乾龍の『漂流日本の羅針盤』・【最新ニュースから見え隠れする闇】:

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【わかりやすい時事解説】:Brexitと「トランプ大統領」をつなぐ線

2016-11-06 22:05:10 | 国際・欧州・中東・アフリカ・北米・南米

【わかりやすい時事解説】:Brexitと「トランプ大統領」をつなぐ線  ■編集委員 小平龍四郎

 乾龍の『漂流日本の羅針盤』・【最新ニュースから見え隠れする闇】:【わかりやすい時事解説】:Brexitと「トランプ大統領」をつなぐ線  

 ■編集委員 小平龍四郎

 米大統領選が迫ってきました。新たなメール疑惑が発覚した民主党のクリントン候補が世論調査で共和党のトランプ候補に猛追されており、強い不透明感のなかで8日の投票を迎えます。今年6月に英国が国民投票で欧州連合(EU)からの離脱、Brexitを決めた時のような混乱を予想する向きもいます。世界最大の超大国のかじ取りを任される人物は誰か。全世界の市場参加者は成り行きをじっと見守っています。 

 ■EU離脱も根源には「エリート不信」

 今回の米大統領選は、2人の候補のスキャンダルばかりが注目され政策の議論が乏しかった、という評価が圧倒的でした。トランプ氏は女性への過去の侮蔑的な発言を暴露されて窮地に陥り、クリントン氏も公務で私用メールを使ったことについて米連邦捜査局(FBI)から捜査を受けています。米メディアは「史上最も人気のない候補同士の大統領選」と書き立て、どちらか一方の候補を支持する理由を世論調査が調べたところ「対立候補が信頼できないから」との回答が最も多かったというありさまです。

お互いの攻撃に終始した米大統領選は
どちらの好感度もまれに見る低さだった(テレビ討論会で舌戦を繰り広げた両候補=AP)

 お互いの攻撃に終始した米大統領選はどちらの好感度もまれに見る低さだった(テレビ討論会で舌戦を繰り広げた両候補=AP)

 クリントン、トランプ両氏について「ポジティブな評価をしている」と答えた人の割合から「ネガティブな評価をしている」とする人の割合を差し引いた「好感度」はどちらもマイナスとなり、過去の大統領選で敗れたいずれの候補をも下回る不人気ぶりだったといいます。

 おおまかに分類するとクリントン氏の支持者は女性と若者、さらにヒスパニックや黒人など非白人が多く、相対的に高学歴の人が多いといいます。トランプ氏の支持者は労働者階級の中高年の白人が多いとされています。数々の問題発言にもかかわらずトランプ氏が最後までクリントン氏と接戦をくり広げてきたのは、グローバル化のなかで雇用不安などにさらされるホワイト・ワーキング・クラスの鬱積した気持ちを代弁してきたからです。

 米調査会社ピュー・リサーチ・センターの国際経済世論調査部ディレクター、ブルース・ストーク氏は、大統領選の結果にかかわらず、トランプ氏のような人物が大衆に支持される現象は今後も続くと見ています。「政府や専門家、エリート、リーダー層が広く信頼を失っているから」というのが理由です。こうした権威への根強い不信感は世界各地に広がっていますが、特に著しいのが米国の年配の白人なのだそうです。(日本記者クラブの講演より)

 思い起こせば英国の有権者が国民投票でEU離脱を選んだのも、移民の増加で雇用や秩序が脅かされたという経済的な理由に加え、本源的にはEUを牛耳る官僚やエリート層への不信感が影響を与えたとされます。権威不信に凝り固まった大衆の判断が国の針路を決めかねないという点で、「トランプ大統領」を一笑に付すわけにはいきません。金融市場の参加者が警戒心を解くことができないのも、そこにBrexitと同じ構図を見るからです。

英国民をEU離脱に突き動かしたものも“権威への不信”だった(EU離脱が決まり喜ぶ離脱派)

  英国民をEU離脱に突き動かしたものも“権威への不信”だった(EU離脱が決まり喜ぶ離脱派)

 ■どちらが勝ってもドル高是正

 みずほ総合研究所は10月24日に「米国大統領選挙の展望~予測可能なクリントン政権、予測不可能なトランプ~」と題する緊急リポートを発表しました。そこでは、どちらの候補が勝利するかによって、金融市場にどんな影響が出るかが分析されています。

金融市場への影響は?
  クリントン大統領 トランプ大統領
為替
相場
リスクオンで短期的に円安 リスクオフで円高
新興国
市場
短期的に通貨高圧力 メキシコペソが下落
米国
株式
金融などを除いて株高 短期的にショック安
米長期
金利
緩やかな上昇 短期的に低下
社債 スプレッド縮小傾向 スプレッド拡大

みずほ総合研究所「米国大統領選挙の展望」(2016.10.24)より

 少し紹介してみます。単純に言うとクリントン候補が勝てば市場はドルや株式などが買われる「リスクオン」、トランプ候補の勝利なら円と国債が買われる「リスクオフ」の状態となります。ただしこれは短期の反応で、時間の経過とともに別の反応も出てきます。例えば、両候補とも環太平洋経済連携協定(TPP)に反対するなど保護主義的なスタンスが強いため、どちらが勝っても中期的にはドル高是正の圧力がかかるとされます。これは円高になりやすくなるということですから、日本企業の業績にマイナスで日本株の上値も重くなりかねません。

 逆にドル高是正は米国の大企業に総じて良い影響を与えますから、米国株が買われる材料になるかもしれません。ただし、クリントン候補は金融規制を強化する意向を表明しているため、同氏が勝った場合は金融株に逆風が吹く可能性があります。

 また、どちらの候補も大きな政府を志向しているため、インフラ投資の増加などによる財政悪化の懸念が高まり、金利上昇の圧力が増すと予想されます。 

 ■リスクは欧州から米、再び欧州へ

 今年前半に欧州で噴出した政治リスクが米国に飛び火しかねない――。グローバル金融市場の不安はこんなところにあります。背景に横たわる権威不信は、世界経済の成長が鈍化し社会のいたるところで摩擦が生じやすくなっていることと表裏の関係です。

 米大統領選が終わると、今度は12月4日にイタリアでレンツィ首相の進退がかかった国民投票が実施されます。議会上院の権限を弱める憲法改正案の是非が問われるのですが、EU懐疑派の野党「5つ星運動」は反対を掲げ勢いを増しています。

 さらに2017年は大衆迎合的な政党の伸長が目立つ大陸欧州で重要な選挙が相次ぎます。政治の振り子は米国市場から再び欧州市場へと、大きく動くかもしれません。

小平龍四郎(こだいら・りゅうしろう) 88年日本経済新聞社入社。証券会社・市場、企業財務などを担当。2000~04年欧州総局(ロンドン)で金融分野を取材。現在、編集局編集委員兼論説委員。

小平龍四郎(こだいら・りゅうしろう) 88年日本経済新聞社入社。証券会社・市場、企業財務などを担当。2000~04年欧州総局(ロンドン)で金融分野を取材。現在、編集局編集委員兼論説委員。

 元稿:日本経済新聞社 朝刊 主要ニュース ビジネスリーダー 【ニュース解説】  2016年11月06日  03:30:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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