乾龍の『漂流日本の羅針盤』・【最新ニュースから見え隠れする闇】:

 在野の政治研究家乾龍が『漂流日本の闇』を斬る! 日々の政治・経済等の時事ニュースの深層を探る。

【トランプの米国】:日本総合研究所会長・寺島実郎さんに聞く

2016-11-19 06:14:50 | 産業・経済・企業・ビジネスニュース

【トランプの米国】:日本総合研究所会長・寺島実郎さんに聞く

 乾龍の『漂流日本の羅針盤』・【最新ニュースから見え隠れする闇】:【トランプの米国】:日本総合研究所会長・寺島実郎さんに聞く

 ◆自国第一の誘惑断て

 「米国が第一」という主義の下、過激な政策案や発言でこれまでの世界の価値観を揺るがす次期米大統領のドナルド・トランプ氏(70)。安倍晋三首相が十七日夕(日本時間十八日午前)、ニューヨークで初めて会談する。異端のリーダーの登場で米国はどう変わるのか、日本が取るべき対応策は。日本総合研究所の寺島実郎会長に聞いた。 (聞き手・白山泉)

日本総合研究所会長・寺島実郎さん=川上智世撮影

写真

 トランプ氏はどんな人物ですか。

 「米国駐在時に二度彼と会ったことがあり、論稿も書いた。彼の人生哲学を凝縮するキーワードはディール(取引)だ。相手が一瞬たじろぐ条件をぶつけ腰が引けたところで落としどころに持っていく。不動産ビジネスの神髄みたいなところで生きてきた男だ。西部劇のヒーローのように悪玉の首を取ってくるという冷戦時代型の発想で、今の世界秩序では通用し難いだろう」

 でも市場では期待感で株価が上がっています。

 「問題の本質を測りかねている現象だ。彼を勝たせたエネルギーは白人貧困層のいらだちだ。不満を解消するには貧困と格差の是正に取り組まねばならないが、ウォール街の金融機関トップの政権入りが浮上するように金融規制を緩めマネーゲームで経済を浮上させる方向に傾いている。これを期待してか、彼を嫌っていたはずの『マーケット』と称する人たちが根拠なくはしゃいでいる。その危うさを見抜くことが重要だ。いずれ、米国人は気づくだろう。彼は金融の肥大化に歯止めをかけるのではなく、加速させる価値観に立っている人だということに」

 日本の道は。

 「第一次大戦後に国際連盟の創設を主導し、第二次大戦後は国際連合や世界銀行、国際通貨基金(IMF)の構想を出し世界をリードしてきたのは米国だ。その国が自国利害中心主義に戻ろうとしている。中国やロシアの掲げる理念も自国中心主義的だ。そういう時だけに日本はナショナリズムに回帰する誘惑を断ち切らないといけない」

 「マネーゲームでなく、ものづくり国家としての蓄積が今の日本の繁栄を支えている。必要なのは平和に徹した技術を持つ成熟した民主国家として、アジア諸国との関係を構築すること。米国への過剰な期待と依存を脱し、主体的に東アジアに安定と安全の基盤をつくっていく発想が必要だ」

 ◆格差・貧困生む金融肥大

 米国国民がトランプ氏を勝たせた要因は何でしょう。

 「米国社会に広くまん延した貧困や格差にあえぐ白人貧困層に、トランプは『生活難の原因となる不法移民をたたき出すべきだ』などのメッセージをぶつけ、それに呼応する形でトランプ現象が引き起こされた」

 「しかし、米国の格差と貧困を生み出したのは彼が言う移民や生産力の海外移転ではない。マネーゲームの肥大化だ」

 「冷戦が終わって以降、米国の金融ビジネスは変質し、一九九九年にグラス・スティーガル法が廃止され、証券と銀行の垣根が取り除かれた。それ以来、産業を活性化し新たな雇用を生み出すはずの金融は自己増殖し、リーマン・ショックを引き起こしたサブプライムローンのように投資家や金融機関が自分で利ざやを稼ぐための金融に傾斜してきた。金融資産を持ち恩恵を受ける人と、置き去りにされる人のギャップが広がり、米国では昨年、上位1%の人の所得が富の21%を保有する構図になった」

 日本にとって、今回の大統領選の教訓は。

 「日本でも貧困化が静かに進み、同質の問題を抱えている。勤労者家計の可処分所得が九七年のピークに比べて年間八十四万円減っている。株が上がれば景気が良くなっているというのは錯覚であり、大事なのは実体経済だ。産業と家計こそが大切だという認識を持たなければならない」

 「参考になるのはドイツだ。米国流の金融資本主義に対して、産業国家としての自覚を持っている。日本は金融国家への誘惑にかられているが、ものづくり国家として次の基軸産業を育てるとともに、サービス産業の高度化を実現することが日本経済にとって必要である」

 国際社会はこれからどうなっていくのでしょうか。

 「世界を覆う核心的な問題がはっきりしてきた。肥大化する金融資本主義を制御する上で、デモクラシー(民主主義)は機能しているかということだ。米国の大統領選挙ではトランプ現象が起こり、英国の国民投票は欧州連合(EU)離脱を選んだ。格差と貧困への国民のいら立ちを、デモクラシーが解決することができるのかどうかが問われている」

 <てらしま・じつろう>

 北海道出身。69歳。早稲田大大学院修了。1973年三井物産に入社。米国三井物産ワシントン事務所長、三井物産戦略研究所会長などを経て現職。多摩大学学長も務める。BS11「寺島実郎の未来先見塾」などに出演。

 元稿:東京新聞社 朝刊 主要ニュース 経済 【産業・ビジネス】  2016年11月18日  06:15:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

 

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