乾龍の『漂流日本の羅針盤』・【最新ニュースから見え隠れする闇】:

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【インタビュー】:『戦場ぬ止み(いくさばぬとぅどぅみ)』:三上智恵監督

2016-11-30 23:55:55 | 在日米軍基地・再編問題・防衛・武器

【インタビュー】:『戦場ぬ止み(いくさばぬとぅどぅみ)』:三上智恵監督インタビュー

 乾龍の『漂流日本の羅針盤』・【最新ニュースから見え隠れする闇】:【インタビュー】:『戦場ぬ止み(いくさばぬとぅどぅみ)』:三上智恵監督インタビュー

  沖縄で今、何が起きているのか? 『標的の村』三上智恵監督が沖縄の決意を日本に、そして世界に問う、衝撃のドキュメンタリー映画『戦場ぬ止み(いくさばぬとぅどぅみ)』が緊急公開決定!

『戦場ぬ止み(いくさばぬとぅどぅみ)』三上智恵監督インタビュー(Rooftop2015年6月号)

 2014年8月14日、辺野古沖は「包囲」された。
 普天間基地の代替施設という名目で、サンゴとジュゴンの最後の楽園と呼ばれる辺野古の海が埋 め立てられ、最新のアメリカ軍基地が作られようとしている。基地建設に抗議するわずか4隻の船と20艇のカヌー隊を制圧するため、日本政府は機関砲を装備 した大型巡視船を投入し、防衛局と海上保安庁の80隻以上の大船団が大浦湾を包囲した。その異様な光景を見た一人の沖縄の青年は「これはまるで戦争だ」と つぶやいた。
 キャンプ・シュワブゲート前では、工事車両をなんとか止めようと多くの市民が座り込みを続けている。市民の前に立ちはだかるのは沖 縄県警と民間警備会社。基地を作るのは日本政府だが、沖縄県民同士が対立しぶつかり合っているのだ。資材を積んだトラックの前に85歳のおばあが立ちふさ がる。「私を轢き殺してから行きなさい」
 昨年7月から米軍基地ゲートの前で始まった沖縄・辺野古の基地建設反対の座り込み抗議は、11月の県知 事選になるとオール沖縄の「島ぐるみ闘争」に発展し、基地建設に反対する翁長雄志が圧勝した。しかし、こうした沖縄の民意を一切無視するかのごとく、日本 政府は県知事選の3日後に海上工事を再開し「粛々と」続けられている。
 一体、沖縄で今、何が起きているのか?
 映画『標的の村』で、高 江のヘリパッド建設に反対する住民が通行妨害で国から訴えられるという前代未聞のSLAPP訴訟と、オスプレイ配備に反対する市民による普天間基地のゲー ト封鎖の攻防をドキュメンタリー作品として世に問い、日本中で議論を呼び起こした三上智恵監督が、現在、辺野古の海とゲート前で起こっている激しい衝突を 記録し、再び世界に向けて発信したのが映画『戦場ぬ止み(いくさばぬとぅどぅみ)』だ。基地問題を20年間にわたって取材し続けてきた三上監督にとってこ の映画は「沖縄の負担を減らして欲しいなどという生やさしいものではない」と言う。沖縄の人達が国と全面対決してでも止めたいのは、日本で息を吹き返そう としている「戦争」そのものであると。
 国会では今、集団的自衛権の行使を可能にする法案が審議されているが、戦争に翻弄され続けた70年に終止 符を打ちたいと願う沖縄の姿を、今こそすべての国民は正視すべきではないだろうか。東京での緊急先行上映を目前に控えた三上監督に映画に込めた思いを語っ ていただいた。
(インタビュー:加藤梅造 / 写真:(c)2015『戦場ぬ止み』製作委員会)

 ◆映画を観た人は、ちゃんと受け止めて動いてくれるし広めてくれる 

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 ──『標的の村』はテレビ番組として制作され、その後ドキュメンタリー映画になりましたが、『戦場ぬ止み』は最初から映画として制作されたんですよね。

 三上 私はずっとテレビで仕事をしてき たので、映画のドキュメンタリーを作ることの意味をあまり考えたことがなかったんです。『標的の村』を映画にして初めて思ったのは、今までニュースにして も番組にしても全然広がらなかった基地問題が、映画にしただけでなんでこんなに広がるんだろうと率直に驚きました。それまでテレビの視聴者と映画の観客と の違いをわかってなかったというか、映画を観る人は選んで足を運んでくれただけに、ちゃんと受け止めて動いてくれるし広めてくれるんだと実感しました。み なさん凄いです。だから『標的の村』の次の作品は絶対に映画でやりたいと思っていました。

 ──映画に専念するためにQAB(琉球朝日放送)を昨年退社されたんですよね?

 三上 専念するためというよりは、もう 破れかぶれで辞めたというのが実態なんですが(笑)、2年ぐらい前からなんとなく辞めるだろうなと思っていて、辺野古のことは自主で撮り始めていたんです ね。『標的の村』では、高江でヘリパッド建設反対の座り込みをしていた住民が通行妨害で訴えられるといういわゆる「SLAPP訴訟」(※大企業や政府が市 民を恫喝するために起こす訴訟)を取り上げていますが、あれはもともと防衛省が辺野古移設の前にやったテストケースだったんです。これまで沖縄の住民が最 後の抵抗の手段としてずっとやってきた座り込み。それさえも禁じ手にしてしまおうという防衛省の悪巧みを白日の下に晒して、二度とSLAPP訴訟という手 を使えないようにしなければいけないというのが『標的の村』を作った大きな理由なので、辺野古を止めなければ高江の苦しみも終わらない。だから辺野古を撮 るのは高江の延長線上のことで、単に『標的の村』の評判がよかったから続編を作ったわけではないんです。20年間ずっとこの問題に関わっているので、私に とっては必然ですね。
 
 ──本格的に撮り始めたのは、キャンプ・シュワブゲート前での座り込みが始まった昨年の7月7日からですか?
 
三上 もっと前からで、山城ヒロジさんの下手くそな船の練習のシーンは7月1日に撮ってます。もやい結びとか練習してるから、私が「え、今頃それやるんですか?」ってツッコミ入れてる所とか。映画ではカットしましたが(笑)。
 
 ──ゲート前は7月の段階から激しい衝突の場面が多いですよね。私も7月に辺野古に行ったんですが、たまたま映画にも出てくる「トラックの下に潜って車両の侵入を食い止めよう」という場面に居合わせて、これは大変な現場に来てしまったと思いました。
 
 三上 それは貴重な場面に遭遇しました ね(笑)。ゲート前は最初から激しくなると予想していたので、誰が怪我しても、誰が逮捕されても抗議の正当性を自分のカメラで証明しないといけないと思っ てずっと現場にいました。ただ予想外だったのは、85歳の島袋文子おばあが、まさかゲート前で座り込むとは思ってなかったし、ましてや工事トラックの前に 立ちはだかるとは予想外でした。私が焚きつけちゃった面もあるかも知れないんですが、文子おばあがどんどん武闘派になっていって。(昨年11月機動隊との 揉み合いの最中に)おばあが怪我しちゃった時には本当に後悔しました…。
 
 ──その翌日の場面ではゲート前で抗議する人達の激しい怒りがすごく伝わってきました。機動隊の方としては、三上さんにあまり撮影されたくないでしょうね。
 
 三上 嫌がらせもありますよ。周りを囲 まれて身動きが取れなくなるとか。彼らは屈強なのでどうあがいても外に出れないので「出してよー!」ってよく叫んでます。『標的の村』を撮った時と同じ (機動隊の)人もいるから、「あなた映ってたでしょ!映画観た?」って言いながら出してと叫ぶ(笑)。 

 ◆日本の戦争の息の根を止める、それができるのは沖縄からなんだという誇り

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──三上さんは10年前から文子さんを取材しているそうですが、今回の映画の中心に据えたのは、壮絶な戦争体験と戦後もずっと苦しんで きたという彼女の人生が沖縄の悲劇を体現しているからでしょうか?(註:文子さんは15歳の時、沖縄戦で米軍から火炎放射器で焼かれながらも奇跡的に生き 延び、戦後は母と弟を養うために働き続けた。「生きてきて、楽しいと思ったことは何もなかった」と言う)

 
三上 最初に私が文子さんに注目したの は、とにかく言葉はきついし、目は怖いし、戦時中に負った腕の火傷を見せて啖呵を切るしで、この人凄いなあと。なんで誰もこの人を取材しないんだろうと 思って、近寄っていったんですが最初は「私は取材は大嫌いだし、何も話さないよ!」って言われて…、いつも怒らればかりでした。文子さんは誰にでも好かれ る愛くるしいおばあではないけど、誰よりも一途で、ピュアで、寂しがり屋で、人間としての弱さや、かわいいところもすごくあって、私はそんな彼女が大好き なんです。「文ちゃんのかわいさが分かるのは私だけ」って思うから、よけいに近づきたくなる(笑)。彼女の家に行くと、手作りのブローチやリボンなどかわ いい小物が沢山飾ってあるんです。私のおばあちゃんもそうでしたが、青春時代が戦争だったから、かわいいもの、キラキラした物を何一つ身に付けられなかっ たんですね。少女時代に何もできなかったから、ようやく今になってフリフリしたものを壁一面に飾って、来る人みんなにプレゼントするんです。一見男勝りな 文子さんの中には、本当にかわいらしい「文ちゃん」がいるんです。
 
 ──そんな三上さんが撮影してることもあって、映像から文子さんのやさしい人柄がすごく伝わってきます。
 
 三上 文子さんのことを戦争を体験した から基地に反対しているんだって安直に理解できるものではないんです。だって、戦争を体験した人がみんなトラックの前に立つかって言ったら、そんなわけな いでしょ。なぜ彼女が80歳を過ぎてまであれだけ激しく闘うのかって考えると、それは人生の落とし前というか、自分が生き残ったことを肯定できないまま 85歳まで生きて来て、自分の人生は一体何だったのか、心の中で暴れ回るものを抱えているのではないかと思うんです。彼女を主人公にしたのは、単なる戦争 体験者という象徴からは見えてこない、ある一人の孤独な女性の生涯、それを描きたかったんです。
 
 ──見ているこちらも嬉しくなるのは、県知事選の勝利の後に文子さんが「生きてきてよかった」って言うシーンですね。
 
 三上 85歳になってようやく生きてきた意味をつかみ取るって、考えてみればすごい話ですよね。
 
 ──その文子さんが「私は沖縄のためだけにやっているんじゃない、日本が二度と戦争をしない優しい国になるために闘ってるんだ」と言ったのが強く印象に残りました。
 
 三上 まさに11月の県知事選の頃は、 全国から沖縄に応援が来ていて、この知事選に負けたら日本は終わりだってぐらい盛り上がってたじゃないですか。私はそんなに沖縄に何もかも覆い被せないで よって思ってましたが、沖縄の人はそれを引き受けたんです。日本の戦争を止められるとしたら沖縄からしかない、そこまで闘うなら上等だって。それが文子お ばあの言葉にもヒロジさんの言葉にも表れてます。沖縄の「島ぐるみ闘争」の振動を激震にして安倍政権にぶつけてやるというぐらいの勢いでした。だから『戦 場ぬ止み(いくさばぬとぅどぅみ)』という言葉を、日本の戦争の息の根を止める、それができるのは沖縄からなんだという誇りを込めて映画のタイトルにしま した。
 
 ──タイトルが決まったのはその頃なんですね。
 
 三上 そうです、知事選の前の10月ぐ らい。そろそろタイトルを決めないといけない時期になっていて、ゲート前フェンスに掲げられていた有銘政夫さんの琉歌「今年しむ月や 戦場ぬ止み 沖縄ぬ思い 世界に語ら」(今年の11月の県知事選は、私たちのこの戦いに終止符を打つ時だ その決意を日本中に、世界中に語ろうじゃないか)の一節から取りました。戦後70年の戦場(いくさば)を終わらせるんだという沖縄の思いが、今や日本の戦 争を止めることになる、このアイデアを映画の精神的な支柱にしようと。
 
 ──最初は聞き慣れない言葉ですが、この言葉が歌の一節で、この後に続く歌まで含めると非常に深みのあるタイトルだなと思いました。
 
 三上 呪文みたいな言葉ですよね。噛み 締めていくうちに言葉がその人のものになると思うんですよ。全然関係ないですが私、小学校の頃に「今帰仁(なきじん)」(註:沖縄県国頭郡にある今帰仁 村)って言葉がすごく好きで、ノートに意味もなく何度も書いてたんです。だから「戦場」という字を見たら普通に「いくさば」って読めちゃうようになったら いいな。

 ◆怒ったと思ったら笑ってるし、泣いてると思ったら踊ってる

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──ゲート前のリーダーである山城ヒロジさんもすごく魅力的に描かれてますね。

三上 もう私、ヒ ロジさんが大好きなんです。彼も誤解を受けやすい人で、とにかく喧嘩っ早いし口が悪いしで、反対派の中にもあんなチンピラと一緒にやりたくないって人はい ますね。特に7月頃はそういう批判もあった。でもヒロジさんって怒ったと思ったら笑ってるし、泣いてると思ったら踊ってるしで、みんなだんだんその魅力に やられていくんです(笑)。警察だって本当はヒロジさんのことが好きなんですよ。今ヒロジさんは闘病のため休養していますが、抗議現場を離れる日にはいつ も対立している警察が数人駆け寄ってきて「早く帰ってきて下さい」って握手されたらしいんです(笑)。私はその話を後で人から聞いてすごく感動して、すぐ ヒロジさんに電話したんです。そうしたらヒロジさんは「握手なんかしてないよ」って。それは彼らの立場を慮ってそう言ったと思うんですが、そういう所も含 めてヒロジさんってとことん優しいんですよね。
 
 ──抗議中、機動隊に対して「君たちを敵だとは思っていない。君たちを戦場に行かせたくないんだ」ってよく言ってますよね。敵は目の前の警官ではなく、その後ろにいる防衛局や政府だってことを常に意識しているというか。
 
 三上 そうですね。だから彼が本当に 怒った時はウチナー口(沖縄方言)になるんですが、それも同じ沖縄人への愛があるからで、ウチナーのおじさんがウチナーの青年に語りかける言葉だからこそ 通じるものがあるんですね。「お前ら島の青年なのに、本気でこの島を壊そうとしているのか」という言葉はウチナー口だからこそ届くと思うんです。
 
 ──何も知らない人があれは左翼の運動だとよく言いますが、そうじゃないことがよくわかります。
 
 三上 文子さんもヒロジさんも、あと渡具知さん親子や、由里船長、寿里ちゃん…、みんな島に生きる一人の人間としてやっている。現場に来ればすぐわかることなんですけど、来たこともない人がプロ市民の運動だと揶揄するんですね。
 
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 ◆賛成か反対かという単純な問題ではない

 ──映画には基地に対する様々な立場の人が出てきますが、地元の漁師の人達の複雑な立場がよく伝わってきました。ある漁師が「賛成なんかしてない。容認だ」と言ってるように、立場的に反対派ではないけど、心情的には反対派に共感している部分があるんだなあと。
 
 三上 やっぱり地元の漁師さんは既に補 償金をもらっているので今さら反対とは言えなくなっているんです。反対派の船の人に対しては、戦い方があまいとか、船の扱いがなってないとか、海をバカに するなとか、いろいろ悪口を言うんだけど、抗議のための船を出す船長さんの無謀さや勇気は、どこかで漁師の人達にも通ずるものがあるんです。ここまでして 海を守ろうとしている気持ちに対しては、やっぱり一定のリスペクトがありますよ。海が荒れそうな時は、今日はやめておいた方がいいってアドバイスしたり、 いつも気に掛けてますね。たとえ立場や主張が違っても繋がっている部分は大きいです。
 
 ──反対派の和成船長は地元の漁師さん(海人)をすごく擁護してましたね。「ここの海人はすごいんだぞ。海人を基地賛成か反対かで見ないでくれ」って。
 
 三上 彼はずっと大浦湾でツアーのガイ ドをやっていたので、地元の海人をすごくリスペクトしているんです。だから「お金をもらったから漁師はだめだ」って批判を聞くと、「そんなに簡単な問題 じゃない」と言って猛然と反発するんです。和成さんが地元の漁師を尊敬するのも、また海保(海上保安庁)に勤めているウチナーのおじさんを尊敬するのも沖 縄の儒教の伝統なんです。年上の人には丁寧に接する、おじいおばあを大事にする、それは徹底してますよね。そういう部分も見せたかった。
 
 ──米兵の社交場にもなっている辺野古の老舗パブ「ピンクダイヤモンド」のママも登場しますが、辺野古は基地の街として、沖縄の他のどの地域よりも基地との交流が盛んだということも描いてますね。
 
 三上 交流することが街の自警になって いるんですよ。アメリカ統治時代は捜査権も裁判権もなかった沖縄の人たちは自衛手段を講じるしかない。普段からお互いの顔が見える交流、ダンスパーティー とか相撲大会とか運動会とか、ことある毎に行事を一緒にやることで、アメリカ軍にも街のルールを守ってもらう。彼らは日米の合意事項は守らなくても辺野古 の地域ルールは守ってくれるんです。そうした住民の長年の努力を無視して、米軍と街の人の交流を馴れ合いだと批判するのは当たらないと思います。
 
 ──賛成か反対かという単純な問題ではないというのが分かります。Coccoさんがコメントで「ギロチンか電気イスか 苦渋の選択を迫られたとして それはいずれも“死”だ」と書いてますが、そんな選択を強いること自体が非常に残酷なことだと。
 
 三上 反対運動をしていない辺野古の人 を賛成派というのか容認派というのかは別として、街のリーダーはどこかで折り合いを付けなければならないじゃないですか。ずっと反対したままでは地域の行 政もできないですから。どこで折り合いをつけるか、その条件をどうするかをリーダーは決めなきゃいけない。そういう折り合いをつけながらずっと生きてきた 中で、自分の本音が言えなくなる、あるいは思考停止してしまう、そういう人達に対して、どうせお金が欲しいんだろうと決めつけるのは全く違うんです。反対 派を出すなら賛成派も出すという、いかにもテレビ的なつまらない中立報道で、安易に辺野古の住民は賛成していると報じてしまうことに私はすごく頭にきてい ます。海を埋められることは誰よりも嫌だと思っている人達が黙るしかないという状況を見て、それでもまだ、彼らはお金が欲しいからだと言えるのか。たとえ 反対運動をしてなくても、辺野古の人はみんな海を守りたいと思っているし、全部なしにできれば一番いいんだけど、日米合意から17年間、これだけ反対運動 をしても日米両政府は基地移設をやるって言い続けているわけで、地域が賛成反対で争って二分されるぐらいだったら、貰うものを貰って決着した方がいいとい う考えになるのは仕方ないと思います。

 ◆私達は本来敵じゃない。同じ海が大好きな者同士として違う時に出会いたかった

Ikusaba_Sub_F.jpg──カヌー隊が海保に徹底的に弾圧される場面を見るとこちらも怒りが込み上げてくるのですが、映画では激しく衝突しているシーン以外にも、海保の海猿と反対派の船長とのちょっとした交流も描かれていますね。

 三上 あれはたまたま女性に弱い船だっ たんですけどね(笑)。誰が船長かによって海保の対応も全然違っていて、本土から来た船長だと凄くきつく当たられますよ。由里船長とチコちゃんの組み合わ せだと海保もついついにやにやするんですね。(カヌー隊の)寿里ちゃんが海保に沈められたことがあり、今、寿里ちゃんは仕事の事情もあって現場に来てない んですが、海保が「なんで寿里ちゃんは来なくなったんだ。楽しみだったのに」って嘆いてるそうです。「お前らがあんなひどい事するからだろ!」って言って やりましたが(笑)。寿里ちゃんは性格もいいし本当にかわいいから敵味方に関係なくみんな大好きなんです。
 
 ──あの交流のシーンがあったことで、海保に対する怒りが少し収まるというか、どこかでほっとする所もありました。
 
 三上 海保との何気ない交流は一瞬なの で撮り逃すことが多いんですが、ああいう人間的な場面っていうのは実は結構たくさんあります。そういうシーンをどれだけ入れるかは難しいんですが、やっぱ り人間の可能性の部分、やさしさが捨てられないというか、対立していても人間的に触れ合った時に、ああこのままでいたいなってみんな思うわけですよ。私達 は本来敵じゃない。同じ海が大好きな者同士として違う時に出会いたかったねって話もできるんです。いくら権力側が彼らを対立させようとしても、人間の中に は相手を好きになりたいし、自分を好きになって欲しいという願望があるのが、私達の希望だと思います。対立させられていることの馬鹿馬鹿しさに気づく瞬間 ですよね。
 
 ──あと、映画全編にわたって、歌と踊りが随所に出てくるのが、沖縄ならではというか、やはり見ていてほっとしますね。
 
 三上 そうでしょ! この映画は「座り 込みミュージカル」を目指したんです(笑)。さっきまで怒ってたと思ったら次の瞬間には歌って踊ってる。もう劇団四季にミュージカルにして欲しい(笑)。 あんまり歌ってるんで、中には「俺は歌いに来たんじゃない」って怒り出す人もいるぐらいで。特に夏休みになると子供達が来るからずっと歌ってました。ヒロ ジさんは子供が来ることがすごく大事だと思っているんですね。映画の中にも、若いお母さんが赤ちゃんを抱いて来る場面を入れてますが、ヒロジさんは凄く喜 んで「あっちで見ててね~」って大歓迎するんです。決して「子供が来る所じゃない」とは言わない。
 
 ──あと若者が増えましたよね。東京のSASPL(特定秘密保護法に反対する学生有志の会)のメンバーが沖縄の学生と「ゆんたくるー」という団体を作って座り込みに参加したりとか。
 
 三上 SASPLの元山君が最初に辺野 古に来た時に、ヒロジさんのことを前時代的だって批判するから、私はカチンときて「いうのは簡単。じゃあ、あなただったらどうやるの?」って問い返した。 そのシーンは時間の都合でカットしましたが、彼はその後ちゃんと多くの若者達と運動を盛り上げましたよね。
 
 ──彼らのおかげもあって辺野古に抗議に行くことがカッコいいという雰囲気にもなったと思います。
 
 三上 それってすごく大事なことで、例 えばお祭りでも下の世代がカッコいいと思ってエイサーとかを見ていると、その村の祭りはあと十年二十年と続くんですよ。だから辺野古のエイサーもずっと続 くと思うし、辺野古の戦いを見て、こういう大人達ってカッコいいなって思う子供達がいることがすごく大事。これが次の世代に繋がっていくことだから。
 
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 ◆沖縄の人達が止めたいのは日本で再び息を吹き返そうとしている「戦争」そのもの

 ──先日、佐野元春さんが大浦湾を訪れてましたが、最近はミュージシャンの間でも辺野古に行ったり、言及したりする雰囲気が出てきてますね。
 
 三上 そうですね。高江の方は最初から たくさんのミュージシャンが支えていて原動力になってましたが、辺野古の方にはそれがなかったんです。ヒロジさんは高江の状況も知ってるから、辺野古の運 動にも歌や踊りや笑いが必要だと思ったんでしょうね。今後はもっともっとミュージシャンの人にも辺野古について発言して欲しいです。
 
 ──そういう意味では、Coccoさんがナレーションをしているのも大きいですね。Coccoさんとはお知り合いだったんですか?
 
 三上 彼女とは以前一緒にドキュメンタ リー番組を作ってるんです。2007年なんですが、その頃は誰も辺野古の問題に関心がなくて、どうやったら興味を持ってもらえるんだろうと思って、「人魚 の棲む海~ジュゴンと生きる沖縄の人々~」という、地元の人々が撮影隊を作ってジュゴンを撮影するというドキュメンタリー番組を作ったんです。その番組の ナレーションをCoccoさんがやってくれたんですが、その時の撮影隊が撮った2匹のジュゴンの姿を見て、Coccoさんは「ジュゴンの見える丘」という 曲を作ったんですね。
 
 ──キャッチコピーに「伝えきれない沖縄」とありますが、中でも監督が一番伝えたいことは何でしょう?
 
 三上 うーん、それをこの2時間9分に まとめたってことなので、映画を観てもらうしかないんですが…。1つ言いたいのは、あなたが知っている沖縄の基地問題は虚像かもしれないということ。この 映画は、沖縄の基地負担を減らして欲しいなどという生やさしいものを描いているのではなく、いま沖縄が日本の運命を決める大きな岐路に立っていて、沖縄の 人達が止めたいのは日本で再び息を吹き返そうとしている「戦争」そのものなんです。だから「基地問題を考えたいけどちょっと距離があってね」とか「沖縄の 人に押しつけて申し訳ないんだけど」とか、そういうレベルでこの問題を捉えている人はまず観に来て欲しい。全然そういうんじゃないから。
 
 ──これはあなたの問題ですよってこと?
 
 三上 「あなたの問題だ」っていうのも 安っぽい言い方で、それだと道徳の授業で説教されてるみたいじゃないですか。今あなたの大事なものが奪われようとしている。その傷口が一番露わになってい るのが沖縄だから、沖縄に来るとこの国がどこまで病んでしまっているかがよく分かる。分かるはずだと思うんです。この国に生きる人みんなが平和に暮らすた めに、沖縄の人が今戦っているという姿をぜひ観て欲しいです。
 
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(三上智恵監督)

  元稿:Roof top 主要ニュース エンターテイメント・メディア 【インタビュー&コラム】  2015年06月10日    09:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

 

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