乾龍の『漂流日本の羅針盤』・【最新ニュースから見え隠れする闇】:

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【その声は誰の声?】:自民党の憲法改正草案を読み解く(下)

2016-12-04 00:03:10 | 【憲法、擁護・改正、第9条問題他】:

【その声は誰の声?】:自民党の憲法改正草案を読み解く(下)

 乾龍の『漂流日本の羅針盤』・【最新ニュースから見え隠れする闇】:【その声は誰の声?】:自民党の憲法改正草案を読み解く(下)

 アジア太平洋戦争の惨禍を経て誕生した日本国憲法は、戦力の不保持などを定めた「9条」に大きな特色がある。戦後の日本が海外での戦闘行為に直接加わらな かったのは「9条」が存在したからこそ、でもあった。自民党の憲法改正草案はその条項を変えて「国防軍」を創設し、交戦権も持つ。いったい、何がどう変わ る可能性があるのか。

 自民党の憲法改正草案を読み解くシリーズの最終回は、川口創(はじめ)弁護士(43)=愛知県弁護士会=に話を聞 く。川口氏は「自衛隊のイラク派遣差し止め訴訟」の原告側弁護団を務め、「派遣は違憲」との司法判断を引き出した。講演などでたびたび土佐路を訪れるな ど、高知との縁も深い。

 ■9条と自衛隊の海外派遣■「国防軍」の先制攻撃を認めるか


「自衛隊のイラク派兵は米軍と武力行使が一体化していた」と述べる川口創弁護士 (名古屋市中区)

 「自衛隊のイラク派兵は米軍と武力行使が一体化していた」と述べる川口創弁護士 (名古屋市中区)

 --9条が果たしてきた役割をどう考えますか。

 「自衛隊は実質的に軍隊なので、憲法に『国防軍』と明記して(活動を)縛った方がいい、その方が立憲主義にかなう、と主張する人がいます。9条と実態が乖離(かいり)しているから、現行憲法は機能を果たせていない、と」

 「しかし、それは誤りです。9条があるからこそ明確に軍隊として位置付けることができず、それゆえ、自衛隊の活動には現に、多くの制約があります」

 「最近は日米軍事演習でもかなり踏み込んだことをやっています。それでも、上陸作戦の訓練では先制攻撃的な演習は一緒に実施せず、後方支援にとどめてきた歴史がある。9条は(安倍政権が2014年に撤廃した)武器輸出三原則などを導く根拠にもなっていました」

 --2003年に始まったイラク戦争で自衛隊を現地に派遣する際、政府は治安維持活動を非戦闘地域に限定し、他国による武力攻撃と一体化しないようにしてきました。

 「確かに、そういう縛りはありました。でも、実態は違った。航空自衛隊は米国を中心とする多国籍軍の兵員や物資をクウェートからバグダッドに輸送する活動を始めました。2007年6月からです」

  「その時期と重なる2007年の1年間、米軍はバグダッド近郊で激しい空爆を繰り返した。その攻撃をはじめ、イラク戦争では民間人も含め推定で約65万人 のイラク人が死亡しました。つまり、自衛隊の活動は9条の『縛り』があっても、米国の武力行使と一体化していたわけです」

 「イラクで、自衛隊から死者が出なかったのは奇跡的でした。空自が現地に到着する前には、英軍の輸送機がバグダッド空港で撃墜されてます。一歩間違えたら自衛隊がやられていました」

 --草案の通りに自衛隊が「国防軍」になれば、活動や装備はどう変わるのでしょうか。自民党内などでは「敵地攻撃能力を整備せよ」という声も公然と出ています。

  「集団的自衛権の行使を認めるとなると、それを前提とした装備、演習をすることになります。集団的自衛権の本質は先制攻撃。自国は攻撃されていないのに他 国へ軍隊を出し、戦争に加わる。ですから、先制攻撃用の装備は不可欠。長距離遠征能力も持つことになる。本格的な航空母艦も導入するでしょうし、そういっ た装備がさらに増えていくと思います」


■国民にも「防衛」義務づけ■「国家総動員色」濃く

 --改憲草案の「9条の三」は、国と国民が協力して領土等を守ると定めています。これを法律家として、どう読みますか。

  「徴兵制の可能性も含めて、国家総動員的な国にしていく狙いでしょう。草案全体をみると、9条の改変だけでなく、立憲主義を完全に否定しています。国家権 力を縛るのが憲法の役割であって、国民に義務を課すものではありません。しかし、草案は『いかに国民を支配するか』という権力側の観点で作られている。そ う思わざるを得ません」

 「緊急事態条項(草案98、99条)、つまり国家緊急権の創設は、内閣の権限で憲法停止の状態をつくるわけで、 一番やってはいけないことです。憲法には、表現の自由を制約する法律をつくってはいけない、といった国家に対する歯止めがいくつもある。それらを国家緊急 権は停止してしまう」

 --「国家総動員的」という意味を、もう少し詳しく。

 「2012年に自民党が発表 した国家安全保障基本法案の中には、若い人は兵力として貢献しなさい、報道機関は戦争に協力しなさいと(いう内容が条文に)書かれています。運輸、建設、 医療なども含めて、国民はあらゆる場面で国策に協力せよ、と。戦争するとなれば、それに協力し、反対は許されません。『国家総動員的な』と言ったのはそう いう意味です」

 「要するに、国民の自由が制約される方向への憲法改正なのか、より国民が自由に人間らしく成長できる社会を目指そうとし ているのか。そのベクトルだけはきちっと押さえる必要がある。イラク戦争では、市民約65万人以上が犠牲になったと言われています。それに日本も関わっ た。そこから何を学ぶか。アジア太平洋戦争だけでなく、イラク戦争のような過ちもまた、繰り返してはいかんと思います」 

■憲法と軍事的抑止力■脅威を取り除けるか


 --日米同盟を強めることで、日本に対する他国の脅威を取り除き、ひいては周辺国との関係も安定するという考えについては。

  「抑止力とは軍事力による脅しです。相手が脅威と感じなければ意味がありません。日米同盟が強化されると、中国は『太刀打ちできない』と考え、軍拡を止め るか。北朝鮮がミサイル発射を諦めるか。現実はそうでありません。2015年、安保法制ができましたが、それらは止まってません」

 「1993年に北朝鮮がNPT(核拡散防止条約)脱退を宣言し、翌1994年に米国は対北朝鮮攻撃を準備したことがあります」

 「米国はその際、負傷兵の救護など1059項目を日本に要請してきました。これに対し日本は、内閣法制局による『武力行使一体化に当たるから無理』という見解によって拒んだが、米国は激怒しました」

 「ものすごい数の米兵らが死ぬという推計が出た事情もありましたが、9条が歯止めとなって第2次朝鮮戦争は回避できたとも言える。そこはきちんと評価すべきです」

 --日米同盟の論点で言うと、「米国の戦争に日本が巻き込まれる」という考えも根強い。

 「強い国と弱い国が軍事同盟を結ぶと、弱い国が(強い国に)巻き込まれていく。軍事的にはよく、そう言われます。その点、日本は9条によって、『巻き込まれ』をストップできました」

 「9条の歯止めを取り払うと、軍事的にも米国との関係はさらに深くなり、(米国の戦争に)巻き込まれる危険性をどんどん背負っていく。それによって多くの国民が犠牲になり、(アジア太平洋戦争のときのように)日本はまた加害者になるのではないでしょうか」

 --1993年の湾岸戦争の際、日本は「金を出すが、血を流さない」と主に米国から批判されました。国際貢献、とくに国連平和維持活動(PKO)については。

  「PKOは中立性の原則が失われてしまい、その枠組みで軍を出すのは、該当国の周辺諸国が中心になってきました。自国の利益のために軍隊を出すわけですか ら、逆にPKOは混乱している。自衛隊が活動する南スーダンでは政府軍が(国連派遣団を)攻撃しています。中立的立場の確保などを定めたPKO5原則が、 既に崩壊している。中立性がない所に自衛隊を派遣し、軍事的に関与していくのは、やってはいけません。軍事力以外の貢献、とくに選挙管理、教育支援などを 日本はもっと追求するべきです」

 --航空自衛隊のスクランブルは近年、右肩上がりです。対象はもっぱら中国やロシアの軍用機。「9条で大丈夫か」と考える人も多いと思います。

 「確かに中国は10年ほど前から『海洋強国』戦略に転換し、太平洋に軍を展開する戦略を持っています。国際海洋法条約の秩序を無視した形で、フィリピンやベトナムとの間で領土問題を巻き起こしている。尖閣諸島をめぐり、したたかに日本を挑発してもいます」

 「しかし例えば、安保法ができて以降、スクランブル発進は減ってきたでしょうか。そんな単純な話ではないわけです。領土問題は日中間だけではない。外交努力で粘り強くやる。それが歴史の教える基本です」 

 ■「内閣法制局が死んだ」■元最高裁判事の浜田邦夫さん

「独裁化するようなシステムを導入するのは非常に疑問だ」と緊急事態条項について述べる浜田邦夫元最高裁判事(東京都千代田区)

 「独裁化するようなシステムを導入するのは非常に疑問だ」と緊急事態条項について述べる浜田邦夫元最高裁判事(東京都千代田区)

 ■政権へ異例の言及を続ける

 「地獄への道は善意で舗装されている」―。元最高裁判事の浜田邦夫さん(79)=東京都=は西洋の格言を引き合いに、憲法改正に突き進む安倍政権への批判を続けている。「元」とはいえ、最高裁判事が政治問題に意見するのは異例のことだ。

 1936年生まれ。米軍の空襲で焼け野原となった静岡市で焼死体を見た記憶があるという。広島と長崎の原爆投下、食糧難など戦中戦後の苦難とともに生きてきた。

 「平和憲法と一緒に成長し、仕事をしてきた」という自負がある。判事出身として憲法問題に自己の見解を述べることは「普通はしない」という。

 「ただ、安倍氏の憲法無視の姿勢には強い危機感を覚えている」

 集団的自衛権の行使容認をめぐって、国会で安全保障関連法案の審議が続いていた2015年9月、参院特別委員会の中央公聴会に公述人として出席し、法案反対の立場で熱弁を振るった。

  「昭和47(1972)年の政府見解では、集団的自衛権(の行使)は政府として認められないと、当時の内閣法制局長官が国会で証言しているんです。日本に 違憲判決が少ないのは、内閣法制局が(新しい法案の審査を)厳密にしてきたから。冗談で『今は亡き内閣法制局』と言っていたら、本当にそうなった」

 自民党の憲法改正草案に盛り込まれている緊急事態条項に対する危機感も強い。

 他国からの武力攻撃や大災害時に国民の権利を制限し、首相の権限を強める内容だ。

 「安倍政権は善意で導入しているかもしれないが、(運用は)為政者の裁量でどうにでもなる。暗黒社会が生じるようなルース(緩い)な条項を憲法に導入するのは、将来の圧政を招くようなものだ」

 最近は、憲法に関する市民集会などに積極的に参加し、発言している。

 「平和憲法に支えられた国際的信用を守るためには、既成の政党や組織などに頼らず、自分で考え、自分の言葉を持って行動するしかないんです」 

 ■自衛隊のイラク派遣差し止め請求訴訟■

 名古屋高裁は2008年4月、航空自衛隊がイラクで行っていた多国籍軍の輸送活動が他国による武力行使と一体化しており、自衛隊による武力行使を禁じた憲法9条に反すると判断した。

 特に首都バグダッドでは激しい戦闘が行われ、イラク特措法でいう「戦闘地域」に該当すると認めた。空自による輸送等の補給活動も戦闘行為の重要な要素であることも考慮された。

 ■改憲にまつわる語録■


 【安倍晋三首相】
 「7割の憲法学者が自衛隊に憲法違反の疑いを持っている状況をなくすべきだとの考え方もある」(2月3日、衆院予算委員会)

 「草案と党総裁である私が違うことはあり得ない。私たちはこういう憲法を作りたいと思うから出している。自民党の議論に沿う方向で行けば一番それがいい」(3月1日、衆院予算委員会)

 【中谷元・防衛相(高知1区)】
 「一定の人口を有する国家で軍隊を保持していないのは日本だけだ。独立国家が独立と平和を保ち国民の安全を確保するため軍隊を保有するのは常識だ」(3月2日、参院予算委員会)

 【古屋圭司・自民党憲法改正推進本部長代理】
 「本音は9条(改正)だが、本音を言わずに(議論を)スタートしたい」(2015年9月30日、東京都内の会合)

 【高村正彦副総裁】
 「憲法学者の言う通りにしていたら、自衛隊も日米安全保障条約もない。日本の平和と安全が保たれたか極めて疑わしい」(2015年6月9日、自民党役員連絡会)

 【民主党(現・民進党)の岡田克也代表】
 「安倍首相は、歴代首相が『できない』としていた憲法解釈を変えた。必ず憲法9条も変えてくる」(2016年3月21日、三重県四日市市の街頭演説)

 元稿:高知新聞社 主要ニュース 政治 【政策・憲法改正論議】  2016年03月29日  12:57:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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