乾龍の『漂流日本の羅針盤』・【最新ニュースから見え隠れする闇】:

 在野の政治研究家乾龍が『漂流日本の闇』を斬る! 日々の政治・経済等の時事ニュースの深層を探る。

【社説を読み解く】:参院選と改憲勢力3分の2=論説委員長・古賀攻

2016-09-30 22:27:05 | 【憲法、擁護・改正、第9条問題他】:

【社説を読み解く】:参院選と改憲勢力3分の2=論説委員長・古賀攻

 乾龍の『漂流日本の羅針盤』・【最新ニュースから見え隠れする闇】:【社説を読み解く】:参院選と改憲勢力3分の2=論説委員長・古賀攻 

 ■冷静な憲法論議の前提条件は 時代錯誤の自民党草案、課題の実証的な点検が先

 憲法。それは国家として区切られた領域内での最も重要な約束事だ。

 地理的な「国の形」はそうそう変わることはないが、政治的、社会的な意味での「国のかたち」は憲法の中身次第で大きく変わり得る。

憲法をめぐって新たな状況が生まれた国会=小関勉撮影

 7月10日投票の参院選は、後から振り返ったとき、「国のかたち」をめぐって変化の種を植え付けた選挙と言われるかもしれない。自民党を中心に憲法改正に前向きな勢力の合計議席数が、衆院に続いて参院でも3分の2以上に達したからだ。

 安倍晋三首相は、秋の臨時国会から憲法論議が活発化することへの期待を表明している。改憲を宿願とする首相は種から芽を出させようとするだろう。そこで憲法について我々の考え方をまとめておきたい。

  ◇理念と統治ルールは別

 今年11月で公布から70年の節目を迎える現日本国憲法は、前文と11章103の条文で構成されている。

 これらの条文の性格は、国家運営の理念や基本原則を定めたものと、統治上の技術的なルールを定めたものの二つに大きく分けられる。

 戦争放棄をうたった9条1項や基本的人権を盛り込んだ11条、表現の自由を保障した21条などは前者、国会と内閣、司法の各分野別にまとめられた4章、5章、6章などは後者にあたる。

 憲法も法のひとつだから、決して不変のものではない。ただ、一口に憲法改正と言っても、理念・基本原則を対象にする場合と、統治ルールの変更を検討する場合とでは、論点の階層が根本的に異なる。

 毎日新聞はこれまでの社説で、戦後日本の平和と発展を支えてきた憲法の理念を支持しつつ、政治の質を高め、かつ国民が暮らしやすい国にするためのルール変更であれば前向きにとらえる立場を表明してきた。

 権限が似通っている衆参両院の仕分けや選挙方法の見直し、国と地方の関係の再定義など統治機構の改革を目的にした憲法改正なら、論じるに値するテーマと考える。

 ドイツは憲法にあたる「基本法」を約60回改正している。日本との比較で自民党はよくドイツを引き合いに出すが、ドイツ憲法の基本理念は厳重に保護され、改正対象になるのはもっぱら統治ルールだ。

 日本も憲法論議を成熟化させる時だろう。ただし、ここで大きな障害がある。今や衆参ともに単独過半数を持つ「超1強」の自民党が、国家主義と復古主義の色彩が濃厚な憲法改正草案を保持していることだ。

 野党時代の2012年4月に発表されたこの草案は、憲法の基本原則の変更に遠慮なく踏み込んでいる。

 「長い歴史と固有の文化」を誇る前文から、天皇の「元首」化、自衛隊の「国防軍」化、家族同士の「助け合い」規定、内閣を超法規的存在にする緊急事態条項まで、その内容は民主主義の思想的発展に逆行していると言わざるを得ない。

 特に緊急事態条項は、トルコのエルドアン政権が7月に出した強権的な非常事態宣言と重なり合う。

 自民党が立党50年を記念して05年11月に採択した新憲法草案と比べても、その右傾化は著しい。

 05年草案では天皇の「元首」化や緊急事態条項は見送られ、国民の義務を強化するような表現はまだ少なかった。むしろ、国政に関する説明責任や環境保全の義務が国にあるとする条文を新設してもいる。

 当時、新憲法起草委員会の事務局次長を務めた舛添要一氏(前東京都知事)の著書によると、党内の議論は「復古派と協調派」の対立となり、「前者は中曽根康弘、安倍晋三の両氏らで、後者は森喜朗、宮沢喜一、橋本龍太郎、与謝野馨、福田康夫の各氏」だったという。

 12年草案は、安倍首相ら党内右派にとって敗者復活だったのだろう。戦前の日本を知る穏健派の重鎮が多く引退し、党内力学は変わった。そして自民党右派の自己満足と引き換えに、国会での議論は険悪化した。

 今参院選で引退した民進党の江田五月元参院議長は「憲法に議論が及ぶと急に言葉がとげとげしくなる」と語っている(7月27日夕刊)。

 与野党が冷静に憲法を論じ合う環境を整える責任は、一義的に政権党の自民党にある。そのために自民党は時代錯誤の改憲草案をまず破棄すべきだ。参院選の結果を受けた7月11日社説で我々はそう訴えた。

 ■「ひとくくり」にできず

 「改憲勢力3分の2」の内実についても吟味が必要だろう。

 メディアが改憲勢力と呼んだのは、自民、公明両党のほか、おおさか維新の会、日本のこころを大切にする党、そして改憲賛成と明言した無所属議員たちだ。

 国会が憲法改正案を発議するには衆参両院でそれぞれ3分の2以上の賛成を得ることが絶対要件だ。参院選の結果、それを満たす新たな政治状況が生まれたことは確かである。

 しかし、同じ改憲勢力とひとくくりにしても、その集団が特定の方向性を持っているわけではない。

 改憲草案が示すように自民党は政治権力の強化に軸足を置いているのに対し、公明党は国民の権利拡大を志向している。おおさか維新は教育の無償化や統治機構改革に向けた改憲を唱えている。

 従って、中身の議論を抜きにして「改憲か否か」でエネルギーを費やすのは非生産的だ。それでは「55年体制」の再来になる。

 自民党は改憲の実績作りを優先してハードルの低い条文に狙いを定めてくる可能性が高い。9条改正を本丸とする「お試し路線」ではなく、憲法改正を必要と するほどの課題があるのかどうかの実証的な点検こそ望まれる。その積み重ねが、復古的な改憲論を排除する力にもなる。

 共同通信による参院選直後の世論調査で、改憲勢力3分の2についての評価を尋ねたところ、「どちらとも言えない」が46・0%に上った。

 そもそも「何を」変えるかが絞り込まれていないのに、問われてもぴんとこないというのが多くの国民の感覚だろう。「3分の2を取らせない」という民進党の参院選スローガンが訴求力を欠いたのも、このあたりに原因がありそうだ。

 大切な「国のかたち」だからこそ、浮かれず、かつ過敏にならずに議論を深めたい。幅広い合意を目指す辛抱強さが議員全員に求められる。


 「社説を読み解く」は、前月の社説の主なテーマを取り上げ、他紙とも比較しながらより深く解説します。ご意見、ご感想をお寄せください。 〒100−8051毎日新聞「オピニオン」係 opinion@mainichi.co.jp

 元稿:毎日新聞社 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説を読み解く】  2016年08月02日  02:32:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

『政治』 ジャンルのランキング
コメント   この記事についてブログを書く
この記事をはてなブックマークに追加
« 【衆院予算委】:首相、五輪... | トップ | 【厚生年金】:加入要件を緩... »
最近の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。

数字4桁を入力し、投稿ボタンを押してください。

あわせて読む

トラックバック

この記事のトラックバック  Ping-URL
ブログ作成者から承認されるまでトラックバックは反映されません。
  • 30日以上前の記事に対するトラックバックは受け取らないよう設定されております。
  • 送信元の記事内容が半角英数のみのトラックバックは受け取らないよう設定されております。
  • このブログへのリンクがない記事からのトラックバックは受け取らないよう設定されております。
  • ※ブログ管理者のみ、編集画面で設定の変更が可能です。