乾龍の『漂流日本の羅針盤』・【最新ニュースから見え隠れする闇】:

 在野の政治研究家乾龍が『漂流日本の闇』を斬る! 日々の政治・経済等の時事ニュースの深層を探る。

【その声は誰の声?】:自民党の憲法改正草案を読み解く(上)

2016-12-04 00:03:05 | 【憲法、擁護・改正、第9条問題他】:

【その声は誰の声?】:自民党の憲法改正草案を読み解く(上)

 乾龍の『漂流日本の羅針盤』・【最新ニュースから見え隠れする闇】:【その声は誰の声?】:自民党の憲法改正草案を読み解く(上)

 自民党の憲法改正草案には、現憲法には存在しない規定が多数盛り込まれている。国旗国歌尊重義務や家族に関する規定、「公益」「公の秩序」といった語 句…。これらをどう読み解けばいいのだろうか。憲法問題を考えるシリーズ「その声は誰の声?」は2回にわたって、この草案の持つ意味を考える。初回は、高 知県立大学の小林直三教授(42)に「基本的人権」に対する制約、新設の「家族条項」などの問題点を語ってもらった。

「自民党改憲草案は基本的人権を弱める恐れがある」と指摘する小林直三教授(高知市の県公立大永国寺キャンパス)

「自民党改憲草案は基本的人権を弱める恐れがある」と指摘する小林直三教授(高知市の県公立大永国寺キャンパス)


 ■基本的人権■「公益」「公の秩序」登場 表現の自由脅かす


 自民党改憲草案の12条(国民の責務)や21条(表現の自由)などには、「公益」「公の秩序」が新たに何カ所か登場する。基本的人権に関わる箇所だ。現憲法にこの語句はない。自民党が2012年に公表した「日本国憲法改正草案Q&A」では、こう説明されている。

                                 ◇   ◇ 


  「公の秩序」とは「社会秩序」のことであり、平穏な社会生活のことを意味します。個人が人権を主張する場合に、人々の社会生活に迷惑をかけてはならないの は、当然のことです。そのことをより明示的に規定しただけであり、これにより人権が大きく制約されるものではありません。

 この規定をもって、公益や公の秩序を害する直接的な行動およびそれを目的とした結社以外の表現の自由が制限されるわけではありません。


 ■政府の都合で制限も


 【Q】  現憲法は基本的人権を最大限に保障しています。制約は「公共の福祉に反しない限り」(22条など)のみ。ところが、改憲草案は現憲法には存在しない「公 の秩序」「公益」を条文に盛り込んでいる。それも基本的人権に関わりのある箇所です。これをどう考えればいいのでしょうか。


 【小林】 現憲法は「経済的自由」において「公共の福祉」による制限を認めています。移転や居住、職業選択の自由を認めた22条、財産権を定めた29条などがそう。

 片や、21条の「表現の自由」には制約が一切付いていません。

 これに対し、改憲草案は表現の自由に関する条項にも「公益及び公の秩序」による制限を加えました。

 これは問題です。

 表現の自由の保障は、民主主義社会の基盤。自由で多様な言論が保障されてこそ、国民は正確な判断ができるからです。

 例えば、有事などの際、政府に都合の悪い情報を知ったメディアに対し、「それを流布すると公益上の問題が起きる」として、報道を制限することも考えられます。

 「公益及び公の秩序」によって、基本的人権が弱くなる恐れも高くなる。

 日本は同調圧力が強い。多数者で形成される公の秩序が強く押し出されると、人権が不当に制約される可能性があります。

 自分と違う人たち、つまりマイノリティー(少数派)といかに仲良く暮らしていくか。そのためには、マイノリティーであってもその人の権利や利益を尊重し、意見を自由に言える社会をつくることが大事なわけです。

 現憲法の「公共の福祉」をなぜ変えるのか。それは従来と違ったことをやりたい、こうした自由を制限したいということの表れではないでしょうか。

年頭の記者会見で、今夏の参院選の争点として憲法改正を掲げる考えを表明する安倍晋三首相(1月4日、首相官邸)

 年頭の記者会見で、今夏の参院選の争点として憲法改正を掲げる考えを表明する安倍晋三首相(1月4日、首相官邸)


 ■家族に関する規定■かたち決めるのは個人  


 改憲草案には新しく「家族」も盛り込まれた。その狙いを「Q&A」は次のように言う。

                          ◇   ◇ 


 家族は、社会の極めて重要な存在ですが、昨今、家族の絆が薄くなっていると言われています。党内議論では「親子の扶養義務についても明文の規定を置くべきである」との意見もありましたが、それは基本的に法律事項であることから採用しませんでした。

 ■社会保障義務を転嫁?


 【Q】 家族のかたちは時代とともに変遷します。現代でも多様な形がある。あえて憲法で規定する意味があるのでしょうか。

 【小林】 家族条項をわざわざ憲法に入れる必要はないでしょう。法律や道徳のレベルの話です。

 家族の絆が薄れるなどの問題は、これまで憲法に規定がなかったから起きてきたわけでもないし、憲法に入れたからと言って、解決する問題でもありません。

 憲法改正草案には、国が負担すべき社会保障を家族の義務に転嫁したい、という意図がうかがわれます。

 家族の範囲にしても、例えば、扶養義務のある家族はどこが境界でしょうか。家族の在り方はますます多様化しています。

 【Q】 最近も大阪市の中学校校長が、女性はキャリアを積むより子どもを2人以上産むべきだ、と全校集会で話し、波紋を呼びました。安倍晋三首相も昨年、国会で同性婚に慎重な答弁をしています。

 【小林】 米国では、1980年代後半に同性愛が問題になった際、「同性愛的性行為」を犯罪として取り締まることが連邦最高裁で合憲になりました。異性愛者の関係で築かれている社会が害される、と。子どもに悪い影響が出る、と。

 その後、同性愛への理解が深まり、「同性愛的性行為」の取り締まりも連邦最高裁で違憲と判断された。州で同性婚を認めるようになり、2013年には連邦最高裁が、同性婚カップルの権利を制限する連邦法を違憲としました。

 家族のかたちは本来、個人的なもの。自分にとっての自然なかたちの家族は、他の人にとってのそれと異なります。

 それなのに、公権力が家族のかたちを規定するのはおかしい。その根拠を憲法に明記するのも明らかに変です。家族条項が仮に新設されたら、それに基づき、「国」は在るべき家族像をどう示すのか。それも気掛かりです。

 ■外国人の参政権■グローバル化を踏まえ


 外国人の参政権は認めない―。憲法改正草案は「日本国籍」保持者のみに政治参加を認めると明記した。「Q&A」はその意味をこう説く。

                                    ◇  ◇ 

  地方自治はわが国の統治機構の不可欠の要素を成し、その在り方が国民生活に大きな影響を及ぼす可能性があることを踏まえると、国政と同様に地方政治の方向 性も主権者である国民が決めるべきです。外国人も税金を払っていることを理由に地方参政権を与えるべきとの意見もありますが、税金はあくまでも行政サービ スの財源を賄うためのもので、何らかの権利を得るための対価として支払うものでなく、直接的な理由にはなりません。

 ■意見の吸い上げ大事

 【Q】 戦前の歴史的な経緯から日本に住むことになった在日の韓国人、朝鮮人をはじめ、日本には多くの外国人が住んでいます。そういったことから、地方参政権はずいぶん前から議論の対象です。


 【小林】 外国人の地方選挙権については、学者の間で「許容説」が有力ですが、私自身は、外国人に選挙権があることを当然のこととは思っていません。

 ただし、今はグローバル化が急速に進んでいます。

 例えば、高知県などが外国企業の誘致を政策として検討するとしましょう。

 その場合、外国の人にとって住みやすい場所が誘致に適している。住みやすい場所にするためには、外国人の意見を聞き、吸い上げることが非常に大事。神奈川県や川崎市は実際、外国人の代表に集まってもらい、意見を吸い上げています。

 外国人の意見を地方政治に反映させていく仕組みには、さまざまな形があると思います。フィンランドやスウェーデンなどは、2、3年定住すると、地方参政権を認めています。

 話は少し変わりますが、この議論では「外国人に選挙権を与えると(日本を)乗っ取られる」と懸念する人もいます。

 今の出入国管理制度では、日本政府が認めた人しか在留できません。日本に好ましくない人は、そもそも入国できない。それを踏まえると、そういった懸念が現実になる余地があるのかどうか。冷静な議論が必要です。

 ■国旗国歌の尊重義務■全国民に強制広げる


 「君が代」「日の丸」に関しては、賛否の議論が今も続く。憲法改正草案はそれらの尊重を「国民の義務」とした。「Q&A」は―。

                                 ◇   ◇ 


 国旗・国歌は国家を表象的に示すいわば「シンボル」であり、国旗・国歌をめぐって教育現場で混乱が起きていることを踏まえ、明文の規定を置くことにしました。

 ■「抵抗感」も尊重を

 【Q】 2016年春、岐阜大学などが「君が代」「日の丸」を扱わず、議論を呼びました。大阪府では公立学校の式典で、教員が「君が代」をちゃんと歌っているか、口パクじゃないかをチェックし、問題になったこともあります。

 【小林】 国旗国歌法が制定された1999年、国会の法案審議で政府は「国民に(国歌斉唱などを)強制しない」と言いました。当時の小渕恵三首相も、同様の答弁を行っています。

 しかしながら、その後、公務員については事実上強制してきました。

 憲法改正草案では、その義務が国民全体に広がる。

 祖父母らの戦争体験などによって(国歌や国旗に)抵抗感、嫌悪感を持つ人もいるでしょう。そうした人たちの気持ちも尊重されるべきです。

 例えば、そんな人たちにも、参加しないといけない式典がある。学校の入学式などはまさにそれ。それなのに、国歌斉唱を強制していいのでしょうか。

 憲法にこの規定が盛り込まれると、式典で国旗掲揚の場面で座ったままだと罰せられる恐れもあります。教育現場では、国旗国歌の尊重義務を教え込むことになるでしょう。拒否する児童、生徒をマイナス評価するようになるかもしれません。

 ■下級裁判所の裁判官■法律で任期決定 行政が司法支配の恐れ


 憲法改正草案は下級裁判所の裁判官についても、大きな変更を加える。内容は以下の通りだ。


                                  ◇  ◇ 


 現行憲法も改正草案も、裁判官を「内閣が任命」は変わらない。最大の変更点はその任期だ。現行憲法は「10年とし、再任されることができる」と明記しているが、草案80条は「10年」を消し、「法律の定める任期」とした。

 ■10年保障崩れる


 【Q】 下級裁判所の裁判官の任期。地味な変更に見えますが、大きな問題があると指摘されていますね。

 【小林】 「10年」から「法律の定める」へ。これが現実になると、極端な話、政治家が法律で任期を1年や2年にしても構わないわけです。

 つまり、司法の独立を支える「裁判官の身分保障」を弱めることを意味しています。時の為政者が「政権側の意向と違う」と考え、自分たちにとって都合の悪い判事を切っていくことになりかねません。

 安倍政権は、日銀総裁や内閣法制局長官を代えました。あれと同じように、政権の意向が簡単に司法を左右することにつながる。

 今は行政、特に内閣に権限が集中しています。その中で、行政権に対する司法権、司法の独立まで危うくなるとどうなるか。(三権分立であるはずの)権力が一層、行政・内閣に集中していく恐れがある。

 裁判官の身分をしっかり保障し、司法の独立をちゃんと守ることが大事です。

 元稿:高知新聞社 主要ニュース 政治 【政策・憲法改正論議】  2016年03月28日  13:05:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

『政治』 ジャンルのランキング
コメント (1)   この記事についてブログを書く
この記事をはてなブックマークに追加
« 【トランプ次期大統領】:台... | トップ | 【その声は誰の声?】:自民... »
最近の画像もっと見る

1 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (Unknown)
2016-10-11 18:35:53
日本人なら、自民党改憲草案の意味分かるんだけど、残念だなー。 

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。

数字4桁を入力し、投稿ボタンを押してください。

あわせて読む

トラックバック

この記事のトラックバック  Ping-URL
ブログ作成者から承認されるまでトラックバックは反映されません。
  • 30日以上前の記事に対するトラックバックは受け取らないよう設定されております。
  • 送信元の記事内容が半角英数のみのトラックバックは受け取らないよう設定されております。
  • このブログへのリンクがない記事からのトラックバックは受け取らないよう設定されております。
  • ※ブログ管理者のみ、編集画面で設定の変更が可能です。