですね。

クリス・アンダーソン『FREE フリー <無料>からお金を生み出す新戦略』




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■「フリー(free)」とは何か?

「フリー」という言葉は多くの意味を持つし、その意味は時間とともに変わってきた。
フランス語やスペイン語、イタリア語などラテン語を起源とする言語では、「自由」と「無料」は別々の単語となるのでわかりやすい。
それに対して、英語の「free」は「自由」と「無料」の2つの意味を持つ。
その両義性ゆえにマーケティング上の長所もある。
「自由」という良い意味が、セールス上の策略に対する我々のカードを下げさせるのだ。
とはいえ「free」が2つの意味を持つのは紛らわしくもある。

どうして、英語では「free」という1つの言葉になったのだろうか?
面白いことに、「free」のルーツは「friend(友人)」と同じだという。
語源学者のダグラス・ハーパーはこういう。

「free」と[friend」の古英語の「freon」「freogan」という「自由」と「愛」を意味する言葉に由来する。
元の意味は、「最愛の、友人」だったと思われるが、ドイツ語やケルト語をはじめ、いくつかの言語で「free(自由)」の意味が発達したのは、「親愛の」や「友人」の言葉が、同じ氏族の奴隷に対して使われるようになったからだろう。
「無償で与える」という意味は1585年に登場したと思われるが、これは「費用からの自由」と考えられたのだ。

「free」は、社会的意味の自由、つまり「奴隷からの自由」と「費用からの自由」に由来する。

なので、ここでは「free」という言葉を「無料」ではなく、「費用からの自由」の意味で使うことにする。


■内部相互補助


There's no such thing as a free lunch.
(「この世にただのランチはない」を意味する慣用句)


この言葉の本質にあるのが、「内部相互補助」である。
ランチを食べた者がお金を払わないとすれば、それは結局、その人にタダでランチを提供しようとする誰かが払っているに過ぎない。

人々は時々、こうして間接的に商品の代金を払っている。
フリーペーパーは広告収入で運営されていて、それは広告主である小売業者などのマーケティング予算から出ている。
そして、その費用は商品の価格に上乗せされるので、最終的に読者かその周りの人が、価格が少し高くなった商品を買うことでそのコストを負担することになる。
スーパーマーケットの無料駐車場は、商品からの利益でまかなわれているし、無料サンプルのコストは、その商品を買う客によってカバーされている。

贈与経済というのもある。
例えば、ブログは無料で、広告収入がない場合も多いが、読者がブログを訪問するたびに何かしらの価値が交換されている。
コンテンツを無料とする代わりに、読者がそのブログを訪問したり、そこにリンクを張れば、そのブロガーの評判が上がる。
ブロガーはその評判を利用してよい仕事を得たり、ネットワークを広げたり、多くの顧客を見つけたりできる。
時として、その評判はお金に変わることもあるが、いろいろな方法があるので、一概にいうことはできない。



内部相互補助には、現在確認されているモデルが3つある。

- 直接的内部相互補助
- 三者間市場
- フリーミアム

そして、贈与経済のモデルとして1つ。

- 非貨幣経済


それぞれ説明する。


・直接的内部相互補助




「DVDを1枚買えば、2枚目はタダ」だとか、「無料サンプルお配り中」だとかといった売り文句に接することが多いだろう。
このモデルの先駆的な商品となったのが、ヒゲ剃りの「ジレット・モデル」だ。
ジレットは、使い捨ての刃がついたT字型の安全カミソリを開発し、安い値段で安全カミソリを売り、利益率の高い替え刃で儲けるビジネスモデルを構築した。
この数十億枚の替え刃を売ることで利益を上げるビジネスは、あらゆる産業のお手本となった。
(カミソリを無料で配ったという話は都市伝説らしい。)
「携帯電話をタダで配って月々の利用料で儲ける」や「テレビゲームの端末を安く売って、ゲームソフトで儲ける」、「オフィスにタダでオシャレなコーヒーメーカーを設置させてもらい、利益率の高いコーヒーパックで儲ける」といった話など様々である。


・三者間市場




メディアの基本がこのモデルである。
メディアが制作物をタダかもしくは安い価格で消費者に提供し、広告主がお金を払う。
おかげで、日本ではラジオもテレビも無料である。
(有料放送もあるが)

経済学者は、これを「市場の二面性」という。
お互いに支え合う2組のユーザー集団がいるからだ。
広告主は広告を消費者に届けるためにメディアにお金を払い、消費者はその代りに広告主を支援する。
結局のところ、そのマーケティング費用は、商品の代金に上乗せされた形で消費者が支払うことになる。

この形はメディア以外でも成り立つ。
例えばクレジットカードでは、銀行は無料で消費者にカードを発行し、消費者が店でそれを使えば使うほど、銀行に手数料が入る。
OSのプラットフォームを消費者にとって魅力あるものにするために、より多くの消費者に使ってもらおうと、アプリケーションソフトの開発者にOSツールを無料で配るのも同じだ。
消費者が基本製品が無料だと感じるように、コストは分散されたり、隠されたりする。


・フリーミアム




これはベンチャー・キャピタリストのフレッド・ウィルソンの造語だ。
Webにおけるビジネスモデルとしては一般的だ。

フリーミアムは無料サンプルを配るのとは少し毛色が違う。
従来の無料サンプル、たとえば試供品を作るのには実費がかかるので、生産者は少量しか配れなかった。
少量で消費者を引き付けて、より多くの需要を生もうとしていたのだ。

一方、デジタル製品においては、無料と有料の割合は全く異なる。
世にいう「95:5の法則」や「5%ルール」のことだ。
つまり、5%の有料ユーザーが残りの95%の無料ユーザーを支えているのだ。
フリーミアムのモデルでは、有料版を利用するユーザー1人に対して、無料の基本版ユーザーが19人もいることになる。
しかし、それでもやっていける理由があるのだ。
19人の無料ユーザーにサービスを提供するコストが、無視できるほどゼロに近いからだ。


・非貨幣経済




WkipediaやLinuxなどを見れば、金銭以外にも人を動機付けるものがあることはわかる。
エドワード・L・デシの「内発的動機付け」を筆頭に、最近ではダニエル・ピンクの「モチベーション3.0」として語られることが多いものだが、利他主義は常に存在してきたが、WebやSNSの登場で個人の行動が世界に影響を与えられるようになったのだ。
流通コストがかからないことが、「共有」を一つの産業規模にしたと言える。

貨幣経済からしてみれば、不当な価格競争のようにも見えるかもしれないが、その見方は、そこで創られるものの価値を近視眼的にしか評価していない。
シェア(共有)を促すものは、評判や関心であり、それより目立たないが表現、喜び、善行、満足感、あるいは単なる私利である。
時に知らないうちに誰かに何かを与えていたり、いやいやながらも与えたりする場合もある。

余談だが、私たちは、SNSの「いいね!」や「+1」を押したり、投票に協力したり、ヤフー知恵袋に応えたりする。
グーグルで検索するたびにユーザは、ターゲット広告の為のアルゴリズムにグーグルが磨きをかけるのを助けている。
サービスを利用する行為が、なんらかの価値を生み出している。
それはサービス自体を向上させるためだったり、どこかで役に立つ情報を作る事だったりする。
知る知らないに関わらず、我々は何か無料のものを手に入れる代償として労働力を提供しているのだ。


■ひるがえってAKB48


上記で、フリーの基本的なモデルについて説明したが、AKB48のビジネスの多くの部分はこのモデルを使って解釈できるし、戦略を練るにあたってはそのままというより、これらをミックスしていくことになる。

(『フリー』については広告やメディア業界の皆様はよくご存知であろうから、当然そうなる。)

AKB48は各コンポーネントを持っているし、創り上げる力もあるので、それらをストーリーとして繋げていけば競合よりも強いビジネスモデルを作れるのであるし、実際これまでのAKB48の新規性の背景には、この収益モデルの新規性があったのである。

しかし、ここで注意すべき点は、環境が変化するとモデルにも修正が必要になってくるということだ。

状況が変わってきているのに、既存のモデルを使いまわすと無理が出やすい。

全てが変化するこの宇宙では、モデル自体をアップデートしていくのは必然であるのだが、このアップデートのスピードよりも状況の変化のスピードが上回ると衰退することになる。

状況が非連続に変化する時には、「持続的イノベーション」による漸進的な変化スピードではなく、「破壊的イノベーション」のような非連続なモデルのアップデートが必要となる。

最近のAKB48の勢いが落ちてきていると思われるような背景には、成長率の落ち込みの他にも、運営がどのようなモデルで収益を上げようとしているのか見えなくなってきているからというのもあるし、既存のモデルの無理強いに感じることが多くなってきているということだと思う。

(ちょっと最後時間ないのでなげやりに・・)


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