乾龍の『漂流日本の羅針盤』・【最新ニュースから見え隠れする闇】:

 在野の政治研究家乾龍が『漂流日本の闇』を斬る! 日々の政治・経済等の時事ニュースの深層を探る。

【ニュース複眼】:消費 統計に現れぬ実態

2016-10-13 03:30:15 | 産業・経済・企業・ビジネスニュース

【ニュース複眼】:消費 統計に現れぬ実態

 乾龍の『漂流日本の羅針盤』・【最新ニュースから見え隠れする闇】:【ニュース複眼】:消費 統計に現れぬ実態

 消費の実態がつかめない。百貨店の閉鎖が相次ぐなど高額消費の不振が目立つが、低価格商品は人気でレジャーなど「コト消費」も好調。ネット消費も伸びが続く。統計や企業業績で見ると冷え込んでいる消費の裏で何が起きているのか。

■低価格は決め手にならず しまむら社長 野中正人氏

 足元の消費の地合いを言うなら「こりゃ駄目だな」に尽きる。「景気は天気」と言われるが、まさに8月半ばから異常な天候に翻弄された。相次ぐ台風上陸や東日本の長雨などで秋物衣料の商機を逸した。9月の既存店売上高は前年比14%減。10月も悪い。秋の訪れが昨年よりも1カ月遅い。

   ※(写真):野中正人氏

 売れないから店頭在庫が膨らみ、売り上げを確保しようと値引き販売に走る。消費者はそれほど低価格志向ではない。小売り側の事情でデフレが進んでいるのが実情だ。

 これは当社に限らない。ショッピングセンターに入るアパレル専門店も同じだ。みなが下げるからその価格帯が新しい相場観になってしまう。値下げを踏みとどまっていると割高感が増す。いい循環ではない。

 昨年と同じ品質、価値のままの商品を値上げするのは難しい。消費者が従来品より品質が3割程度上がったと思う商品でも価格は1、2割上げるのがせいぜいだろう。昨年大ヒットした「裏地あったかパンツ」は裏地の糸を細くしてより肌触りをよくしたが、昨年と同じ価格(3900円)にした。価値は上げられたが、消費者がどう評価するか見通せなかったからだ。

 ただ可能性はある。2300円の価格帯の商品を外し、新しい2900円の商品を陳列すると手に取ってもらえることがある。我々が勝手に2900円で売れないと思い込んでいたが、「もっといい商品」を望む消費者や、新たな顧客層をつかむケースがある。工夫次第で市場は創造できる。

 その意味では消費全体が冷え込んでいるとも言い切れない。天候不順で生鮮野菜価格が高騰し、支出が食品に回った面もある。最近は秋らしい季節になり、北海道や東北の店舗では売り上げが上向きつつある。

 アパレルの流行も変化が見える。昨年前半まではベーシックな商品が売れ筋だったが、ここ一年はファッション性のあるトレンドが目立つ。たんすにない商品なら消費者は購入する。流行遅れが目に見えると新しい商品に袖を通すものだ。

 アベノミクスは消費にはいい効果があった。株価も上向き、消費に対する罪悪感も薄れた。ただ、それは所得が上がり続けるという前提に立っていた。所得が上がる期待が薄れた今は効果は限られる。消費を考えれば、日本は欧米型の成果主義より、なだらかでも賃金上昇が続くほうがいい。(聞き手は編集委員 田中陽)

 ■のなか・まさと 84年しまむら入社、05年社長。最近は共同出店している食品スーパーの価格もチェックしている。56歳。

■日用品の購入もスマホで アスクル社長兼CEO 岩田彰一郎氏

 ※(写真):岩田彰一郎氏

 今の消費構造の変化はテクノロジーの進化を抜きに語れない。スマートフォン(スマホ)の普及で金融とIT(情報技術)を融合したフィンテックをはじめ、あらゆる分野で産業革命とも言うべき変化が起きる。

 我々が手掛けるeコマースもそうだ。パソコンで検索し、あらゆる物を安く買うのが第1世代。今の第2世代は通勤途中や空き時間などスマホを使って欲しい物をいつでも手に入れる。

 買う物にも変化が見られる。eコマース全体は伸びているが、ファッションなど一部商品や店舗では陰りも見える。急増しているのが日用品だ。飲料水や洗剤とか重い物、かさばる物からネットに流れている。かつては総合スーパー中心だったが、日用品は今やドラッグストアで4割近く売れる。ネット消費は1%以下だが2割には行くだろう。

 日用品購入がネットに移っている理由は価格ではなく、時間だ。働く女性の行動を調べたが、忙しくてぱんぱん。子育て中はもっと大変だ。限られた時間をいかに有効に使うか。これが消費行動に直結する。

 例えば、土曜日に量販店にまとめ買いに出ると午前中がつぶれちゃう。ならネットで買って、その分、家族で公園でお弁当食べようとか、ママ友で集まろうとか自分の時間を捻出する。

 当然、商品の作り方、売り方も変わる。テレビなどマス広告で大量消費を促す時代ではない。かといって多様化したニーズに合わせて新商品をいろいろ出しても、限られたコンビニの棚には置いてもらえない。その分、今後はネットが重要になる。ネットなら費用をかけずに十分採算が取れる市場が存在する。スモールでも集めればマスになる。

 例えば、キリンビバレッジの麦茶風飲料「ムーギー」。ブランド名も機能の説明も目立たせず、インテリアにも使えるかわいいパッケージを16種類そろえた。消費者と直接接点を持つ当社が共同開発したものだ。ネットのみで販売したところ口コミで人気に火がついた。今後はメーカー主導のナショナルブランドでも、流通主導のプライベートブランドでもない、消費者と共に創るコンシューマーブランドが重要になる。

 消費者は安さのためだけには時間や労力は費やさない。琴線を理解するため購買履歴などのビッグデータを駆使すれば、まだまだ消費は掘り起こせるのではないか。(聞き手は諸富聡)

 ■いわた・しょういちろう 86年プラス入社。97年アスクル社長。12年にヤフーから出資を受け、消費者向けにもネット販売を展開。66歳。

 ■もはや主流は「コト消費」 クレディセゾン営業企画部アドバイザリースタッフ 立沢芳男氏

 ※(写真):立沢芳男氏

 消費を物販が主体の小売業で見るべき時代ではもうない。クレジットカード決済で見る限り、もはや「モノ消費」より「コト消費」が逆転している。業界全体で2013年に初めてサービスが物販を上回った。クレディセゾンはその前年に逆転現象が起きていた。

 消費は低迷しているとは思わない。お金を使う場所が変わっただけだ。例えば美術館。著名な展示だと長蛇の列ができる。入場料だけでなく、グッズ販売や飲食施設もある。今、開店直前の百貨店に行列ができるだろうか。ターミナル駅もただ乗降するだけでなく駅ナカや駅ビルで買い物を楽しむ空間に変わった。

 消費者の節約志向という言葉もあるが節約の定義を見直すべきだ。これまではお金を使わないことが節約だったが、最近は時間を有効に使うことが「節約」の意味になった。買い物に行く時間を惜しみ、ネット通販で商品やサービスを購入する。ネットなどで商品情報を集め、店員より詳しい消費者も多い。

 家計調査を見ると、最近の消費支出額はバブル期の1980年代後半とほぼ同じ水準だ。にもかかわらず消費不振と感じるのは、支出内容がモノからコト(サービス)に大きく変わったからだ。本人の感覚も変わる。モノを買ったら実感があるが、サービスはその瞬間に消費されるからなかなか実感として残らない。

 高度成長期の大衆消費社会では衣・食・住の充実が優先されたが、今は自分磨きに向かう。習い事やいい仕事に就くためには支出を惜しまない。女性のエステ利用もすごい伸びている。自分で自由に使える時間を捻出するための消費も目立つ。高齢化による医療費の急増も最近の特徴だろう。

 消費の実態を知るには時間がかかる。本来、企業は決算や営業数字の意味をじっくり分析し、対応を考えるべきだが、四半期決算や月次の営業データ開示に追われている。株主も経営陣もその数字に一喜一憂しすぎだ。だから適切な対策がとれずに経営が混乱する。

 少子高齢社会は消費に大きな変化を投げかけている。世帯数はまだ増えており消費は細分化する。共働き世帯の増加は家事代行など新たなサービス支出を生む。日本は今、マイナス思考の語り部が多すぎる。スマホやネットの依存症、縮み志向、未婚者激増などだ。この言葉の中に新たな消費があると考えた方がいい。(聞き手は田中陽)

 ■たつざわ・よしお 西武百貨店勤務を経てパルコに入社。パルコのトレンド情報誌「アクロス」の初代編集長。消費動向に詳しい。72歳。

■賃上げ不十分で防衛意識 東京大学大学院教授 渡辺努氏

 ※(写真):渡辺努氏

 今の消費は自律的ではない。アベノミクスの異次元緩和でもたらされたもので、何もしなければすぐにでも崩れやすい。

 全国のスーパー、約800店以上の販売情報をもとに算出する「日経ナウキャスト日次物価指数」(7日移動平均)を見ると、昨年の今ごろには前年比プラス1.5%となり、政府・日銀の目指す「物価2%上昇」のいい線までいった。消費者も昨春に相次いだ食品値上げを受け入れた。

 だが、長続きはしなかった。賃金が思ったほど増えず、消費者は値上げに悲鳴を上げたのだ。スーパーでは昨秋ごろから特売が増え値下げ幅が大きくなった。日次物価指数も下落が進み、8月中旬に1年4カ月ぶりにマイナスを付け、最近はその基調が定着した。

 理由の一つにはインバウンド消費一服の余波がある。越境EC(電子商取引)もあり、訪日客によるドラッグストアでの化粧品や日用雑貨消費が減り、再び低価格で消費者をひき付けようとしている。対抗上、スーパーのセールも増えた。

 ビール類や飲料の値下げも止まらない。商品が同質化し、価格競争に陥っている。市場規模に比べて企業数が多く、過当競争の状態といえる。

 データを見ると消費者は生活の質を落としているわけではない。これまで購入していた商品が安い時にタイミングよく買っていて、安い商品にシフトしていない。それは昨秋以降の主要商品の価格改定の頻度の高さなどからうかがえる。

 総務省の家計調査が消費の実態を把握し切れていないとの指摘がある。だが若い人が多く使う「Tポイント」のデータも家計調査と同様で消費はやはり悪い。

 消費が不振な背景には賃上げが不十分なことがある。政府・日銀は賃上げにもっと関与すべきだ。さらに政府がコントロールできる国立大学授業料や公共料金などサービス料金を引き上げ、物価上昇への本気度を示すことが必要だ。先行き物価が上がりそうだと感じられれば、消費も動く。

 民間は長く続いたデフレ経済の中で値上げをするという思考になりにくい。コスト削減に目が行き、コストを掛けた商品開発、イノベーションの取り組みが弱い。それが結果的に潜在成長力に悪影響を及ぼし、デフレを再生産している。発想を転換すべきだろう。(聞き手は田中陽)

 ■わたなべ・つとむ POSデータを使った物価指数など開発。多方面でデータが使われ始めている。専門はマクロ経済学。56歳。

〈アンカー〉横並びから脱し真のニーズ探れ

 消費の現場が小売店だけでなくネット通販やサービス分野に広がる中では、従来型の個人消費を巡る議論は通用しなくなっている。にもかかわらず、過去の延長線上で消費の実態を把握しようとするから見誤る。

 経営者は消費不振を言い訳にしていないか。目を凝らせば、低成長時代でもしたたかに稼ぐ事業者はいる。横並びの価格戦略と決別し、ネットやビッグデータも駆使しながら、いかに消費者ニーズを掘り起こすかに知恵を総動員すべきだ。

 デフレに勝者はいない。政府は企業が持続的に賃金を上げられる環境を整備するなど、消費拡大に向けたテコ入れ策を模索すべきだろう。(田中陽)

 元稿:日本経済新聞社 朝刊 主要ニュース 特集 【オピニオン】  2016年10月13日  03:30:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

ジャンル:
経済
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